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壮絶な切腹映画、『一命』をついに鑑賞

10月から劇場公開されている映画『一命』を、
ついにシネコンで見ることが出来た。
この映画は、今年の5月に開催されたカンヌ映画祭にも
コンペティション参加して、現地でも絶賛を浴びた作品
でもあり、また、『十三人の刺客』に続く三池崇史監督の
大型時代劇作品として公開を楽しみにしていた。
市川海老蔵、瑛太、満島ひかり、役所広司、鋳?シ人など
豪華な出演陣も注目が集まっていた。




そして、ついにこの映画を見た感想だが、
とにかく“壮絶”の一言。そして完全な“切腹”映画である。
欧米ではなかなか理解されない日本の“腹切り文化“に
真っ向から挑んだ作品であるが、
正直かなり見ていてキツイ映画である。
映画としての完成度はかなり高い“傑作”だと思うが、
とにかく全編を重苦しく、暗い空気が支配しており、
決して見終わった後楽しくなるような映画では無い。
シネコンを出てからも完全に引きずってしまうような、
そんな作品である。

映画は、初老の浪人、津雲半四郎(市川海老蔵)が井伊家を訪ね、
“切腹をしたいので庭先を貸してほしい“と
申し出るところから物語は突然始まる。
時代は江戸時代初頭、戦国の世は終わり、平和な時代が訪れていたが、
御家取り潰しが相次ぎ、仕事も家も無く、生活に困った浪人たちの間で、
“狂言切腹”が大流行。それは裕福な大名屋敷に押しかけ、
“庭先で切腹させてほしい”と願い出ると、面唐ッたい屋敷側から
職や金銭が貰えるという都合の良いゆすりであったが、
果たして半四郎も狂言切腹なのか?



半四郎の切腹願いを受けた井伊家の江戸家老、
斎藤勘解由(さいとうかげゆ)は、数か月前に同じような申し出で
訪れた男の結末を語り出すが、
果たして半四郎の切腹願いの裏にある真相は?
そして、その数カ月前に切腹した男との関係は?



半四郎はやがて、自分の素姓を明かして真実を語り出すが、
回想シーンとしてこの切腹願いに至るまでの背景が描かれていく。



いきなり切腹騒ぎから始まる冒頭の展開からすると、
“この映画、一体2時間半も持つのだろうか”
思えるほど、結末やその後の展開が途中読めない。
そして、途中、目を背けたくなるような、
“壮絶”な切腹シーンを経て、衝撃のラストへと進んでいく。
(この部分の詳細はネタバレを避ける意味でも敢えて割愛する)



三池監督作品で言えば、『十三人の刺客』が“動”の作品であった
のに対し、この『一命』は“静”の作品であり、対照的でもある。
派手なアクションやチャンバラがメインでは無く、静かで途轍もなく
哀しい物語だ。

そして美しい紅葉や、京都南禅寺でのロケ、
ゴシックホラー調の武家屋敷セット、雪が降る中での殺陣シーンなど、
タランティーノ監督が泣いて喜ぶようなシーンが満載。
映像美へのこだわりも、世界クラスの完成度と言って良いだろう。



歌舞伎的な演技が光る市川海老蔵もなかなか魅力的だが、
やはり演技に渋みのある役所広司、演技力が秀でている
若手女優の満島ひかり、そして瑛太が悲劇的な運命を辿った男を
見事に演じており、どの役者も好演している。
満島ひかりと瑛太は、今年7月にフジテレビ系で放映されたドラマ、
『それでも、生きてゆく』でも共演しているが、
今回は夫婦役を演じている。

武士の面目を保つことが重要なのか、
それとも人として正しく生きるのか。。。
一命を懸けて己の信じる“義”を貫く武士の生き様を通して、
日本人の哲学、武士道などについて、
改めて考えさせられた作品であった。

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