アリ@チャピ堂 お気楽本のブログ

日々の読書記録を勝手きままに書き記す

様々な物語の源泉がここにある

2022-01-24 23:38:27 | SF
デューン・シリーズの思い出

映画「ブレードランナー2049」の監督、ドゥニ・ヴィルヌーヴが「DUNE」を映画化した
映画を見に行きたかったが
世情も私情も映画館に出かける環境になくネット配信でようやく見ることができた
そして映画館で観たかったと悔やまれる
これから先可能性がないわけではないが・・再映はあるだろうか

ジョージ・ルーカスが映画化を諦め
あのデイヴィッド・リンチが果敢に取り組んだが
その完成度に自ら失望したというほど
その世界観を映像化するのが困難と言われた原作だが
この時代のSFXをフルに動員し
映像は原作のイメージを損なうこと少なく
37年前の映画を凌ぐものとなっていた
大画面で見ることができたらその思いをもっと強くしただろう
しかし、読者でない者にとってどうだったんだろう
スケールや映像の質に感嘆する以上に
ハーバートの世界を楽しめただろうか
長編を、特にその設定が重要な物語を
せいぜい2時間半の映画で表現することの難しさ、限界がそこにある
そう2時間半では無理なので今回はpart1だった!
それでもどうなんだろう
まあSF界の必読書なんだから読んできてよねと
原作とその設定を知ったうえで評価してよねと
そういう映画なのかもしれない

映画が公開されて新訳版が出ているのを知った

「デューン 砂の惑星 上・中・下」〔新訳版〕(ハヤカワ文庫SF) 2016年発行
フランク ハーバート著 酒井 昭伸訳


本屋に通うことがめっきり少なくなったこともあるが
この頃書店の棚から海外ノベルが減り
いや書棚そのものが減らされ文具や雑貨が取って代わっている状況で
出会う確率も減っている
さらに言えば書店が残っているだけでも貴重になってきている
結局ググって新しい本が出ているのを知るか
おせっかいな押し付けバナーで知らされるという
ちょっと切ない出版界の状況がある・・

70年代、高度成長に浮かれた青春時代
私が読んだ文庫は石森章太郎(まだ「石ノ森」と改名する前)のカバーイラストだった
その感想はとすぐに書き出すことは難しい
なにせ半世紀前の読書体験で記憶の細部は薄れてしまっている
徹夜して読み返してみる体力が今はなく
棚にあった黄ばんだ文庫本の表紙だけスキャナしアップするところまで
この物語もそう安々とは語らない方が良いように思える・・ので


「デューン 砂の惑星 1 」 (ハヤカワ文庫SF)
フランク ハーバート著 矢野徹訳 1972年発行



「デューン 砂の惑星 2 」 (ハヤカワ文庫SF)
フランク ハーバート著 矢野徹訳 1973年発行



「デューン 砂の惑星 3 」 (ハヤカワ文庫SF)
フランク ハーバート著 矢野徹訳 1973年発行



「デューン 砂の惑星 4 」 (ハヤカワ文庫SF)
フランク ハーバート著 矢野徹訳 1973年発行



「デューン 砂漠の救世主」 (ハヤカワ文庫SF)
フランク ハーバート著 矢野徹訳 1973年発行



「デューン 砂丘の子供たち 1 」 (ハヤカワ文庫SF)
フランク ハーバート著 矢野徹訳 1978年発行



「デューン 砂丘の子供たち 2 」 (ハヤカワ文庫SF)
フランク ハーバート著 矢野徹訳 1979年発行



「デューン 砂丘の子供たち 3 」 (ハヤカワ文庫SF)
フランク ハーバート著 矢野徹訳 1979年発行
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2012年12月21日に何しているかな?

2012-11-14 07:56:58 | SF
「滅亡の暗号」の暗号の意味は?

滅亡の暗号(上) (新潮文庫)
ダスティン・トマスン
新潮社

滅亡の暗号(上) ダスティン・トマスン著、柿沼 瑛子訳、新潮社文庫、2012年

滅亡の暗号(下) (新潮文庫)
ダスティン・トマスン
新潮社

滅亡の暗号(下) ダスティン・トマスン著、柿沼 瑛子訳、新潮社文庫、2012年

原題は「12.21」で明快である
本の主題は「再生」なのではないか
邦題「滅亡の暗号」は著者が「フランチェスコの暗号」の共著者の片割れであるため
その流れで着けたのだろうがいかがなものか
(こちらも原題は“The Rule of Four”で、あたりまえだが原題の方が良い)
マヤの絵文書の解読が「暗号」なのか
プリオン病の治療方法を探すことを謎解きとするのか?
邦題の粗探しをしていても仕方がないと反省

さて、話としては「フランチェスコの暗号」の方が謎解きがあって面白かった
こちらは「暗号」というより文明論が主題であり
やはり邦題の問題を蒸し返すが「暗号」はピンとこない

マヤの暦と滅亡を結びつける風説は
映画「2012」で知った程度で詳しくない
その時を迎えるというノストラダムスの「大予言」ほどの興奮はない

プリオン病が伝染していく過程と
特効薬を発見するあたり
プリオン説自体にいささか疑問を感じながらなので(「プリオン説はほんとうか?」参照)
最初からバイアスはかかっていたけれど
シリアスさ(手に汗握るような)はいま一歩であった

しかし、全体の着想と展開
何よりも新しい世紀という発想は面白いと思いました


SFで良かったのか、サスペンスだったのか?
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萩尾望都氏推薦の本

2010-11-21 15:35:21 | SF
「虎よ!虎よ!」 SF入門時代の1冊


「虎よ!虎よ!」 アルフレッド・ベスター著 中田耕治訳 1956年作品
ハヤカワ文庫SF 1978年発行

SF小説を読み始めた最初の頃の1冊
新本を読む時、書店店頭で本を探すことが多かったが
この本を選んだ理由は漫画家の萩尾望都氏の推薦による
姉が読んでいた「ポーの一族」や「トーマの心臓」がとても面白かった
「11人いる」「百億の昼と千億の夜」などSFものも多い
そのインタビュー記事に、好きなSF作品はと問われ
答えがこの「虎よ!虎よ!」だった

人間は、どうしても観察者である自身の壁を超えられない
主観的心象世界のなかに捉えられているという永遠の束縛の中にいる
だから自分が特別な存在になる(あたりまえですね)
私が死ねば、私の心象としての世界も消え失せ宇宙も終る
(霊魂とか信じていれば不滅もあるかもしれませんが)
私に何がしかの決定的意味があるのではないか・・
自分が存在しなければ宇宙もまた存在しないと言う創造主に
自分が死ねば宇宙も消え失せると言う破壊者に

良い小説こそ究極のヴァーチャルリアリティをもたらす情報のインプットになる
(ディックの影響が大きいですね、この発想は)
フォイルになり世界の命運をこの手に握る
審判を下すのは私か・・

この本の後、「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」に本屋で巡り合った
ディック体験の前哨となった1冊でもある

 萩尾氏に感謝!
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沖縄こそ最大の霊的エネルギーの極点

2010-08-31 22:22:11 | SF
「レキオス」 沖縄こそ霊的決戦の舞台にふさわしい


「レキオス」 池上 永一 (著) 角川書店(角川文庫) 2006年

アメリカが駐留地として沖縄に固執する最大の理由は「思いやり予算」であるのかもしれない
海兵隊が殴り込んでいけばそこでは泥沼化した闘いにすべての民が疲弊するばかり
解決ではなく混乱をもたらすことは必定の部隊を居座らせるのに
本国からほどよい遠さで戦場にはほど近く、しかも費用は日本持ちとなれば何故出ていくのか
「地域主権」とある党は言うけれど、外国の軍隊を追いだせないで「主権」もくそもなかろう
北の怪しい国に占領される(?)ぐらいなら、ずっとアメリカに占領されたままで良いと・・

言うようなことを描いているのではない
P.K.ディックの小説「高い城の男」には日本・ドイツの枢軸国が勝利した仮想世界が舞台になっている
「レキオス」という歴史を覆すほどの宇宙的な力が隠された沖縄の地
これは仮想世界なのか現実世界なのか
P.K.ディックが現実を反転して浮き立たせた人間社会の深層に脈打つ暗部
「レキオス」ではディックほど高踏的ではなく、現実をデフォルメし
戯画化して弄び、そして非日常が日常に繋がって行く様を描いている

文字通りのカオス、それは大地に根ざしていると思っている現実世界に見事に溶け込んでいる
そういう世界を描けるのは池上永一が南の島の霊性を受けて育ったことによるのだろうか
読んでみなければわからないのでぜひ一読を乞う

 沖縄の湿度が実にまとわりつくほどの面白さ!
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人類に進化という未来はあるのか 

2010-08-09 21:33:43 | SF
「ダーウィンの使者」 種として行き詰った我々を救うものは何か


「ダーウィンの使者〈上〉」 グレッグ・ベア (著) 大森 望 (訳) ソニーマガジンズ 2000年


「ダーウィンの使者〈下〉」 グレッグ・ベア (著) 大森 望 (訳) ソニーマガジンズ 2000年

人間の遺伝子情報には直接発現にかかわらない「イントロン」という部分があると聞いたことがある
進化の過程で獲得してきた形態や能力と捨て去られてきた形状と無用となった性質
あまりにも当たり前でありながら、もっとも謎に満ちたDNAという設計図
ここには博物学的な人間のこれまでと、生存可能性を問う未読の情報が詰まっている

緻密なリサーチによって物語のリアルさは読むものを物語に強く引き込んでいく
後継ぎが生まれない、それは絶滅への恐怖に直結するが
実は進化のための重要な淘汰の時間であった

読んで損はない1冊です

 遺伝子に秘められた謎を読み解く面白さ

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暗い暗い暗い・・どうしてベストセラーなのか?

2010-07-28 21:52:15 | SF
「ザ・ロード」 私にはこの本の良さが分からない


「ザ・ロード」  コーマック・マッカーシー (著) 黒原敏行(訳)早川書房(ハヤカワepi文庫) 2010年

書店の平棚に並んでいた2冊の本、「ザ・ロード」と「ザ・ウォーカー」
いずれも破滅後の世界を旅するものの話で、明るい未来ではない
このピュリッツァー賞を受けベストセラーとなった「ザ・ロード」が映画化され
その主人公を演じるのがヴィゴ・モーテンセン・・ロード・オブ・ザ・リングのアラゴルンだと
買った理由はそれぐらいである
父と子の絆を描いているらしいけれど、設定から考えてそれはとても過酷なものだろう
「ザ・ウォーカー」はとても似た話のようだが、絆は息子ではなく「本」になる
題も似ているし、設定も似ている・・
しかし、この本の救いの無い暗さのどこを評価するのか・・
私にはわからない

「チャイルド44」の後、「ザ・ウォーカー」に続いて本書という選び方は
やはり難があったような気がする
世紀末を超えた世界だけれど
本当に人類の終焉に、バビロン崩壊が間近に迫っているという危機感がこの本を読ませるのか
古くは「渚にて」以来、人類の愚かさがもたらすだろう最後の日を予告する文学はいくつもある
終末の時を生き抜く人間の不屈を描くよりも
愚かさと戦う不屈をこそ現実としては期待するものだろう

昨日、今日とこの2作を読んだのは・・失敗
とても気分が滅入ってしまう
「ザ・ウォーカー」が後だったらまだ良かったのかもしれない
飢えを描けば避けられないだろうカニバリズムも
食欲を減退させる

この物語をどう評価するのか
この本がピュリッツァー賞に選ばれたことが
何か人類が終末に自らを導いていることの兆しとなっているような気もする
次は明らかに明るい本を読もう


 私には良さがわからなかった

「ザ・ウォーカー」の主人公は「イーライ」という
そして「ザ・ロード」に盲目の老人「イーライ」が登場する
ただ一人名前が明らかになっているが、これは固有名詞ではないのだろうか
「ザ・ウォーカー」の脚本家は、この「ザ・ロード」を意識せずに書いたとは思えない
主人公の名前はここから拝借しているのではないだろうか

「ザ・ロード」は宗教的終末感や救済には交わることがなく
「パパ」は理性的で抑制的であり高踏的な感じさえする
物があふれた社会でも、生きている意味を問うのは難しい
いや、生きられていることを当たり前と思える今だからこそ
生きている意味を問うことの意義さえ希薄になるのかもしれない
何もない、飢えと困難な過酷さが生きる意味を研ぎ澄まし
状況の中で何をあぶり出すのか?
甘えの世界でも、過酷な世界でも、生きる意味は同じように虚しい
このような状況設定に主人公を置く意味と
このような社会を提示しなければ今の我々に現実を振り返らせ
意味を問いかけられないのだとしたら
人々の精神の荒み方が進んでしまっていて何か手遅れになってしまっているように思う
純粋に物語としての価値を問うのだとしても私には響いてくるものがない
久々に疲れる読書になってしまった・・
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カニ、カニ、カニは気味が悪いが 面白い

2010-07-18 09:29:07 | SF
リアルでシリアス、人間の小ささを思わせる



「深海のYrr 〈上〉」 フランク・シェッツィング(著) 北川 和代 (翻訳) 早川書房  (ハヤカワ文庫 NV) 2008年


「深海のYrr 〈中〉」 フランク・シェッツィング(著) 北川 和代 (翻訳) 早川書房  (ハヤカワ文庫 NV) 2008年


「深海のYrr 〈下〉」 フランク・シェッツィング(著) 北川 和代 (翻訳) 早川書房  (ハヤカワ文庫 NV) 2008年

 「深海のyrr(イール)」という本をようやく読み終えました。文庫本で上中下三巻あり、それぞれが550ページ前後あるという大作です。主題は「人類滅亡」の危機であり、それを綿密な取材に基づいた科学的な裏づけをもとに、我々が現実に直面している「環境破壊」「温暖化」のイメージと重ね合わせてリアルに心に響く、いや、読み進めるうちに心の中に自己反省の重さを増大させていくという、ある意味「つらい」本でした。読み物としても面白さ、フィクションの部分で人間以外の知的生命体との戦いがリアルに描写されていますが、これは、人間とは何かと、逆に問いかけるものになっています。出版された2004年にドイツで「ダビンチ・コード」とベストセラーを競ったとのことですが、「ダビンチ・コード」がすでに語り尽くされてきた話題を寄せ集めて再構成しただけの小説であるのに対して、こちらの方が正しく「反宗教的」であるのかも知れません。 

実は、この記事は昨年6月に「アリ@チャピ日記」に掲載したものの流用です
コピペでこんなこともできるなあと実験的手抜きしました

だから読み終えたのは昨年の話です
メキシコ湾の原油流出事故はたった1か所、一つの油井の事故です
二つ、三つ・・・となったらどうなるのでしょうか
1970年代オイルショックの時には20世紀中に石油が枯渇するという話がありました
その後も新たな発見と技術革新で石油を掘り続けていますが
荒唐無稽な空想科学小説と読み捨てることができない物語でした

 時間があれば是非読んでみてください
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