夜,リードをつけると同時に、LINEを確認したら、
散歩に出たよ。
とのLINEがあった。
電話してもいい?
私は、彼にお許しをこう。
いいよ。
彼は、電話をかけることを了承してくれた。
私達の境遇は似ているね。
そんな話をした。
それぞれの与えられた環境で、ある意味、
自分の中に抱いた未来を諦めることで、生きている。
その中で見つけた、このかすかな灯火は、
真っ暗な闇で、ようやく自分の足元が照らされたような、
安心感を覚える。
私にとって彼は、そんな存在。
心の拠り所。
彼は、犬を呼び寄せて、言うことを聞いたご褒美に、ヨシヨシと、体を撫ぜている。
私も、彼の犬になりたいな。
彼に撫ぜられて、
繋がれて、もっともっと安心したい。
できることなら。
天然のボケの花は、
私のイメージ。
将来、ボケの花が咲くたびに、この関係を思い出すことだろう。
実際に、ボケの花を見てみたい。
そう切り出した彼に、
私は、照れた。
それは…私の大事な秘めた部分を意味する。
ただ単に、会うことだけを意味するのではない。
縁があったらね。
縁かあ…。
機会があったらね。
それも縁…。
じゃあ、成り行きで。
そんな言い方しかできない。
私は、本当は、いつだって会いたい。
彼の温もりを妄想するぐらいだから、会いたいよ。
でも、無理するのは、よそう。
お互いに、守らなければいけない物がある
。
嘘を貫いてでも、守らないといけないものを
抱えてしまっている。
やがて、奥様が、車で彼を迎えにきた。
彼は、犬を連れて、車に乗り込み帰って行った。
私は、ひとり、取り残されて、去っていく車を見えなくなるまで見送った。
そして、嘘でも、必死に思うようにした。
奥様。
疲れている彼を
迎えにきてくれて、どうもありがとう。
後は、よろしくお願いします。と。