彼とLINEを始めて、ちょうど7ヶ月が経つ。
あの頃は、この関係の終わりが来るのが怖くて常に怯えていたけれど、
まだ、かろうじて、その時は訪れていない。
いろいろあったけどね。
その度に、
いつも、彼は、ちゃんと導いてくれて、許してくれる。
そして私は、彼に指摘された事を正して、染まろうとする。
でも、こんなに月日が経っていても、
彼の心を掴めていないのが現状。
ただ彼は、現実の世界で出せていない、自分の姿を曝け出すために、ここに来のだろう。
そして、
私の心を見透かして、あざ笑う。
アプローチの仕方を変えないと、心は動かないよ。
バーチャルの世界の限界。
視覚、聴覚、それだけじゃない。
触覚が大事。
そんな風に言われても、どうしたらいいかわからない。
戸惑う私に、分かりやすく説いてくれる。
重たい石。
重たい丸太。
それらをどうしたら動かせるか考える。
知恵を使わないとね。
そして、情報収集して、現状を把握するんだよ。
わかったような、わからないような…。
それができたら、あなたの心は、動くの?
そういうことなのね。
その夜、彼に動画を送りつけた。
私のもう一つの姿。
彼の名前を息を殺しながら叫んで、
心と体を震わせて、
果てた後の息遣いは荒く、
ひとりで耐えている姿。
これは、彼への精一杯のアプローチ。
彼が思っている答えとは違うかも知れない。
本当は、間違いかもしれない。
でも、私は馬鹿だから、
こんなことしかできないの。
電話で話している時も、
LINEを交わしていている時も、
私がいつも感じるのは、
彼の頭の良さ。
時々、答え方がわからなくて、パニックになる。
そんな私のことを
やっぱり、わからなかったか!
そう言って笑う。
私はあなたに…
きみは、俺に…
同じことを言う。
「肉体でも負けて、頭脳でも負ける」
私に、勝ち目なんて、無いね。
勝とうと思ってたの?
いいえ、
勝とうなんて、恐れ多いです。
わたしが、彼に勝るものなんて、何もありません。
彼は、それでいいと言った。
そして、いつものように、
私が知らないことをいっぱい教えてくれる。
言葉で、私を楽しませてくれる。
彼は、途中から主導権を握る。
そうなる瞬間がたまらなく好き。
私がリードすることなんて、彼にとったらくすぐられる程度なんだろう。
きっと彼は、余裕でそのタイミングを見計らっている。
やがてMである私は、
従順に従うことに喜びを感じ始める。
彼の指示が、私の許容範囲を超える時がある。
拒否しようものなら、
もう止めるよ。
って、そっけない態度。
熱った身体は、途中では終われなくなっていて、
おのずと、
彼の指示通り、
鏡の前で、恥ずかしい姿を自分に見せつけていた。
私の内臓の一部は、ボケの花の色をしている。
そう思って見ていた。
次の指示が飛ぶ。
激しく逝きなさい!
私は、ようやくその時を許された。
逝ったら報告するように。
抱きしめてあげるから。
そんな文字が、画面に映る。
私は、見守られている。
想像じゃない。
これはリアルな妄想。
気絶するかと思った。
彼の名前を呼んだ。
今、抱きしめてほしいと、お願いした。
返信は、すぐにあった。
抱きしめているよ。ほら。
スマホの向こう側の彼は、とても優しく私を包んでくれた。
私は1人、布団の中でうずくまって、ぼんやり目を開けて、
自分の温もりなのに、彼の体温だと勘違いをし、
とても安心して、
やがて寝落ちした。
とうてい、
犬の散歩には行けそうになかった。
今日は土曜日だから、ごめんね…。
土曜日の朝、世間が夢から覚める頃、
ここだけは、違う時間が流れていた。
私は、昨日も今日も、彼に抱かれた。
まだ一度も会ったことない人と、
夫婦より、夫婦なのではないかと、勘違いした。