エノク書。スラヴ語エノク書(または第二エノク書)|みつうろこ (note.com)
第十一章
主はわたしをお呼びになり、ご自身の左、ガブリエルより近くに置かれた。
わたしは主におじぎをした。主はわたしに言われた。「エノクよ、おまえが見たすべてのもの、静止しているものと動いているもの、
わたしによって成されたもの、それをわたしはおまえに明らかにしよう。それは最初に万物が存在しなかった以前のこと*1)、
わたしが虚無から存在へ、および見えないものから見えるものへと造り出したすべてのものである。わたしは天使に対してもわたしの秘密を明らかにしたことがないし、彼らの造り*2)を語ったことがない。
彼らはわたしの無限にしてはかり知ることのできない創造を知ることはなかった。わたしはきょうそれを汝に明かそう。
目に見える万物が存在する以前に、光が開いた*3)が、わたしは光のなかを見えないもののひとつとして走りまわった。
あたかも太陽が東から西へ、西から東へ走りまわるように。太陽は休息を見いだすであろうが、わたしはあらゆるものが形をなしていなかったのだから、休息を見いだせなかった。
創造物を目に見えるものにするための基盤を置くために、わたしは深淵のなかで見えないもののひとつが見えるものとして昇るようにと命じた。すると非常に大きなアドイル*4)が出て来た。
わたしはそれを眺めた。それは腹の中に偉大な世を持っていた。わたしは言った。『アドイルよ、みずからを解き放て*5)、そして汝から解き放たれたものが見えるものとなれ』。アドイルはみずからを解き放った。
すると偉大な世がそこから、わたしが造り出そうと望んでいたあらゆる創造物をもたらすものから*6)出た。
わたしはそれをよしと見て、自分に玉座をしつらえ、それに すわった。
わたしは 光に言った。『汝はより高みに昇って、確固としたものとなり、高みのものの基いとなれ』。そして光より上には他の何も存在しない。
次にわたしは玉座から立ち上がり眺めた。 そして次には深淵の中で呼び かけ、言った。『見えないもののうちから固きもの*7)が生じて見えるものとなるように』。
するとアルハズ*8)が出て来た。固く*9)、重く、いと黒きものである。わたしはそれをよしと見て、言った。『汝は下へ降りて、確固としたものとなり、下のものの基いとなれ』。そして暗闇の下には他の何も存在しない。
わたしはエーテルを光で包み、それをふくらませ、暗闇の上にひろげた。そして水から 大きな石を固めて造り、奈落の霧*10)に干上がるように命じ、ふたたび落ちたものを奈落と名づけた。
わたしは海を一ヵ所に集め、それをひとつのくびきで結んだ。また陸と海のあいだに永遠の境界を設けたが、それは水によって破壊されることはないであろう。
わたしはおおぞらを固め、それを水の上に置いた。天の軍勢すべてのために偉大な光の太陽を造り、それが地上を照らすようにと天に置いた。
わたしは石から大きな火を起こし、その火からすべての体のない軍勢と星の軍勢、ケルビム、セラピム、オパニムを作った。これらすべては火から生じさせたのである。
また、大地に命じて、あらゆる樹木とあらゆる山*11)とあらゆる青草*12)、あらゆるまかれた種*13)を成長させた。
生きものを造る前に、わたしは生きものの食物を用意したのである。
また、海に命じて、魚とあらゆる地をはう蛇の類とあらゆる飛ぶ鳥を生ませた。
こうしたすべてをなしとげた時に、わたしはわたしの英知に命じて人間を造らせた。
いまやエノクよ、わたしがおまえに語ったことすべて、おまえが天で見たことと地で見たことすべて、およびおまえが本のなかに書いたことすべては、わたしが英知に よって そのすべて を造り出そうとエ夫したことである。
下の基盤から上のそれとその端までわたしが創造したのであって、助言者も後継者もいない。手の業によらない*14)
永遠のわたし自身であって、わたしの不易の考えが助言者で、わたしのことばが行為である。わたしの目はすべてを見ている。もしわたしがそのすべてを眺めれば、それは静止し、もしわたしが顔をそむけると、すべては破壊されるのである。