半澤正司オープンバレエスタジオ

20歳の青年がヨーロッパでレストランで皿洗いをしながら、やがて自分はプロのバレエダンサーになりたい…!と夢を追うドラマ。

ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第91話

2020-07-12 08:11:59 | webブログ

おはようございます、バレエ教師の半澤です!
平日の朝は11時から、夕方は5時20分から、夜は7時から
レッスンをやっております。
土曜日は朝11時から、夕方は6時からです。
日曜日は朝10時から、昼の12時からです。どうぞ宜しく
お願い致します。

ホームページ半澤正司オープンバレエスタジオHP http://hanzanov.com/index.html
(オフィシャル ウエブサイト)

私のメールアドレスです。
rudolf-hanzanov@zeus.eonet.ne.jp
http://fanblogs.jp/hanzawaballet3939/
1表紙.jpg
ルイースと写真.jpg






創業36年、本場博多のもつ鍋・水炊き専門店【博多若杉】


連絡をお待ちしてますね!

2020年12月23日(水)寝屋川市民会館にて
半澤正司オープンバレエスタジオの発表会があります。


Dream….but no more dream!
半澤オープンバレエスタジオは大人から始めた方でも、子供でも、どなたにでも
オープンなレッスンスタジオです。また、いずれヨーロッパやアメリカ、世界の
どこかでプロフェッショナルとして、踊りたい…と、夢をお持ちの方も私は、
応援させて戴きます!
また、大人の初心者の方も、まだした事がないんだけれども…と言う方も、大歓迎して
おりますので是非いらしてください。お待ち申し上げております。

スタジオ所在地は谷町4丁目の駅の6番出口を出たら、中央大通り沿いに坂を下り
、最初の信号を右折して直ぐに左折です。50メートル歩いたら右手にあります。

連絡先rudolf-hanzanov@zeus.eonet.ne.jp

ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
第91話
もちろんロシア語で書いてあり、ロシア語を読むのが
苦手なショージは「ん?ラ…イ…モ…ダ?あーっ
ライモンダだっ!やった~っ!見るに決まってる
じゃーん!」はしゃぎながら大きなダルマのような
おばちゃんの列の後ろに並びチケットをゲットした。
バレエ「ライモンダ」はボリショイが本家本元だ。

…とある公園に

「んー、あんなに爺ぃたちのガードが堅かったら、
容易に劇場内には入れないな…でも、折角この
モスクワまで来ておいて、ボリショイのレッスンを
受けないで帰るのは王将ラーメンに来て餃子を食べ
ないよりも悲しい事だし…。何か手立てを考えなきゃ
いけないな。どうしよう…」独りで道を歩きながら
ぶつぶつと呟いた。

時間を潰すためにレストランに入った。だが中は
暗く誰も人がいない。「やっているのか?」
ウェイターが一人だけいた。「やってます?」
「いややってはいない…」「ドルで支払いますが…」
「やっているよ!」手の平をぽんと返した受け応えだ。
そのレストランでシャンペンとボルシュチスープ、
ストローガノフとライスの付け合わせを完食するとドルで
支払いを済ませた。

まだ劇場で「ライモンダ」が始まるまでにはかなりの
時間がある。しかし、外は人間が気軽に散歩できる
ような温度ではない。「何処か暖房が利いていて
時間が潰せる場所を探そう。」道を歩きながら
ボリショイ劇場から遠ざからないように歩いていると
公園の前まで来た。「ん?何でこの公園はこんなに
人がいっぱいいるんだ?」ショージは興味に
駆られ公園内に入った。と、のっけからおばさん
たちが大声で何か怒鳴っている。

そのおばさんたちの前には簡易の小さなテーブルが
置いてあり、その上に紙袋がたくさん積んであった。
「あれは何だろう?」大勢の人たちがその公園に
いるのは、間違い無く、物々交換か個々に仕入れた
何かの商品を売っているのだろうと判った。
ショージはこういう情景を見ると体内の血が燃えて
来る。

群衆の顔

公園の中に物凄い数の群衆がひしめき合い、その雑踏
の中にショージも進んで入って行った。群集は生活の
ために自然に出来た市場なのだ。ここは金で物を
買う人もいれば物々交換している人もいる、何とも
迫力のある光景であった

この市場の中でショージを驚かせたのはただ単に
ガチャガチャと人が集まっているのではなく服を
売っている個々の店が集まったブロック、肉屋や
野菜の食品のブロック、または家具や家電製品の
ブロック…と、それぞれが整然とそれぞれの分野に
分かれていて、好き放題に勝手な場所で売っている
訳ではないという事だった。

考えてみれば服を売っている人の傍に肉の切り身や
ミンチなどを売っていたら服に肉片が付いても
嫌だろうし臭いが漂っても嫌なのであろう。ま、
自然な事でこれに驚いているショージ自身が
おかしいのかもしれない。
(つづく)


ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第90話

2020-07-11 08:03:09 | webブログ

おはようございます、バレエ教師の半澤です!
平日の朝は11時から、夕方は5時20分から、夜は7時から
レッスンをやっております。
土曜日は朝11時から、夕方は6時からです。
日曜日は朝10時から、昼の12時からです。どうぞ宜しく
お願い致します。

ホームページ半澤正司オープンバレエスタジオHP http://hanzanov.com/index.html
(オフィシャル ウエブサイト)

私のメールアドレスです。
rudolf-hanzanov@zeus.eonet.ne.jp
http://fanblogs.jp/hanzawaballet3939/
1表紙.jpg
ルイースと写真.jpg






創業36年、本場博多のもつ鍋・水炊き専門店【博多若杉】


連絡をお待ちしてますね!

2020年12月23日(水)寝屋川市民会館にて
半澤正司オープンバレエスタジオの発表会があります。


Dream….but no more dream!
半澤オープンバレエスタジオは大人から始めた方でも、子供でも、どなたにでも
オープンなレッスンスタジオです。また、いずれヨーロッパやアメリカ、世界の
どこかでプロフェッショナルとして、踊りたい…と、夢をお持ちの方も私は、
応援させて戴きます!
また、大人の初心者の方も、まだした事がないんだけれども…と言う方も、大歓迎して
おりますので是非いらしてください。お待ち申し上げております。

スタジオ所在地は谷町4丁目の駅の6番出口を出たら、中央大通り沿いに坂を下り
、最初の信号を右折して直ぐに左折です。50メートル歩いたら右手にあります。

連絡先rudolf-hanzanov@zeus.eonet.ne.jp

ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
4人の爺さんたち
第90話
兎に角、この劇場の関係者入口の二重ドアーを
入った瞬間にその劇場内の温度が予想以上に温かく、
寒さが限界にまで達していたショージの身体中の
先端が急激な温度差によって痺れた。だが、人間、
どのような場面に遭遇してもタイミングというのが
非常に大切なものだ。

イレク・ムハメドフ氏が中に入った時に、その
どさくさに紛れて一緒に入ればもしかしたら門番は
気が付かないかも…と、甘い考えで一緒に門を入り、
イレク・ムハメドフ氏の挨拶も終わらない内に
ショージは爺さんたちからの死角になる、ムハメ
ドフ氏の斜め背後を歩いて顔を少しだけ下に俯き
ロシア語で挨拶をしたのだ。

そのまま止まらずに廊下を歩く事、7歩…「お、
やった…やったね~!」と、その瞬間、背後から
ガバーっと羽交い締めにされてしまったのだ。
「うわ~っ!」と驚き、後ろを見ると、門番の
爺さんの4人の内の一人が得意そうに「クトエタ~ッ!
クトエタッ~!?」(誰だこいつは!誰だ
こいつは~っ!?)と爺ぃ特有の甲高い声で
叫んだ。ショージはその手を振りほどきたかったが、
とんでもない強い力で放そうとしない。

ショージは「よっしゃ~っ!爺さん、偉いっ!
よくやったぞ!君はとうとう門番という大事な
仕事をやってのけたのだ!部外者の侵入を阻止
するのが君の役目だ!それが任務であり、使命
なのだっ!そして君は自分にもその侵入者を
捕まえる事の出来る力がある…と言う事をとうとう
立証したのだ…やれば出来る…この歳になっても
そう捨てたものじゃないさ…と今なら豪語しても
良いのだ!僕と言う部外者を捕まえた君に今
贈りたい言葉は、おめでとう…爺さん、
おめでとうっ!」などとは口が裂けても言わない。

ショージの口から出た言葉は「ちっきしょ~!
惜しかった~っ、後もうちょっとだったのにな~!
爺ぃめっ!」

ショージはその4人の門番に囲まれてドアーの
外まで連れ出された。背後からも横からも羽交い
締めのままで爺ぃたちはドアーをギ~と開くと
「そーらよっ!」ポーンとまるで罠で捕まえた
ドブネズミのように劇場から外に放り出されて
しまった。「げ~っ!さ、寒過ぎ~っ!こんな
温かな場所を体感しちゃったその後で、又、
地獄の寒さに戻らなきゃなんないのか!?」
しかし人間とは考える動物。ショージの脳が
フル回転し始めた。

門番の怒り炸裂!

まだ5秒も経ってないのに即、また二重ドアーを
開いて中にまるで初めてのように入って行くと
案の定、「こ、この馬鹿、またお前なのかっ!
何しに入って来たのだ!出て行け~っ!聞こえないのか、
出て行け~っ!」また4人の内の一人が椅子から
立ち上がりショージを目がけて寄って来たが、
ショージは頓着せずに「あ、違いますよ、ちょっと
聞きたい事があるから入って来たんですよ…」
すると、門番の爺さんは「何?聞きたい事だと…?
何だ、言ってみろ!」と鼻息も荒く、怖そうな形相で
ショージを睨んでいる。「そんなに興奮すると血が
濁りますよ…」とショージは教えてあげようかと
思ったが、そんな爺ぃの人生はどうでもいいか…
と捨ておいて、「あーあのね、今、何時かな…って
思ってさ!」

するとショージを睨んでいた爺さんの顔が見る見る
真っ赤な鬼のような形相に変わったのだ。爺さんは
震えながら「そ、そんな事知った事か…!この野郎、
出て行かないと…」拳まで上げている。

ショージを見つめワナワナと爺さんは震えていたが、
次々に楽器を抱えたオーケストラの奏者や、ダンサーたち、
また劇場関係者が入口の中に入って来た。そして
ようやく正気を取り戻したのか、それとも時間だけ
なら…と思ったのか、「お前の顔の前に時計がある
だろ…見たらさっさと出て行け…」

ショージは「あっそう…もうこんな時間なのか…
じゃ、行こうかな…今日はバレエの公演は無いの
かい?」すると違う爺さんが、「そんな事は正面
玄関で自分で調べろっ!早く去れ~っ!」
ショージはニヤニヤと笑いながら、「チャオ~」
と偉い剣幕の爺さん4人にちゃんとイタリア式の
挨拶をした。が、爺さんたち4人はこっちを
見ようとはしない。ショージは「チェッ!」と
舌打ちしながら、言われた通りに正面玄関に
廻り人でごった返しているチケット売り場で
今日の催し物を確認した
(つづく)


ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第89話

2020-07-10 09:35:49 | webブログ

おはようございます、バレエ教師の半澤です!
平日の朝は11時から、夕方は5時20分から、夜は7時から
レッスンをやっております。
土曜日は朝11時から、夕方は6時からです。
日曜日は朝10時から、昼の12時からです。どうぞ宜しく
お願い致します。

ホームページ半澤正司オープンバレエスタジオHP http://hanzanov.com/index.html
(オフィシャル ウエブサイト)

私のメールアドレスです。
rudolf-hanzanov@zeus.eonet.ne.jp
http://fanblogs.jp/hanzawaballet3939/
1表紙.jpg
ルイースと写真.jpg






創業36年、本場博多のもつ鍋・水炊き専門店【博多若杉】


連絡をお待ちしてますね!

2020年12月23日(水)寝屋川市民会館にて
半澤正司オープンバレエスタジオの発表会があります。


Dream….but no more dream!
半澤オープンバレエスタジオは大人から始めた方でも、子供でも、どなたにでも
オープンなレッスンスタジオです。また、いずれヨーロッパやアメリカ、世界の
どこかでプロフェッショナルとして、踊りたい…と、夢をお持ちの方も私は、
応援させて戴きます!
また、大人の初心者の方も、まだした事がないんだけれども…と言う方も、大歓迎して
おりますので是非いらしてください。お待ち申し上げております。

スタジオ所在地は谷町4丁目の駅の6番出口を出たら、中央大通り沿いに坂を下り
、最初の信号を右折して直ぐに左折です。50メートル歩いたら右手にあります。

連絡先rudolf-hanzanov@zeus.eonet.ne.jp

ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
第89話
ショージは路上の婦人から急遽買った、どちらも
婆ちゃん用のケバケバがおかしい帽子と手編みの
毛糸の靴下を両手にはめ、ジーパン姿にスニーカー。
大きなスノーブーツは恥ずかしいからスウェーデンに
置いて来たのだ。これが大きな間違いだった。
スウェーデンよりもモスクワの方が気温が異常に
低く吹雪いているではないか。前を行く背中が
異様に大きな男性に何気なく付いて行くと、
「あっ!あれは関係者入口じゃないのか…!?」

ボリショイバレエ団の看板スター

「あっ!やっぱりあれは関係者入口だ!…って
事はこの男性も劇場のスタッフなのか…ま、
大道具さんかもな…」その時だった、ふいに
ショージの右横の劇場の壁の方向から、「おいっ、
イレ~ク!」と大きな声で呼ぶ者がおり、
ショージもその声の主の方を見た。と、それが
あまりにも大声なのでビックリしたのだが、
それよりももっと驚いたのは「あーっ!この人…!」
大きい声で叫んだ男はショージがビデオやテレビで
何度も見た有名なロシア人バレエダンサーの
ユーリー・バシュチェンコだったのだ。

「で、でっけ~!」190センチを優に越えて
いるであろう。そしてその時、重低音の腸に
響くような唸り声で「ウォ~ドブレイウートラ…」
(ウォ~お早う…)とその猛獣のような声を
出したのは、ショージの直ぐ前を歩いていた
灰色のジャンパーを着込んで、頭には熊のプーさん
みたいな面白い帽子を被った声の主を見た途端、
ショージの呼吸が止まりそうになった。

またもや絶句!そのプロレスラーのような背中で
ショージの前を歩いていた男は、なんと世界中の
クラッシック・バレエファンの注目を一身に
集めて、今のヨーロッパ、アメリカ、日本の
バレエ雑誌を賑わせている、ボリショイバレエの
プリンシパル(事実上のバレエ団のトップダンサー)
のイレク・ムハメドフではないか!

観音開きのドアー

観音開きのドアーをギ~と開けば又、中側にドアー
がありその中間に厚手の生地で天井から幕みたいな
物が垂れ下がっている。これはドアーの外の
マイナス38度の極限の冷温から劇場内の温度を
保つために冬限定で付けられているのであろう。
先にイレク・ムハメドフ氏が入り次にショージが
入り、中側のドアーを通る際にイレクが低く唸る声で
「ズドラストブチエ~!」(こんにちは)と門番に
挨拶をした。

門番はパッと見た感じで70歳から80歳くらい
までの男性が4人いた。どうして門番が4人も
いなきゃならないのだろうか…?イレク・ムハ
メドフ氏のボストンバッグは意外にも小さめで
質素なバッグだ。ショージのバッグは中型犬が
丸々と一匹入る事の出来るサイズの大き目。

ショージもまるで昔からボリショイ劇場のお抱えの
ダンサーであるかのような顔つきと疲れたような
イレクの声のトーンに似せて「ズドラストブチエ~!」
とイレクの直ぐ背後にピッタリと付いて行く。
「おっ、やった…通っちゃった!」と脳が反応した
途端…「うわ~っ!!」
(つづく)


ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第88話

2020-07-09 07:57:36 | webブログ

おはようございます、バレエ教師の半澤です!
平日の朝は11時から、夕方は5時20分から、夜は7時から
レッスンをやっております。
土曜日は朝11時から、夕方は6時からです。
日曜日は朝10時から、昼の12時からです。どうぞ宜しく
お願い致します。

ホームページ半澤正司オープンバレエスタジオHP http://hanzanov.com/index.html
(オフィシャル ウエブサイト)

私のメールアドレスです。
rudolf-hanzanov@zeus.eonet.ne.jp
http://fanblogs.jp/hanzawaballet3939/
1表紙.jpg
ルイースと写真.jpg






創業36年、本場博多のもつ鍋・水炊き専門店【博多若杉】


連絡をお待ちしてますね!

2020年12月23日(水)寝屋川市民会館にて
半澤正司オープンバレエスタジオの発表会があります。


Dream….but no more dream!
半澤オープンバレエスタジオは大人から始めた方でも、子供でも、どなたにでも
オープンなレッスンスタジオです。また、いずれヨーロッパやアメリカ、世界の
どこかでプロフェッショナルとして、踊りたい…と、夢をお持ちの方も私は、
応援させて戴きます!
また、大人の初心者の方も、まだした事がないんだけれども…と言う方も、大歓迎して
おりますので是非いらしてください。お待ち申し上げております。

スタジオ所在地は谷町4丁目の駅の6番出口を出たら、中央大通り沿いに坂を下り
、最初の信号を右折して直ぐに左折です。50メートル歩いたら右手にあります。

連絡先rudolf-hanzanov@zeus.eonet.ne.jp

ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
第88話
「よしっ!タクシーを拾ってさえしまえばこっちの
もんだ!行くぞ~っ!」ダッダッダッダダダ…
勢いに乗って、4~5百メートルは走った。
もう少しで大通りに出る…という所まで来た時に、
突然、目の前が真っ暗になり絶叫した。
「ンガッ~!俺はアホか~っ!折角ここまで来れた
のに、お前って言う奴はこの、ろくでなしがーっ!」
ガーン!大変な事を忘れていたのだ。ショージは
自分が宿泊しているホテルの名前を知らなかった。

「おー!危ない危ない…」寸での所で迷子になって
ホテルに帰れなくなるところであった。「ああ…
またホテルまで走って戻らなきゃ…」その時点で
既につま先や手先、特大の鼻が凍傷を起こしそうな
ほど限界温度が身体中を麻痺させていた。
「耳なし芳一は知っているけど、鼻が取れちゃったら、
鼻無しショウジになっちゃう…」走ってホテルまで
引き返し、深呼吸をして外に出る心の準備と空気を
思い切り吸って肺に貯めた。「あ、ちょっと待てよ…
このチラシを落としたら、それでもうお終いか…
僕は再びこのホテルには戻れなくなってしまう。
ちゃんとホテルの名前を見て確認しておかなきゃ…」
そしてホテルのチラシを見ると、「ホテル・コスモ」
と書かれてある。

再び大通りに出るまで走り、手を上げると一台の
車が止まった。だが、どう見てもタクシーでは
なかった。自称「タクシー」の酔っ払い運転手は
右に左に横滑りを起こしながら、ようやく目的地の
ボリショイ劇場の近くまで来た時…「おいっ、
もうそこがお前の言っていたボリショイ劇場だ。
ここまでの距離は半端じゃない!2ドルじゃ到底
足りない、もう2ドルよこせ!」

酔っ払っている運転手が、ショージをガキだと
勘違いしているのだろうが、ショージも負けずに
なんとか厳めしい顔つきで「おい、いい加減に
しろ!2ドルでも十分すぎるくらいだっ!お前が
2ドルなら行ってやるって自分の口で言ったんだ!
その2ドルもあれば、お前の好きなウォッカが
数十本は買えるだろう!俺はここで降りる」すると
こちらの剣幕に押されたのか運転手は車を止めた。

私の前を歩くダンサーの背中

路上で婆さん用の帽子を売っていたロシア人の
婦人に聞いた通りに、道沿いに歩いて行くと
「あ、あ…ボリショイ劇場だ、すんげ~!こんなに
迫力がある劇場もそうざらには無いな!」
夢の劇場がショージの目の前に威風堂々と聳え
立っているのだ。「これか…これが世界中の
バレエファンなら誰でも頷く、世界最高のバレエの
殿堂か…!」

暫し絶句。少しずつ劇場に近寄って行き、寒さなど
この瞬間は感じなかった。でも、やはりほんの瞬間
だけであった。実に寒い。ショージの横を灰色の
ジャンパーを着た人が素通りして行き、ショージも
その人が向かう先の劇場の正面まで歩いた。「何て
威厳のある劇場の正面造りなのだろう…」玄関には
大型の大理石の石柱が8本もバーン、バーン…!
と並んでおり、その遥か上の久ひさしの上に
ブロンズで作られた、4頭の馬を男が手綱を
引いているようなモニュメントがショージを興奮
させる、夢にまで見た劇場だ。

ショージの前をズシズシと雪を踏みしめて歩いて
いる男はダンサーらしき鞄を背負っているが、
あまり背中がダンサーらしくない。「ま、鞄を
背負っているのが決まってダンサーとは限らないし、
兎に角、関係者入口を探そう…」前を歩く男の靴を
見ると「ん?足が外側に開いている…え?まさか…
こんなプロレスラーみたいな背中をしている人が
ダンサーのはずないよな…そこら辺のおっさん
だって、ガニ股で歩く人はいるんだから。しかし、
なんちゅう寒さなんだ…もう、頭がクラクラとして
思考回路が働かない…早く暖を取らなければ間違い
無く凍傷に罹ってしまう…」
(つづく)