蓬 窓 閑 話

「休みのない海」を改題。初心に帰れで、
10年ほど前、gooブログを始めたときのタイトル。
蓬屋をもじったもの。

いのちの残り

2021年02月24日 | 言葉の散歩道

  いのちの残り

      J・シュペルヴィエル

  木立の上には

  夜がほしい。

  大理石のテエブルには

  果物がほしい。

  血がたぎるためには

  闇がほしい。

  真っ赤な心には

  純粋がほしい。

  白い頁(ページ)には

  日ざしがほしい。

  沈黙の底には

  愛がほしい。

  飲物を求める。

 

  誇りのない魂。

  日ごとに痩せほそる

  いのちの糸。

  日ごとにふさぐ心

  それをつまむ歳月。

  僕らのほか 誰にも

  井戸車の軋りが聞えない

  それほどに桶は重い。

          (安藤元雄訳)

     (夜明け)


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