『清須会議』が紹介されていたが、そのとても面白そうなテーマに
思わず興味が湧いてきてしまい、すぐに本屋で購入した。
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読みだしてみると、これが何とも読みやすい!
先の展開が楽しみになって、どんどんのめり込んでしまう。
普通歴史小説等は、言葉遣いも含め難しくなりがちだが、
この本は現代語訳となっている点でも読みやすく、
そして何よりも三谷幸喜らしい、とてもユーモアラスな解釈が
与えられているのが何とも面白いのだ。
“実際、こんな感じだったのかもなあ”なんて
思いながら読めてしまう、そんな味のある作品である。
正直、こんな面白い本は久しぶりに読んだ。
『清須会議』とは、実際に歴史上あった出来事。
明智光秀に暗殺された織田信長の後継者を誰にするかを選ぶという、
戦国時代に終わりをもたらせたこの重要な決定事項が、
戦場では無く、清須城での“会議”という形で行われたのだ。
そもそも、城好きで、戦国時代や安土桃山時代が大好きな
僕としては、この清須会議という題材自体興味のある
テーマであったが、これを一つの小説の舞台にしてしまうという点が
如何にも三谷幸喜ならではの着眼点で素晴らしい。
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会議ということで、普段は歴史の教科書等では軽く流されて
しまう出来事だが、本来その登場人物は豪華で多彩。
しかも密室にも近いドラマ設定が、全体に緊張感を与えていて面白い。
中心となるのは織田信長を支えた4家老。
天下を狙う豊臣秀吉、それを阻止したい柴田勝家、
頭脳明晰な丹羽長秀、そして流れに乗るのが巧みな池田恒興
という主要会議メンバーを中心に、
これを取り巻き、利用される織田信長の次男である織田信雄と
三男の信孝、信長の弟である信包、そして、
それぞれ自分の思惑がある信長の妹、お市の方、
秀吉の妻の寧、秀吉のブレインである黒田官兵衛など、
様々な人物が登場し、清須会議前後の計5日間の息詰る攻防を
見事な笑いとドラマに満ちた駆け引きに仕上げている。
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実際の会議が始まる前に、双方水面下で絶妙な
駆け引き合戦が行われるわけだが、それぞれ相手の性格を
掴んだ上でのユニークな攻防が何とも功名。同じシーンを
それぞれ違う人物の立場・視点で描く点で
物語に深みを与えており、そして三谷幸喜らしい
笑いが随所に散りばめられている。
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この多彩な登場人物設定は、三谷幸喜作品に不可欠な要素だ。
そしてこの小説、来年には三谷幸喜により
映画化されることが既に決まったらしいが、
誰が豊臣秀吉や柴田勝家を演じるのか、とても楽しみである。
きっと『ステキな金縛り』にも負けないような
豪華キャストな作品になること間違いなしである。
映画にも注目したいが、まずはこの傑作物語を、ぜひ
本で読まれることをオススメしたい。