『Before I go to sleep』という映画を観た。
あのニコール・キッドマンが主演していたので
思わず興味を持ったのだが、これが実に面白い
心理サスペンス映画であった。
邦題は『リピーテッド』になった模様で、
5月23日から劇場公開となるようなので、
かなり先取りして観ることが出来た。
あのリドリー・スコットが製作総指揮を
担当している本作は、イギリスのベストセラーを
映画化した作品だが、ストーリーはこうである。
クリスティーン(ニコール・キッドマン)は、
事故の後遺症により毎朝目覚める度に、
前日までの記憶が失われてしまう特殊な
記憶障害を負っている。夫のベン(コリン・ファース)は、
結婚していることや夫である自分のことすらも
忘れてしまう彼女を、献身的な愛で支えていた。
ある日、ベンの留守中に医師を名乗る男
(マーク・ストロング)から電話がかかってくる。
少し前から夫に内緒で、クリスティーンの
治療にあたっているという医師は、
「数週間、あなたは毎日の出来事をひそかに
映像日記として撮影してきた」と言い、
その隠し場所を告げる。そして、日記を再生した
クリスティーンは、記憶障害の原因が、
誰かに襲われて瀕死の重傷を負ったことだと知る。
夫の言葉と相反する医師の言葉。
一体誰を信じればいいのか?
クリスティーンは〝昨日の自分からのメッセージ″を頼りに、
謎を追っていくが、辿りついた真実は、
想像もできないものだった。
所謂記憶障害もののドラマで、
一見良くある設定にも見えるが、
映画全体のタッチと展開がとてもサスペンスフルで、
犯人は一体誰で、前日までの記憶を無くしてしまう自分に
関わる夫や担当医など、身の周りの人間の内、
誰を信頼すれば良いのか?
そして、クリスティーンにどのような結末が
待ち受けているのかとハラハラさせられる内容で、
最後まで観客を飽きさせない。
かといって、チープなホラー映画のように、
変に過剰にやり過ぎてもいないところがとても好感が持てた。
大体の場合において、この手の心理サスペンスは
ストーリーをこねくり回し過ぎてわかりにくく
なっていたりというケースも多いが、
この映画はうまくバランスも取れていた。
主人公のクリスティーン役には
ニコール・キッドマン。
夫役には『英国王のスピーチ』の
コリン・ファース。
ニコール主演の映画は、昨年の
『グレイス・オブ・モナコ』以来。
グレース・ケリー役をニコール・キッドマンが
好演していたが、グレース・ケリーと言えば
やはり僕の大好きな映画監督、
アルフレッド・ヒッチコックである。
そこで、本作品にもニコール・キッドマンと
ヒッチコックにまつわる興味深い接点を感じた。
こう言った心理サスペンスはヒッチコックが
良く好んで映画したテーマで、彼の作品である
『白い恐普x、『汚名』、『疑惑の影』、『めまい』、
『マーニー』などにも通ずるテーマである。
ヒッチコックはイングリッド・バーグマン、
キム・ノバック、ティッピー・へドレン等、
主役にはいつもミステリアスなブロンドの美女を
据えることが彼のトレードマークであったが、
この『リピーテッド』もグレース・ケリーを演じた
ニコール・キッドマンを持ってくる辺りが、
とてもヒッチコック的で嬉しい。
ヒッチコックがまだご健在であったなら、
ニコールを好んだかもしれないし、
この『リピーテッド』もヒッチコックが喜んで
映画化したストーリーであったに違いない。
このような作品に思わず出会うことが出来たのは
何とも幸運であった。
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