アリ@チャピ堂 お気楽本のブログ

日々の読書記録を勝手きままに書き記す

世界的ベストセラーは日本でも売れるのか?

2012-09-10 22:59:11 | 海外小説
スペイン、いやカタルーニャの風土が書かせる伝奇小説? ホラー?


天使のゲーム (上) (集英社文庫)
カルロス・ルイス・サフォン
集英社

天使のゲーム (上) カルロス・ルイス・サフォン著、木村 裕美訳、集英社文庫 2012年

天使のゲーム (下) (集英社文庫)
カルロス・ルイス・サフォン
集英社

天使のゲーム (下) カルロス・ルイス・サフォン著、木村 裕美訳、集英社文庫 2012年

「風の影」を読み
その続編(シリーズの2作目)がすでに出版されていると知って
いつ翻訳されるのだろうかと期待していた
いささか待ちくたびれいていた頃に
出張ででかけた東京中央線列車の中の釣り広告で「天使のゲーム」が出たことを知る
降りた新宿駅南口の本屋で早速買い求めた

読みながら思い出したのは映画「エンゼル・ハート」
ミッキー・ローク主演、ロバート・デニーロが怪演
原作はウィリアム・ヒョーツバーグの「堕ちる天使」
なので「堕ちる天使」を思い出すとすべきかもしれないが
読み進むうちに主人公がミッキー・ロークに
コレッリがロバート・デニーロのイメージとだぶってくる
ここから先、ネタばれとなるのでご注意ください
そこに触れずには語れないところがあります

堕ちる天使 (ハヤカワ文庫NV)
ウィリアム・ヒョーツバーグ
早川書房


さて、なぜエンゼル・ハートなのか
映画をご覧になった方(映画だけでは結末が良く分からない・・という方もあったそうですが)
「堕ちる天使」を読まれた方であれば同じ印象を持たれるはず

ただ手法が異なるのは
「堕ちる天使」では最後まで読者を欺こうとし
真実こそが彼への罰となって罪を知らしめる
暗い水底へと堕ちていく重さに読者を引きずりこんでいったのに
「天使のゲーム」では早々にそのしかけを暗示させ
読者を救い出すための予防線を張っている
その提示の仕方は著者の才能により物語の厚さとなって
サフォン独特の「街」の中にわれわれを彷徨わせ
先を暗示させつつも期待を裏切るものではない
「風の影」がそうであったように
「堕ちる天使」のように救いようのない悪意が
発行禁止運動まで引き起こさせたのとは異なり
本好きが救われるという読書家にとってもっともシンパシーをくすぐる
救いがこの本が多くの読者を得ている理由ではないだろうか
(日本では?)

「忘れられた本の墓場」は
読書家にとっては「薔薇の名前」の文書館と同様に
迷い込んでみたい秘密の花園である
そんな場所が本当にあったらどれほど素晴らしいだろう
センベーレと息子書店にも立ち寄らなければいけない
この舞台設定がまず秀逸である
同じ舞台で描かれた次の作品があれば
本筋の物語に多少の破綻があっても許してしまうかもしれない
(それも作者の意図かもしれないが・・)
「忘れられた本の墓場」シリーズとして
あと2作品が構想されているらしい

そして舞台はバルセロナ
実際に行ってみて分かったことだが
ガウディの建築はバルセロナに蔓延る異型の記憶から見れば
ハイセンスで上品な芸術作品である
マヌエル・バスケス・モンタルバンの刑事カルバイヨの街である
空は暗く雲が垂れ込めていたり
黄金に輝いたと思えばワインレッドの深い色合いの夕闇が迫る
石畳の街路と奇怪なカサ

次の作品が待ち遠しい


私はこの雰囲気が好きです
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小説の力

2010-11-20 21:47:36 | 海外小説
「魔の山」 読みながら病を患う


「魔の山」 トーマス・マン著 高橋義孝訳 新潮文庫

ハンス・カストルプ、ヨアーヒム・チームセンの名前が頭から離れず
いつの間にか夏に降る雪の中でひとり咳をしている自分を思い
何事かを会話の中で昇華しようとする
小説の力を知った本である


究極のヴァーチャルリアリティは小説だと思わせる作品の一つに違いない
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今ではもう読めない

2010-11-17 21:46:26 | 海外小説
「サムラー氏の惑星」本流の小説


「サムラー氏の惑星」 ソール・ベロー著 橋本福夫訳 新潮社


こんなに小さな字だったのか
今はもう読めない
昔の世界文学全集はみんなこんな風だった

ソール・ベローはノーベル文学賞も受賞している
アメリカ文壇の本流中の本流になるのか
スタインベック、フォークナー、パール・バックと
ちょっとやんちゃなヘミングウェイ
ノーマン・メイラーはもらっていない??

おもおもしく深みがあるけれど
語るべき人生が果たしてその重さに耐えられるか
「宙ぶらりんの男」の方がむしろ印象強いのは
まさに長編というべき長さのせいもあるかもしれない
読んだ時は面白かったと思うが
現在に通じる内容なのか


 読んだ時が絶頂期
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本のブログ始めました!

2010-07-16 00:17:47 | 海外小説
記念すべき第1冊目はフランツ・カフカ「城」


この本を読み始めたのは・・なんと33年前!
文庫本のカヴァーも年季がはいってます
ページをめくると時代を感じさせる黄ばみがあり・・活字も小さい

この本を老眼鏡なしで帰宅途中の暗いバスの中で読むのは至難の業でした
33年かかって読み終えたことに感慨深いものがあります

昔は青春時代に「不条理」を描いた文学を読まなければいけないと思っていました
「変身」やカミュの「異邦人」などはページ数からいっても入門編で
この「城」や「審判」まで読めば一人前と
そういう思いからするとようやく一人前の読書好きになれたのか・・
安部公房とか倉橋由美子とか読んでいると大人になったような気がしましたが
大学生になり「指輪物語」と「悲しき熱帯」それにP.K.ディックの著作に触れて
そういうこだわりが消える代わりに読書傾向に別の方向で偏りが出てきた
日本文学はほとんど読まなくなって、SF、ファンタジー、構造主義と少しミステリー
そういう偏った人間の本の話をつづるブログで
自分のための自分のブログになりそうです

さて、その「城」ですが・・未完であるということは聞いて知っていたけれど
本人は破棄してくれと遺言した、その気持ちは分かる気がします
この物語はたぶんの終わりがないということ、未完であることがかえって本質を突く
Kと同じようにこの物語自体行きつく先の無い、永遠に何にも帰属しない、帰属できない
そういう「完結性」を持つために出版されてしまったのでしょうか

33年かかってといっても、33年間かけてページをめくってきたわけではなく
読みかけては放り投げ、ブログを始めるにあたりこの心残りを解消して
そしてこの本を最初に取り上げようと・・そのためにスタートが少し遅れてしまいました
読み終えてこの本は何を与えてくれたのか
White fox book markでは「普通」になります

読んでみれば 

まあ、そういう本であると受容できる
読んでみたいという人には「いいんじゃないですか」と言える本でした

白い狐は尾も白い・・を「面白い」にかけて
白狐さんで本の推薦度を示してみようかとマークを作りました

ぜひ読んでみてはという本は当然真っ白

読んで!読んで!
紹介するのだからたいていはこのマークになるんではないかと思います

「普通」という実に無責任な感想の場合

尾の先がちょっと白くなくなる
読んでみて損はない

あと一歩、残念はこれ

ん~・・残念
私には今一つだったけれど
違う読み方もあるし
私の読解力が足りないのかもしれない

そして「読んだら損」ペケマークは

あたしにはぺけです!!
たぶん、誰が読んでも今一つじゃないかなと
他に読む本があればそちらを先にという感想です

ということで、これから好き勝手な書評を書き綴らせていただきます

コメント (2)
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