会社の駐車場を歩いていたら、地面に何かうごめくものが。
ゆっくり、ふらふらと。
ゴキブリにしては、動きがスローモーすぎる。だが、色は黒い。
何だろうと思って、近づいて腰をかがめて見てみたら・・・・
なんと!
コクワガタ!
季節はもう秋。なんでこんな時期に。
しかも、ここは町の中。
こんな場所に、こんな時期に、コクワガタなんて、いるものなのか?
見たところ、けっこう弱っているように見えた。
まあ、もう秋だものなあ・・。しかも、ここは本来クワガタがいるような場所ではない。
このままいたら、入ってきた車にひかれて、つぶれてしまうだろう。
そう思って、せめて草むらの中に置いてやろうと思って、つかんでみた。
だが・・・この時私は軍手をしていたのだ。それがいけなかった。
クワガタの足にはギザギザがあるのだが、そのギザギザが軍手の生地にからまってとれない。
無理して指ではがそうとしたら、足がもげてしまいそうだ。
困った私は、軍手を脱いで、振ってみた。
すると、その勢いで消えてしまった。
足元に落ちたのか・・と思いきや、どこにもいない。
もしや、振って飛ばされた拍子に、私の着ている服のどこかについたのか?と思って会社の人に確かめてもらったところ、私の体のどこにもいない。
しまった・・・救助するつもりが、かえってまずいところに飛ばしてしまったかな・・・と思ってたら、目の先、数メートルの地面に、ひっくりかえってもがいていた。
すまん・・。
相変わらずアスファルトの地面の上だったので、指でつかんで、近くの草むらに置いた。
とりあえず、アスファルトの地面にいるよりはマシだろう。
その後・・・・このコクワガタがどうなったかは・・・分からない。
それにしても、なぜこんなところにいたのかは謎のままだ。
誰かが飼っていたのが逃げたのか、あるいは飼い主が捨てたのか・・。
クヌギの木もないような町の中に、いきなりコクワガタが秋口に現れるとは・・・。
不思議ではある。
そう思って調べてみたところ、コクワガタは、都市部の街路樹や公園の木にも普通に生息する甲虫なんだね。
てっきりクワガタ族は、山の中などの自然の多い場所に生息するもんだと思っていたから、コクワが都市部の街路樹や公園の木にもいるなんて意外だった。
ということは、このコクワは野生のコクワだったと考えてもいいのかも。
そういえば・・昔・・・私が東京と神奈川の県境に住んでた時、私の部屋にコクワガタが入ってきたことがある。
その頃私が住んでたエリアには、近くに低い・・丘のような里山もあったし、田園風景もけっこう残っていた。
狭い林みたいな場所もあった。
なので、部屋にコクワが現れても、不思議には思わなかった。だが、都心部の街路樹にも普通にいるのなら、近くに里山があるエリアなら、もっとたくさんいたんだろう。
部屋にコクワが現れた時も、ちょっと嬉しかったっけ。
コクワの姿を見かけるのは5月から10月初旬まで・・・ということだから、この秋口にいても不思議ではないわけだ。
でも、もうすぐ姿を消してしまう時期に入ることも確かで。
そう考えると、このコクワが弱っていたのは・・・もうすぐ姿を消すからなんだろう。
思わぬコクワの出現に、少し嬉しくなった。
これが他の虫・・・例えばゴキブリだったりしたら殺しにかかるけど、コクワは殺すわけにはいかないし、むしろ保護したくなる。
この「扱い方の違い」は、なんなんだろう。同じ「黒い虫」なのに。
ゴキブリは、家の中をすごいスピードで走りまわるし、所構わず現れるし、出現率が高いというのもネック。そのへん、たちがわるい。
そのせいかもね。
お~い、コクワガタ。アスファルトの道路になんて、もう出るんじゃないぞ~。
車がきたら、つぶされてしまうぞ。