井上靖には、愛人がいた。以前書いた感想が下記
『花過ぎ』ー井上靖覚え書ー 白神喜美子
井上靖の愛人だった人の書である。簡潔で端的な文章のなかに事実の重みがずっしりとくる。
高校時代から井上靖の恋愛小説を片端から読み、映画化されたものも何本も観た。歴史物に移ってからも『天平の甍』などに涙したものだ。
もっとも好きなのは『白ばんば』『夏草冬涛』『北の海』のビルディングス・ロマン三部作で、何度読み返したことだろう。
この本が出るまで愛人がいたことは全く知らなかったし、それだけ井上靖が用心深かったとも言える。しかし『猟銃』や『闘牛』には、愛人がいてこその濃密さがあり、その他恋愛物のヒロインの清楚なイメージは、この白神喜美子が反映していたのだと、今にして思える。
新聞記者だったのにダンサーまでして金を稼ぎ、大阪から東京へと付いていき、ひと間の借家に身をひそめるかたわら、有名になって豪邸や別荘を建てていく井上。
おたがいに貧しくて肩を寄せあいながら、作家になる希望を燃やし続けていたころが一番懐かしいと本人も言い、井上も“ただの男と女の関係ではない”と述懐する。
ふつうならどろどろしたものが流れるはずだが、さらりと描かれているのは、やはり当人の品性によるのではないか。
それでも男としての井上靖のエゴが散見し、なにかしら失望した。こんな面は知りたくなかったという思いがわく。
私小説はもともと好きでないし、作家の裏面は知りたいほうではない。略歴ぐらいは知ってもいいが。
自伝や日記の類いに面白いものはあるが、所詮それは創作者の書いたものだ。
本は本、作者は作者で、別物である。モーツァルトの曲とモーツァルトが別であるように。
それよりも32歳から16年間不倫の関係をつづけ、作家井上靖のわがままに耐え、支え、ひっそりと愛を貫きとおした白神という女性に会ってみたかった気がする。
連城三紀彦の描くヒロインのようだ。
こちらもドラマか映画で観たいものだ。
・いかにしておはすらむものか寄らばもしたかき静謐(しじま)の崩れむものを(T夫人)
T夫人とは、白神と出会うまえに井上と関係のあった女性らしい。
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今の言葉で言えば、ブレイクしたころなのでしょう。
お母さま、大衆小説とおっしゃったのですね。それで、今の虎猫さんがあるのですね。
親鸞は、だれの作品でしたか、「そんなもの読んで」と、やはり母に睨まれたことがあります。
当時は、大人の本を読むしかありませんでしたよね。
借りて読みました。
母がそれを、「大衆小説を読んでいる」と見とがめたので、大衆小説とそうでないものの違いって何だろう? なんて思いました。
(今もよくわかりません。)
井上靖の歴史小説が面白かったのを覚えています。
愛人のことは初めて知りましたが、まぁ、そんなこともあるんだろう、くらいにしか思えないほど、
小説を読んだ時期が遠くなりました。
「ロマンス」もよくわからない、です(^^;)
いつも続かなくて。
でも、今は、皆さん、ブログで日記を書いていらっしゃる。きっと昔より多いのは、読む人がいるからですね。
不倫は、こっそりするもので、テレビで何人とどうのというのは、ロマンス大好きの私も、ちょっと違うんじゃない?
と思います。
それをまたテレビで大ニュース!
ほかに、もっと大事なニュースがあるのでは、とも。
当時の一市民としての考え方 時代の流れを知るには大切な資料でしょうね
私も 人となりをあまり知りたくないことがあります
尊敬の念であった人が 意外な面を見せると もう氷解してしまいます
不倫はなんだか一番嫌です
芸能人であっても 理由はともかく嫌悪感を持ってしまいます
歌の世界の中では 人の憧れに似たものとして許容できるのにね(笑)
なんだかすごい評判でした。
やはり未熟で、不倫の不の字も実感できないころでしたから、へぇ~と。
新しい女と、また何気なくピクニックに行く、幸福に満ちて。
ラストシーンが秋の景色なのは、これからの彼らの不幸を暗示している、なんていう評論家がいて、そりゃ、こじつけだろ、なんて、未熟ながらに思ったことがあります。
大人の観る映画なのでしょうね。
しかも、たぶん、白神喜美子と知り合ったころ。
もし、それも書いてあったとしたら、奥さまは、どんな気持ちで読まれたことだろうかと。
いつになく興味が湧きます。
生前中は隠し通したにばれてしまった、と
50年以上前になりますが「幸福」というフランス映画がありました。
女性監督で映像美は美しくかったのを覚えています。
内容はこちらでhttps://movie.walkerplus.com/mv13617/
この映画を見たのは高校生のとき当時は内容が把握できませんでしたが、今年再上映され見て理解できました。この映画は女性監督、驚きです。井上靖のブログなので関係ないことを書き申し訳ないです。
興味半分、つゆさんが仰るように > 本は本、作者は作者で、別物である~~
その通りだと感じます。
創作者としてのその人の背景は、サラッと知っていればよいかなと、そう思います。
日記は読みたいような、読みたくないような(笑)
ご本人は、亡きあとに日記が世に出るのは、少し恥ずかしいものがあるのではないか、なんて、思ってしまいます。
ごく個人的な書き物は、燃やしておこう、、、、有名人では無いけれど。
若いころからのファンでした。
「氷壁」という山男の映画や小説で有名でした。
この本は、姉に教わりました。
今どきのフリンとは、ちょっと違う気がします。
司馬遼太郎の好きな男性は多いですね。
小説ではなく、ドキュメンタリーみたいな感じがします。
「坂の上の雲」は、読みかけのままです。
こんにちは。
井上靖さんの『天平の甍』や『白ばんば』は読みました。と言っても若かりし頃です。愛人ですか。井上靖さんも男だったと言うことでしょうか?
最近は本を読んでいなかったので、司馬遼太郎記念館に行ったとき、城塞を買い、上中下の今下に入ったところです。