アリ@チャピ堂 お気楽本のブログ

日々の読書記録を勝手きままに書き記す

講師は「元気」の伝道師でした

2010-12-12 17:46:44 | エッセイ他
「君の星は輝いているか」 どうだろう??


「君の星は輝いているか―世界を駈ける特派員の映画ルポ」 伊藤 千尋(著) シネフロント社 2005年発行

バッハが音楽の、そして魂のエヴァンゲリストだとしたら
朝日新聞社の記者(現在も「Be」編集部に所属されているそうです)で前編集委員の
伊藤千尋氏は「元気」の伝道師でした

というのは、機会があって講師としてお願いし
「元気の出る講演会」という副題で中南米の今について話をお聞きしたのです
なぜアメリカの裏庭として独裁政権による長い停滞期から脱し
中南米の国々が元気になっているのか・・
そこにはラテン系の人々らしい
苦境であってもめげず楽天的な民族性が
状況を変えようという大きな力になっていった
状況主義で諦めがちで一人では何もしない日本人との大きな違いと話されました
(日本人論は私の感想です)

映画を取り上げながら、その背景となる社会状況を
記者としてのルポルタージュを織り交ぜ語ります


エヴァンゲリスト繋がりだと次は・・
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B級グルメは脱帽して退散

2010-11-16 21:36:29 | エッセイ他
「食通知ったかぶり」 丸谷才一のスノビズム


「食通知ったかぶり」 丸谷才一著 文芸春秋社 1975年発行

今では「グルメ」食通の評判記になるわけだけれど
本にも「知ったかぶり」といっているように
文化人の食道楽派いささか鼻につくところもある
けれど、これが文章に味があれば
その「知ったかぶりも」もまたおもしろい

ただ、1975年のこと
丸谷才一氏も自らの出身地であるがゆえにそうしているのか
「裏日本」などと書いている
日本海沿岸出身の知り合いは
「日本に大陸文化が入って来た日本海側こそ『表』である」と譲らない
確かに、表と裏はおかしな気がする
いまでは死語になりかけていると思う

スノビズムとはまずいか
開高健ならダンディズムと書いてしまうのに

ところで「グルメ本」我が国の元祖は
村井弦斎の「食道楽」ではないか
江戸以前にもあったかもしれないが
実用にも役立つとても楽しい本である
これに比べるとやはり
丸谷才一でも「知ったかぶり」に思えるのはいたしかたないことだろう


食べ物と一緒で、好き嫌いはあります
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キャパは世界一ダンディな男だったかもしれない

2010-11-15 22:52:31 | エッセイ他
「ちょっとピンぼけ」そのときキャパの手はふるえていた!



「ちょっとピンぼけ」“Slightly out of Focus”
川添浩史・井上清壱訳 ダヴィッド社、1956年発行
(写真は1978年19版のもの)

ロバート・キャパは最も有名な報道写真家、戦場のカメラマンに違いない
彼に匹敵する報道写真家はたくさんいるだろうが
彼のように「有名」ではない
彼の生きざまがその写真とともに彼自身を有名にしたのだ

この写真でカメラマンとして認められ
同時に彼を代表する写真でもある
スペイン内乱中に撮影した「崩れ落ちる兵士」

一度は目にしたことがあるのではないか
ただ、この本には掲載されていない
物語は1942年から始まって1945年にヨーロッパでの戦争が終結するまでの話である
そして、彼の恋の始まりと終わりの話でもある

「そのとき、キャパの手はふるえていた」


これも誰もが目にしたことがあるだろう
ノルマンディー上陸作戦の写真
実は、現像担当者が現像に失敗しフィルムをだめにしてしまう
わずかに残った写真の1枚がこれで
もちろんブレもあったろうが現像ミスによるものだった

こうした逸話も含め
戦争のばかばかしさ、しかし、祖国のため人種のため
戦わなければならない運命
この物語(自伝なのだろうが)を読み進むうちに
世界一ダンディなカメラマンに魅かれていく

彼は不死身ではなかったのか・・
第二次世界大戦を撮り続けたキャパも
戦場カメラマンのとしての運命を免れるわけにはいかなかった
やはり戦争ほど愚かなものは無いのだ


読み終えたとき、私の手はふるえていた
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ゲッゲッ、ゲゲゲのゲッ 大合唱が忘れられない

2010-08-07 16:13:30 | エッセイ他
「ゲゲゲの女房 人生は・・・終わりよければすべてよし!!」


「ゲゲゲの女房」 武良布枝(著)実業之日本社 2011年

NHK朝の連続ドラマ「ゲゲゲの女房」の原案となった
漫画家水木しげるの妻である武良布枝さんの自伝で
水木しげるという人のユニークさとともに
わきまえて普通の妻として支えてきた著者の淡々とした語り口が爽やかで良い

NHKの「ゲゲゲの女房」はあくまでもフィクションで
「ガロ」が「ゼタ」であったり、主人公の名前も「村井布美枝」であったりと異なる
しかし、水木しげるが漫画として売れていく流れはかなり忠実に事実をなぞっているようだ
どこまでがフィクションでどこからが実話なのかと
この本を読んでみることにした

読んでみたら初めに書いたようになかなかに面白い
この本で語られていることは基本的にドラマに取り入れられている
それをドラマとして成り立たせるための脚本は
なかなかに良く書かれていると思う
朝の連続ドラマを毎回録画して欠かさず見るなどと言うことを今回初めてやっった
ただ、それはドラマが面白いという理由だけではなく
先に、何が事実でなにがフィクションであったかを知りたいと思った
その理由とも重なるが
あの「ゲゲゲの鬼太郎」がどのようにして描かれてきたのか
何よりもそこに興味があった
だから先に「ゲゲゲの女房」と水木の伝記を読んでおけばよかったのに・・
と言われればそういうことになるのか

昔話になるが、1960年から1970年代に
「東映まんがまつり」と言って、オリジナルの長編アニメと
シリーズのテレビアニメが何本かを合わせて3本立て、5本立てとして上映されていて
夏休みの間に、小学生なら見に行かなければいけない課題のようになっていた
(東宝は怪獣映画が公開され、夏休みに2回は映画を見に行った
ディズニーも見に行けば3回・・そういえば大映の「ガメラ」シリーズも・・)
長編アニメのなかには高畑勲と宮崎駿の名作「太陽の王子 ホルスの大冒険」や
「わんわん忠臣蔵」とか「ガリバーの宇宙旅行」とかたぶんディズニー映画を意識した力作もあった
ただ、それだけでは集客が期待できないのか、必ずテレビアニメが何本か抱き合わせになっていた

さて、忘れもしない小学校5年生の夏休み、1968年のこと
その名作「太陽の王子ホルスの大冒険」と一緒に「ゲゲゲの鬼太郎」も上映された
鬼太郎はテレビアニメ(白黒時代なので映画も白黒)の第16話と第17話「大海獣前編・後編」を
そのまま劇場で上映すると言う極めてイージーなものであった
「太陽の王子ホルスの大冒険」はとても心を打つ名作であり感激した覚えがある
その後(他にウルトラセブンと魔法使いサリーも併映され順番は定かでないが)
これからゲゲゲの鬼太郎が上映されるというインターミッションの時
映画館にあの熊倉一雄の主題歌が流れると同時に、劇場にいたすべての子どもが(おおげさでなく)
一斉に「ゲッゲッ、ゲゲゲノゲー」と歌い出したのだ!
それはそれはインパクトのある合唱であり、歌い出したみんなが思わず
自分たちの歌う「ゲッゲッ、ゲゲゲノゲー」に圧倒されつつも
あまりのことに笑い出してしまうものも・・
過去、あのように自然発生的に(BGMに主題歌が流れたという誘導は確かにあったが)
そこに集うほぼ全員が声を合わせて歌い出すと言う場面に居合わせたことがなく
とても強烈な印象として残っている

2002年に仕事で松江に行き、帰りに境港に立ち寄った
この時には水木ロードはすでにできていたが
水木しげる一辺倒の町興しに異論もあって記念館はまだできていなかった


鬼太郎と目玉おやじは街の中の何か所にブロンズ像があり
これは橋の欄干に腰かけているもの


鬼太郎ファミリーの中で私が一番好きなぬりかべ


この時のブロンズの写真を使って
その後訪れた場所に合成してみたりもしました
御在所とぬりかべ


御在所スキー場のロープウェイ脇の小屋と子泣き爺


桑名市にある諸戸家の洋館と草鞋の妖怪


法隆寺、金堂と五重塔に骸骨


ゲゲゲの鬼太郎の単行本を持っているわけでもなく
連載時にすべて読み漁ったというわけではない
普通に接してきたファンともいえない読者である私
でも、その当時の子どもたちにはみな強い印象を植え付けて
歳を取るとともにむしろ身近に感じる
鬼太郎や目玉おやじ、ねずみ男たちがすぐ近くにいる
そういう不思議な力を持っている物語を水木しげるがどうのように生み出していったのか
これはやはりとても興味がある

「ゲゲゲの女房」はとても大事な自分史を補足する資料でした

我が家の数少ない鬼太郎グッズ

この頃は旅行の土産は目玉おやじストラップと決め
あれこれ迷わなくて助かっている
最近、数が減っているようだが、ゲゲゲの女房にあやかって増えてくれることを期待している

子どもの合格祈願のために買った「目玉おやじ」高級プリント

目玉おやじの霊力はすばらしく、無事志望校に合格することができた


水木しげるのリアルな生活が浮かび上がる良書です
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