カイさんは帰ってきたの?」
心配している様子の麻里華ちゃんは確かにカイと何かあるようには見えなかった。
「うん …まだ。 警察にも行ったんだけどね 」
何と言っていいかわからなかった。
「ところで大事な話ってどうしたの?」
すると 麻里華ちゃんの瞳は涙でいっぱいになり、
「あの、 私、福岡に帰ることになったんです。工房も閉めて」
次から次へと疑問が湧いてくる。
疲れきった 頭では処理できない。
もう二人の関係はどうしようもないとは思っていたが、
「俺、来月 あたり 福岡に行くつもりだったんだ 」
「それはどういう意味ですか? 」
麻里華ちゃんの口調は他人行儀で、俺は何だか傷ついた。
「その…麻里華ちゃんのご両親にご挨拶できたらと…」
「それはもう遅かったです 」
「麻里華ちゃん…」
「それにどうせ 撮影のついででしょ? もう本当に遅いんです」
「ついでなんかじゃないよ。それに遅いってどういうこと? 遠距離だって 連絡 とかとりあえずし、俺からそっちに行くこともできるし…」
「父が倒れたんです」
「えっ?」
「すぐに死ぬとか生きるとかではないんですけど、思うように動けないので、跡取りの兄たちを手伝うのに、帰って来られないか って言われてしまって。
嘘とも思えず俺は困ってしまった。
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