彼は、途中から主導権を握る。
そうなる瞬間がたまらなく好き。
私がリードすることなんて、彼にとったらくすぐられる程度なんだろう。
きっと彼は、余裕でそのタイミングを見計らっている。
やがてMである私は、
従順に従うことに喜びを感じ始める。
彼の指示が、私の許容範囲を超える時がある。
拒否しようものなら、
もう止めるよ。
って、そっけない態度。
熱った身体は、途中では終われなくなっていて、
おのずと、
彼の指示通り、
鏡の前で、恥ずかしい姿を自分に見せつけていた。
私の内臓の一部は、ボケの花の色をしている。
そう思って見ていた。
次の指示が飛ぶ。
激しく逝きなさい!
私は、ようやくその時を許された。
逝ったら報告するように。
抱きしめてあげるから。
そんな文字が、画面に映る。
私は、見守られている。
想像じゃない。
これはリアルな妄想。
気絶するかと思った。
彼の名前を呼んだ。
今、抱きしめてほしいと、お願いした。
返信は、すぐにあった。
抱きしめているよ。ほら。
スマホの向こう側の彼は、とても優しく私を包んでくれた。
私は1人、布団の中でうずくまって、ぼんやり目を開けて、
自分の温もりなのに、彼の体温だと勘違いをし、
とても安心して、
やがて寝落ちした。
とうてい、
犬の散歩には行けそうになかった。
今日は土曜日だから、ごめんね…。
土曜日の朝、世間が夢から覚める頃、
ここだけは、違う時間が流れていた。
私は、昨日も今日も、彼に抱かれた。
まだ一度も会ったことない人と、
夫婦より、夫婦なのではないかと、勘違いした。