「油絵はどう描けばいいですか」とか「油彩技法とは何ですか」とか訊かれたら、私はこう答えます。
「油絵とは細工した下地に白と黒を使って描くものです」
じゃあ、市販のカンバスにローシェンナでも塗って、その上に白と黒のグリサイユで描いて、最後に色をグレージングして仕上げればいいのか、そんなことなら知っているよ、という声が聞こえてきそうです(別にそれでもちゃんと描けますが)。私の言いたいのはそういうことではないのです。
私自身は市販のカンバスに(油性地だったり、油彩・アクリル共用だったりします)、市販のチューブ入り油絵具で描いています。溶き油は市販の乾性油、揮発性油などを自分で調合したものを使っています。
「細工した下地」の意味は、カンバスを自作することでも、市販のカンバスに下地色を塗ることでもいいのですが(市販のカンバスに直接描くなら、それはそれで一向に構いません)、いずれの方法を採るにせよ、その選択を自覚的に行うということです。自覚的に行うためには、絵の仕上がり具合(明るい画面にするのか、暗い画面にするのかなど)を事前に想定しておかなけれなばなりません。
油絵とは常に逆算の技法なのです。引き算の美学ではなく、逆算の美学なのです。
しかしながら、こういったことは最初からできることではありません(むしろできなくて当たり前です)。ですからあれこれとテストする(実際に絵を描き、失敗する)必要があるのです。自分がいったいどんな画面(理想とする色調)を求めているのかを自分で探らなければなりません。
次に「白と黒を使って描く」の意味は、実際に油絵具で描くときには、しっかりと白を混色して描き、必要なときには黒も混ぜる、ということです。
よく透明水彩における水に該当するのは油彩では溶き油です、などと言っている人がいますが、これは大きな間違いです。そういう人に限って油絵を描くときに白をあまり使っていなかったりします。
透明水彩における水に該当するのは、油彩では白の絵具です。
では油絵の溶き油とは何か、それは粘度を下げるために使います。つまり透明水彩絵具はもともと色が弱い(彩度が低い)、弱すぎると言ってもいいくらいなので、彩度を落とすには水で薄めるくらいで十分なのに対して、油絵具はもともと色が強い(彩度が高い)、強すぎると言ってもいいくらいなので、彩度を下げるには白を混ぜるしかないということなのです。つまり油絵具を溶き油で薄めた程度では大して彩度は落ちない、落ちたことにならない、ということです。
言い換えると、油絵具は彩度が高すぎるので、実際に使うときには、白を混ぜていったん彩度を落とす必要があるということです。その上で溶き油で必要な粘度に下げて画面に塗る(実際に描く)のです。ですから、白と溶き油は一組なのです。
それと「必要なときには黒を混ぜる」とは文字通りです。逆に言えば、必要がなければ黒は使う必要はないということです。白を使わない、ないし白を少ししか使わない人がよくやるのは、暗い部分を描くのに黒を混ぜる方法です。白を使わないのですから、それしか方法がありません(かつての自分もそうでした)。しかし白を使って描いていれば、暗い部分には白を混ぜない色をそのまま塗って表現することもできます(もちろん黒を混ぜてもよいのです)。
肝心なことは白を混ぜて描くことで表現の幅が格段に広がるという事実なのです。
私はこんなことに気づくのに10年かかりました。10年無駄にしました。しかしながら、この単純な事実は見落とされがちで(というより皆その重要性に気づいていない)、油絵入門書の類には書かれていません。最も強調されてよい事実であるにもかかわらずです。
ですから、有名無名を問わず、現代の画家は概して彩度が高い絵を描きがちです。白を混ぜないのですから、色の諧調も出ません。だから色調が単調で、深い抒情や感傷を見る者に引き起こすことはできません。つまり鑑賞者を作品世界へ誘うことができませんし、鑑賞者に画面から何かを読み取ろうという気を起こさせません。
近代以前には、白をしっかり混ぜることは当たり前のように行われていました。近代以降ではコローの絵が典型です。コローの絵には大量の白が使われています。そして実は浮世絵にも大量の白が使われているのです。
いや、俺は彩度の高い絵が好きだからいいのだ、そんな話は関係ない、と言っても、白を混ぜて描く方法を身につけたうえで、そうするのとしないのとでは意味合いが全く違います。やはり基礎を身につけた上での選択でありたいと私は思うのです。
実は白を大量に混ぜて描くのには意外と勇気がいるのです。白を混ぜなくても油絵は描けますし、人間は必然性がないとやりません。人間は皆天邪鬼なのです。考える葦なのです。
でももし油絵で技法的に困っている、行き詰っているなら、是非とも思い切って白を混ぜて描いてみてください。私もこれに気づいて実践し、いわゆる服に着られている状態(油絵具に使われている状態)から解放れました。今はとても自由です。
「油絵とは細工した下地に白と黒を使って描くものです」
じゃあ、市販のカンバスにローシェンナでも塗って、その上に白と黒のグリサイユで描いて、最後に色をグレージングして仕上げればいいのか、そんなことなら知っているよ、という声が聞こえてきそうです(別にそれでもちゃんと描けますが)。私の言いたいのはそういうことではないのです。
私自身は市販のカンバスに(油性地だったり、油彩・アクリル共用だったりします)、市販のチューブ入り油絵具で描いています。溶き油は市販の乾性油、揮発性油などを自分で調合したものを使っています。
「細工した下地」の意味は、カンバスを自作することでも、市販のカンバスに下地色を塗ることでもいいのですが(市販のカンバスに直接描くなら、それはそれで一向に構いません)、いずれの方法を採るにせよ、その選択を自覚的に行うということです。自覚的に行うためには、絵の仕上がり具合(明るい画面にするのか、暗い画面にするのかなど)を事前に想定しておかなけれなばなりません。
油絵とは常に逆算の技法なのです。引き算の美学ではなく、逆算の美学なのです。
しかしながら、こういったことは最初からできることではありません(むしろできなくて当たり前です)。ですからあれこれとテストする(実際に絵を描き、失敗する)必要があるのです。自分がいったいどんな画面(理想とする色調)を求めているのかを自分で探らなければなりません。
次に「白と黒を使って描く」の意味は、実際に油絵具で描くときには、しっかりと白を混色して描き、必要なときには黒も混ぜる、ということです。
よく透明水彩における水に該当するのは油彩では溶き油です、などと言っている人がいますが、これは大きな間違いです。そういう人に限って油絵を描くときに白をあまり使っていなかったりします。
透明水彩における水に該当するのは、油彩では白の絵具です。
では油絵の溶き油とは何か、それは粘度を下げるために使います。つまり透明水彩絵具はもともと色が弱い(彩度が低い)、弱すぎると言ってもいいくらいなので、彩度を落とすには水で薄めるくらいで十分なのに対して、油絵具はもともと色が強い(彩度が高い)、強すぎると言ってもいいくらいなので、彩度を下げるには白を混ぜるしかないということなのです。つまり油絵具を溶き油で薄めた程度では大して彩度は落ちない、落ちたことにならない、ということです。
言い換えると、油絵具は彩度が高すぎるので、実際に使うときには、白を混ぜていったん彩度を落とす必要があるということです。その上で溶き油で必要な粘度に下げて画面に塗る(実際に描く)のです。ですから、白と溶き油は一組なのです。
それと「必要なときには黒を混ぜる」とは文字通りです。逆に言えば、必要がなければ黒は使う必要はないということです。白を使わない、ないし白を少ししか使わない人がよくやるのは、暗い部分を描くのに黒を混ぜる方法です。白を使わないのですから、それしか方法がありません(かつての自分もそうでした)。しかし白を使って描いていれば、暗い部分には白を混ぜない色をそのまま塗って表現することもできます(もちろん黒を混ぜてもよいのです)。
肝心なことは白を混ぜて描くことで表現の幅が格段に広がるという事実なのです。
私はこんなことに気づくのに10年かかりました。10年無駄にしました。しかしながら、この単純な事実は見落とされがちで(というより皆その重要性に気づいていない)、油絵入門書の類には書かれていません。最も強調されてよい事実であるにもかかわらずです。
ですから、有名無名を問わず、現代の画家は概して彩度が高い絵を描きがちです。白を混ぜないのですから、色の諧調も出ません。だから色調が単調で、深い抒情や感傷を見る者に引き起こすことはできません。つまり鑑賞者を作品世界へ誘うことができませんし、鑑賞者に画面から何かを読み取ろうという気を起こさせません。
近代以前には、白をしっかり混ぜることは当たり前のように行われていました。近代以降ではコローの絵が典型です。コローの絵には大量の白が使われています。そして実は浮世絵にも大量の白が使われているのです。
いや、俺は彩度の高い絵が好きだからいいのだ、そんな話は関係ない、と言っても、白を混ぜて描く方法を身につけたうえで、そうするのとしないのとでは意味合いが全く違います。やはり基礎を身につけた上での選択でありたいと私は思うのです。
実は白を大量に混ぜて描くのには意外と勇気がいるのです。白を混ぜなくても油絵は描けますし、人間は必然性がないとやりません。人間は皆天邪鬼なのです。考える葦なのです。
でももし油絵で技法的に困っている、行き詰っているなら、是非とも思い切って白を混ぜて描いてみてください。私もこれに気づいて実践し、いわゆる服に着られている状態(油絵具に使われている状態)から解放れました。今はとても自由です。
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