子供の頃、百年前と言えば、はるか昔と感じたものだ。
ところが、齢70を過ぎてみると、百年前がそんな遠くではなく、むしろ近い過去に思えてきた。
昭和元年も既に百年近く前になり、その頃自分の両親が生まれている。私の父や母が生まれたのが百年前と思うと、百年前がそんな遠くではなく、身近なものに思えてくるのは当然だ。
写真にあげた本は、小学館から出たものだが、発行は1883年なので、今からすれば140年前の日本が、写真として多数掲載されている。明治10年前後の日本の風景や庶民の暮らしを写したもので、洋館など新しい時代の姿とともに江戸の風情を残したひなびた風景も多い。さすがにこの時代は私にとっても遠い昔に思えるが、わずか40年で感じるものは相当違う。
こうして、百年前は身近なものになってきたが、百年後となると話は違ってくる。私が子供の頃、パソコンや携帯電話がこんなに普及しているとは夢にも想像できず、AIやIPS細胞など科学技術の発達も目覚ましい。こうした移り変わりの激しい時代では、百年後はあまりに遠い。百年後はどうなっているのか。科学技術の進歩を享受しているのか、あるいはその進歩が人間を不幸にしているのか、あるいは人類は地球を食い尽くし他の星に移住しているのか。
私にとって百年後は、はるか先の未来である。私は当然それまで生きていないが、人類にとって百年後が明るいものであることを願っている。
「百年前の日本」に掲載されている上記写真を元に、守家勤が描いた油絵です。