元ちとせ「ワダツミの木」
以上の部分はCDを聞きながらの聞き取りなので
歌詞カード通りではありません
さて、この歌ほど物語を感じさせた歌は
過去なかったように思うのです
歌詞とヴォーカルの両方がそうさせるのだと思いますが
どんな物語なのか
だんだんと脚色されふくらんでいきましたが
こんな話なのです
わだつみの木の物語
-島の国の王子と娘の物語-
南の島の国に美しい娘がいた
まだ若い王子がその娘に恋をした
娘も王子に恋をしたが
それは添い遂げられぬ恋だった
人目をしのび二人は浜辺を歩いた
娘の頭には赤い花がいつもさしてある
はるか西に赤い花の咲く島があるという
そこでなら二人の恋は実るだろうか
いつしか二人の思いは遥か西の島に
二人が結ばれるその地に思いを馳せた
王子は娘に言った
新月の夜舟を出そうと
星の明かりだけをたよりに
二人だけの小さな舟で漕ぎ出し
遥か西の島へ行こう
新月の引き潮のとき
王子が隠した舟で落ち合おうことを約束した
許されぬ二人の恋を島中の者が知っていた
二人が島を出るかもしれない
父王はその話を聞き及ぶと
二人を引き離す謀を命じた
こどもをに文を持たせ娘のところにやった
次の満月のときに出発を早めよう
必ず私はいくと
満月の夜娘は舟のそばに身を隠し
王子の現れるのを待った
浜辺を歩くものがあり
大きな声で話し合っている
王子が結婚することになったと
隣の島の国から妃がやってくると
満月が水平線に落ちかかり
夜が明けようとするまで
何もできず隠れていた
そのまま朝を迎えることはできなかった
娘は一人小さな舟を海に浮かべ
心当てなく櫓を漕いだ
いつしか引き潮にのり舟は沖へと流れ
娘は一人舟に横たわった
すべては波にまかせて
一人娘を乗せた船が島を離れようと
しかし立ち去りがたく沖を漂った
王子は娘の行方が知れなくなったと聞く
若い島の男と逃げたのだと告げるものがある
浜辺をさ迷い跡を求めた
隠された舟はなく
その満月の夜海を見ながらただ佇んでいた
島の漁師たちは満月の夜
不思議な舟を見た
白いほのかな光は満月の光なのか
舟を見とめて近づくと娘が眠るように横たわっている
近づこうとすると舟は逃げていく
離れようとすると舟は追ってくるようである
漁師たちは気味悪がって満月の夜
舟をだすのをやめた
沖をさ迷う舟の話が王子の耳にも届いた
臣下の者に糾すと
その舟には娘と若い男と二人が眠っていたという
王子は悲しみに打ちひしがれたが
どれだけか満月の日が過ぎ
王は隣の国の姫を娶った
娘を乗せた舟は島から離れながら
しかし引き寄せられて漂っていた
いつしか舟は朽ちていき
娘の体は海の水に守られるように
浮かんでいる
その体を水面に支える最後の支えを失うと
遠く浅い砂の底に静かに降りて行き
足が海の底をとらえたとき
いつしか白い大きな木の姿に思いを託し
漂うことをやめて一本の木となった
海に立つ木は満月の夜
赤い花を咲かせる
その木は漁師たちだけでなく
月の明るい夜に浜から西の海の
遠い水平線に浮かんで見えた
島中の人がその木のことを知り
何の化身であろうかと噂した
新王の耳には入らないようにと
周りのものは口をつぐんだが
妃がその話を聞き新王に話をした
赤い花の咲く海に立つ木の話を
新王は島人の姿に身をやつして
気づかれぬよう城を抜け出した
そして西の海の見える浜辺に立ち木を探した
気も狂わんばかりに遠くを見入る男に
老人が声をかけた
何をさがしているのかと
私は娘をさがしている
舟出をするはずだったのだと
老人は舟に漂う娘の話をした
あなたが探しているのはその娘なのかと
新王はその舟には誰が乗っていたのかと尋ねた
老人はただ娘だけが
微笑を浮かべて眠っていたと話した
娘だけが
新王は西の海のかなたに眼をやった
傾いた満月が水平線に落ちようとする
かなたに白い木が見えた
遠くおおきささえ見極められそうもないのに
そこに一本の木が見えた
海が足を洗うのも気にせずに
いつしか海へと入っていく
すると赤い花が潮に乗せて運ばれてきた
紛れもなく娘のあの花飾りのはなである
新王は海に身を投げるように泳ぎ出した
いつの間にか老人の姿は消え
浜辺には新王が残した足跡のみが残っている
新王は沖へと向かって泳ぎだした
どれだけ遠くともその木のもとに泳ぎ着きたい
ひとつ泳ぐたびに
木が大きく近づいてくるような気がした
どこまでも力の限り泳ぎつづけて
新王はついに枝の一つ一つがうかがえるほど近くに
泳ぎ着いた
しかしそこからは泳いでも泳いでも
その木に近づくことができなくたった
新王の体はいつの間にか水面を割って
海の中へと消えていった
風にそよぐように枝々がざわめき
大きな赤い花が満開となって枝々に咲いた
そして新王の体は海に立つ木に旅を続けた
その日から海に立つ木は見えなくなった
そして新王の姿を見たものも誰もいない
了
以上の部分はCDを聞きながらの聞き取りなので
歌詞カード通りではありません
さて、この歌ほど物語を感じさせた歌は
過去なかったように思うのです
歌詞とヴォーカルの両方がそうさせるのだと思いますが
どんな物語なのか
だんだんと脚色されふくらんでいきましたが
こんな話なのです
わだつみの木の物語
-島の国の王子と娘の物語-
南の島の国に美しい娘がいた
まだ若い王子がその娘に恋をした
娘も王子に恋をしたが
それは添い遂げられぬ恋だった
人目をしのび二人は浜辺を歩いた
娘の頭には赤い花がいつもさしてある
はるか西に赤い花の咲く島があるという
そこでなら二人の恋は実るだろうか
いつしか二人の思いは遥か西の島に
二人が結ばれるその地に思いを馳せた
王子は娘に言った
新月の夜舟を出そうと
星の明かりだけをたよりに
二人だけの小さな舟で漕ぎ出し
遥か西の島へ行こう
新月の引き潮のとき
王子が隠した舟で落ち合おうことを約束した
許されぬ二人の恋を島中の者が知っていた
二人が島を出るかもしれない
父王はその話を聞き及ぶと
二人を引き離す謀を命じた
こどもをに文を持たせ娘のところにやった
次の満月のときに出発を早めよう
必ず私はいくと
満月の夜娘は舟のそばに身を隠し
王子の現れるのを待った
浜辺を歩くものがあり
大きな声で話し合っている
王子が結婚することになったと
隣の島の国から妃がやってくると
満月が水平線に落ちかかり
夜が明けようとするまで
何もできず隠れていた
そのまま朝を迎えることはできなかった
娘は一人小さな舟を海に浮かべ
心当てなく櫓を漕いだ
いつしか引き潮にのり舟は沖へと流れ
娘は一人舟に横たわった
すべては波にまかせて
一人娘を乗せた船が島を離れようと
しかし立ち去りがたく沖を漂った
王子は娘の行方が知れなくなったと聞く
若い島の男と逃げたのだと告げるものがある
浜辺をさ迷い跡を求めた
隠された舟はなく
その満月の夜海を見ながらただ佇んでいた
島の漁師たちは満月の夜
不思議な舟を見た
白いほのかな光は満月の光なのか
舟を見とめて近づくと娘が眠るように横たわっている
近づこうとすると舟は逃げていく
離れようとすると舟は追ってくるようである
漁師たちは気味悪がって満月の夜
舟をだすのをやめた
沖をさ迷う舟の話が王子の耳にも届いた
臣下の者に糾すと
その舟には娘と若い男と二人が眠っていたという
王子は悲しみに打ちひしがれたが
どれだけか満月の日が過ぎ
王は隣の国の姫を娶った
娘を乗せた舟は島から離れながら
しかし引き寄せられて漂っていた
いつしか舟は朽ちていき
娘の体は海の水に守られるように
浮かんでいる
その体を水面に支える最後の支えを失うと
遠く浅い砂の底に静かに降りて行き
足が海の底をとらえたとき
いつしか白い大きな木の姿に思いを託し
漂うことをやめて一本の木となった
海に立つ木は満月の夜
赤い花を咲かせる
その木は漁師たちだけでなく
月の明るい夜に浜から西の海の
遠い水平線に浮かんで見えた
島中の人がその木のことを知り
何の化身であろうかと噂した
新王の耳には入らないようにと
周りのものは口をつぐんだが
妃がその話を聞き新王に話をした
赤い花の咲く海に立つ木の話を
新王は島人の姿に身をやつして
気づかれぬよう城を抜け出した
そして西の海の見える浜辺に立ち木を探した
気も狂わんばかりに遠くを見入る男に
老人が声をかけた
何をさがしているのかと
私は娘をさがしている
舟出をするはずだったのだと
老人は舟に漂う娘の話をした
あなたが探しているのはその娘なのかと
新王はその舟には誰が乗っていたのかと尋ねた
老人はただ娘だけが
微笑を浮かべて眠っていたと話した
娘だけが
新王は西の海のかなたに眼をやった
傾いた満月が水平線に落ちようとする
かなたに白い木が見えた
遠くおおきささえ見極められそうもないのに
そこに一本の木が見えた
海が足を洗うのも気にせずに
いつしか海へと入っていく
すると赤い花が潮に乗せて運ばれてきた
紛れもなく娘のあの花飾りのはなである
新王は海に身を投げるように泳ぎ出した
いつの間にか老人の姿は消え
浜辺には新王が残した足跡のみが残っている
新王は沖へと向かって泳ぎだした
どれだけ遠くともその木のもとに泳ぎ着きたい
ひとつ泳ぐたびに
木が大きく近づいてくるような気がした
どこまでも力の限り泳ぎつづけて
新王はついに枝の一つ一つがうかがえるほど近くに
泳ぎ着いた
しかしそこからは泳いでも泳いでも
その木に近づくことができなくたった
新王の体はいつの間にか水面を割って
海の中へと消えていった
風にそよぐように枝々がざわめき
大きな赤い花が満開となって枝々に咲いた
そして新王の体は海に立つ木に旅を続けた
その日から海に立つ木は見えなくなった
そして新王の姿を見たものも誰もいない
了