スペイン、いやカタルーニャの風土が書かせる伝奇小説? ホラー?
天使のゲーム (上) カルロス・ルイス・サフォン著、木村 裕美訳、集英社文庫 2012年
天使のゲーム (下) カルロス・ルイス・サフォン著、木村 裕美訳、集英社文庫 2012年
「風の影」を読み
その続編(シリーズの2作目)がすでに出版されていると知って
いつ翻訳されるのだろうかと期待していた
いささか待ちくたびれいていた頃に
出張ででかけた東京中央線列車の中の釣り広告で「天使のゲーム」が出たことを知る
降りた新宿駅南口の本屋で早速買い求めた
読みながら思い出したのは映画「エンゼル・ハート」
ミッキー・ローク主演、ロバート・デニーロが怪演
原作はウィリアム・ヒョーツバーグの「堕ちる天使」
なので「堕ちる天使」を思い出すとすべきかもしれないが
読み進むうちに主人公がミッキー・ロークに
コレッリがロバート・デニーロのイメージとだぶってくる
ここから先、ネタばれとなるのでご注意ください
そこに触れずには語れないところがあります
さて、なぜエンゼル・ハートなのか
映画をご覧になった方(映画だけでは結末が良く分からない・・という方もあったそうですが)
「堕ちる天使」を読まれた方であれば同じ印象を持たれるはず
ただ手法が異なるのは
「堕ちる天使」では最後まで読者を欺こうとし
真実こそが彼への罰となって罪を知らしめる
暗い水底へと堕ちていく重さに読者を引きずりこんでいったのに
「天使のゲーム」では早々にそのしかけを暗示させ
読者を救い出すための予防線を張っている
その提示の仕方は著者の才能により物語の厚さとなって
サフォン独特の「街」の中にわれわれを彷徨わせ
先を暗示させつつも期待を裏切るものではない
「風の影」がそうであったように
「堕ちる天使」のように救いようのない悪意が
発行禁止運動まで引き起こさせたのとは異なり
本好きが救われるという読書家にとってもっともシンパシーをくすぐる
救いがこの本が多くの読者を得ている理由ではないだろうか
(日本では?)
「忘れられた本の墓場」は
読書家にとっては「薔薇の名前」の文書館と同様に
迷い込んでみたい秘密の花園である
そんな場所が本当にあったらどれほど素晴らしいだろう
センベーレと息子書店にも立ち寄らなければいけない
この舞台設定がまず秀逸である
同じ舞台で描かれた次の作品があれば
本筋の物語に多少の破綻があっても許してしまうかもしれない
(それも作者の意図かもしれないが・・)
「忘れられた本の墓場」シリーズとして
あと2作品が構想されているらしい
そして舞台はバルセロナ
実際に行ってみて分かったことだが
ガウディの建築はバルセロナに蔓延る異型の記憶から見れば
ハイセンスで上品な芸術作品である
マヌエル・バスケス・モンタルバンの刑事カルバイヨの街である
空は暗く雲が垂れ込めていたり
黄金に輝いたと思えばワインレッドの深い色合いの夕闇が迫る
石畳の街路と奇怪なカサ
次の作品が待ち遠しい
私はこの雰囲気が好きです
天使のゲーム (上) (集英社文庫) | |
カルロス・ルイス・サフォン | |
集英社 |
天使のゲーム (上) カルロス・ルイス・サフォン著、木村 裕美訳、集英社文庫 2012年
天使のゲーム (下) (集英社文庫) | |
カルロス・ルイス・サフォン | |
集英社 |
天使のゲーム (下) カルロス・ルイス・サフォン著、木村 裕美訳、集英社文庫 2012年
「風の影」を読み
その続編(シリーズの2作目)がすでに出版されていると知って
いつ翻訳されるのだろうかと期待していた
いささか待ちくたびれいていた頃に
出張ででかけた東京中央線列車の中の釣り広告で「天使のゲーム」が出たことを知る
降りた新宿駅南口の本屋で早速買い求めた
読みながら思い出したのは映画「エンゼル・ハート」
ミッキー・ローク主演、ロバート・デニーロが怪演
原作はウィリアム・ヒョーツバーグの「堕ちる天使」
なので「堕ちる天使」を思い出すとすべきかもしれないが
読み進むうちに主人公がミッキー・ロークに
コレッリがロバート・デニーロのイメージとだぶってくる
ここから先、ネタばれとなるのでご注意ください
そこに触れずには語れないところがあります
堕ちる天使 (ハヤカワ文庫NV) | |
ウィリアム・ヒョーツバーグ | |
早川書房 |
さて、なぜエンゼル・ハートなのか
映画をご覧になった方(映画だけでは結末が良く分からない・・という方もあったそうですが)
「堕ちる天使」を読まれた方であれば同じ印象を持たれるはず
ただ手法が異なるのは
「堕ちる天使」では最後まで読者を欺こうとし
真実こそが彼への罰となって罪を知らしめる
暗い水底へと堕ちていく重さに読者を引きずりこんでいったのに
「天使のゲーム」では早々にそのしかけを暗示させ
読者を救い出すための予防線を張っている
その提示の仕方は著者の才能により物語の厚さとなって
サフォン独特の「街」の中にわれわれを彷徨わせ
先を暗示させつつも期待を裏切るものではない
「風の影」がそうであったように
「堕ちる天使」のように救いようのない悪意が
発行禁止運動まで引き起こさせたのとは異なり
本好きが救われるという読書家にとってもっともシンパシーをくすぐる
救いがこの本が多くの読者を得ている理由ではないだろうか
(日本では?)
「忘れられた本の墓場」は
読書家にとっては「薔薇の名前」の文書館と同様に
迷い込んでみたい秘密の花園である
そんな場所が本当にあったらどれほど素晴らしいだろう
センベーレと息子書店にも立ち寄らなければいけない
この舞台設定がまず秀逸である
同じ舞台で描かれた次の作品があれば
本筋の物語に多少の破綻があっても許してしまうかもしれない
(それも作者の意図かもしれないが・・)
「忘れられた本の墓場」シリーズとして
あと2作品が構想されているらしい
そして舞台はバルセロナ
実際に行ってみて分かったことだが
ガウディの建築はバルセロナに蔓延る異型の記憶から見れば
ハイセンスで上品な芸術作品である
マヌエル・バスケス・モンタルバンの刑事カルバイヨの街である
空は暗く雲が垂れ込めていたり
黄金に輝いたと思えばワインレッドの深い色合いの夕闇が迫る
石畳の街路と奇怪なカサ
次の作品が待ち遠しい
私はこの雰囲気が好きです