小説「離しません!」&スピンオフ「オミとカイ-少女の霊と俺達と-」

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30.オミさんと俺の危機

2024-01-12 22:50:00 | 小説
 インターホンに出たのは カイさんだった。

「オミくん、 麻里華ちゃんが来た 」

 オミさんは慌てて電話を切ると、玄関で麻里華さんを迎えた。

「どうしたの? 麻里華ちゃん 、急に…」

 オミさんの彼女だという麻里華さんは本当に綺麗な人だった。

 長く美しい黒髪で…

 涼やかな切れ長の目元 が少しカイさんに似ているような…

 突撃の理由はわかるような気がするが、ヒステリック でもメンヘラでもない感じだ。

 きちんとした彼女が当然のこととして、オミさんの浮気の噂を聞いて、確認しにきた、ということだ。

「オミさん、彼氏と一緒に暮らし始めたって本当!? 」

「ううん、俺、男の人とはそうならないよ。何でそんな話が…」

「フクちゃんの店で、隣りに座った女の子たちが話してた 」

「いや、新入社員は札幌から来たよ。この人 」

 いきなり言われたが、俺はきちんと自己紹介した。

 オミさんとそういう関係だと、間違っても思われないように。
  
 華島さんと再会したい俺は、今、オミさんを破滅させるわけにはいかんのだ。

 しかし、麻里華さんはよっぽど言いたいことがたまっていたのか、オミさんに向かって、

「でも、男の人のウワサが消えないんだもの! 華島さんとはどうなってるの? 」

 華島さん…?

 血の気がひいていくのがわかる。

 俺は倒れそうになった。
 



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