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美しさは日々の小さな積み重ねから。

満開

2011-04-10 19:55:49 | 美しい生活

              


                  今年は1週間ほど遅い開花でしたけれど
                  ここ2~3日で満開になりました。
                  歩いて3分、私のお花見の指定席です。
                  毎年ここで必ず、芽吹いた瞬間から散りゆくまで
                  じっくり観賞するのが私のお花見。
                  愛犬のメイもレオもこのお花見のパートナーでした。

                  「ねがはくは 花の下にて 春死なん
                     そのきさらぎのもち月のころ」西行法師

                  「久方の 光のどけき 春の日に
                     しづこころなく 花の散るらむ」紀友則

                  「花の色は うつりにけりな いたずらに
                     わが身世にふる ながめせしまに」小野小町

                  桜に関する和歌や伝統工芸品、和菓子やお料理など
                  数えたらきりも限りありません。
                  愛すべく日本人の心なのかもしれません。
                  
                  「桜守」佐野藤右衛門さん
                  京都の老舗「植藤造園」16代目 今年83歳になられます。
                  「桜守」と呼ばれ始めたのはお祖父様の代からで籐右衛門さんで3代目。
                  全国の桜を見て歩く「桜の神様」みたいな方・・と私は思っています。
                  3月下旬に岩手県、宮城県に桜の木を植樹する予定がこの大震災でなくなったとか。
                  とても心を痛めていらっしゃるようですが、
                  「春は必ずやってくる。被災地にも桜が咲き、きっとその開花を見たら
                   少しづつ立ち直れる。」と言ってらっしゃる。
                  私も北国生まれなのでとても良く分かるのです。
                  長く厳しい冬がようやく過ぎ、ほんの僅かな芽吹きで春の訪れが告げられた時の
                  その喜び・・嬉しさ、希望。格別な想いでしたもん。
                  きっと東北の方達も同じ想いだと思います。祈りに似た感情。
                  だから・・東北には名桜が多いそうです。
                  素朴な信仰の対象として大事にしてきたんだろう・・と仰っていました。

                     


                  佐野翁は言います。
                  「わしら日本人は農耕民族。自然と共に生きてきた。
                   自然をとても大事にし、そして自然に対してとても敏感だった。」
                  更に「自然をどこまでも破壊してきた人間たちは、
                     最後に自然を愛し続けてきた人間の心を奪おうとしている。
                     このままでいけば、いつか人間は自然のしっぺ返しを
                     受けるにちがいない。」と。
                  これは、2001年に出版された本のあとがきに書かれていた言葉です。
                  10年後に大きな災害が起きることをまるで予想でもしていたような・・。
                  本気で自然と向き合い、自然を愛し、手をかけ心をかけた方の言葉は大きい。
                  皮肉にも一番自然と向き合ってきた方達が犠牲になる・・
                  この意味を私達は深く考えなくてはいけませんね。
                  
                  一年365日。桜を愛でてくれるのはそのうちの5日ほど。
                  たった5日の美しい花を咲かせるために、残りの360日を
                  誰も見向きもしない桜を気にかけ、お世話をしている佐野翁。
                  そして桜も、その5日ばかりの為に一生懸命着々と準備している。
                  まさに「忍耐」です。
                  でも、苦しいとか辛いとか大変とか、そんな事を思ってしている訳ではありません。
                       
   
                        


                  佐野翁も桜もそれが自分の役割と、愛情いっぱいに生きているだけ。
                  これから何百年も続く美しさを子孫に見せたい・・
                  ただそれだけの想いです。
                  だって、これが日本の精神ですから。