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まず、蜷川実花と言えば、言わずと知れたあの蜷川幸雄の娘。有名監督・演出家の娘で共に才気溢れる女流映画監督という点で、フランシス・フォード・コッポラ監督の娘であるソフィア・コッポラとも比較されることが多いが、どちらの女流監督も、親に負けず、実にオリジナリティー溢れる独特な感性で作品を発表している。
蜷川実花の初監督作品、『さくらん』は、
花魁の世界を独特の色合いと世界観で描き、
土屋アンナを起用したことでも話題となったが、今回の『ヘルタースケルター』は一体どんな映画になってしまうのかとわくわくしながら、今回シネコンに足を運んだ。
まず、見終わった率直な感想として、色々な意味で“強烈”の一言!思いっきり打ちのめされてしまった。そして、沢尻エリカの美しさは作品中際立っていた。
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全身整形を重ね、スターに上り詰めていくリリコ。しかし、彼女が次第に狂気の世界に堕ちていく姿を沢尻エリカが、強烈なインパクトを持って熱演している。
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沢尻エリカを主役に抜擢したのは、とても紙一重で危うい選択では無いかと思ったが、蜷川実花も一か八かの賭けに出たというわけだ。私生活でも何かとお騒がせな沢尻エリカは、リリコを地で行く感じもあって、ある意味一世一代のハマリ役が回ってきたとも言える。元々演技に定評があった沢尻エリカだが、『クローズドノート』以来映画主演から遠ざかっており、その意味では今回あまりにも強烈な形でのカムバックを果たした。しかも、今回はヌードや強烈なセックスシーンなどもこなし、何とも衝撃的!まさに体当たりの演技であった。
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そして、リリコ役の沢尻エリカを、桃井かおり、寺島しのぶ、哀川翔、窪塚洋介、大森南朋、水原希子等、個性豊かな役者陣が固める。
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映画全体を支配する、蜷川実花の極彩色な世界。そして、狂気に堕ちていくシーンは、ヒッチコックの『サイコ』さながらの、オカルトチックな音楽と演出がとても印象的。全体的に、映画というよりは、アート作品を見ているような狂気と幻想に満ちた世界観を持たせながら、うまくリアリティーを融合している点で、芸術性の高い、秀逸な作品であったと思う。
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衝撃的なラストも含め、見終わった後にどっと疲れる映画であったが、インパクトという意味では今年ナンバー1の映画だろう。
そして沢尻エリカの美しさと見事な怪演は一見の価値有り。蜷川実花もまた凄い映画を作ってしまったものである。