シロクマックスのアラフォー、ぼちぼちアメリカ生活

アメリカ生活のあれこれをつれずれに書いてます。
移住して8年、ぼちぼちやってます。

手腕より信頼かな

2011-07-31 | 日記

 

昨日はG17勝(デイヴ確認。違うかも)の現役南半球最強マイラーの

More Joyous(モアジョイアス)の引き馬をしました、2頭持ちで!

豪国の歴史的名馬になるだろうモアジョイアスですら、その他の馬たちと

比べて特別扱いはされません。

ただし、人間が選別されます。

モアジョイアスは担当のデイヴが基本引き馬するんですけど、

彼が忙しすぎて、「ちょっと引いとって」といって

右手に渡されたのがモアジョイアスでした。

「あれ?肩にイチゴのブランドが入ったデイヴの馬って・・・モアジョイアス?」

とか思いましたよ、最初は。やっぱり新入りにはG1級の馬は

いきなりは触らせません。それは信頼の問題であって、手腕の問題では

ないと思います。あまりに下手くそな場合はいつまでたっても

賞金の高いレースを走る馬はや、癖のある馬は任せられないかもしれませんが、

僕は・・・言っても下手じゃないと思いますよ、グランドワークは。

 

ゲイ厩舎に入って1ヶ月。

モアジョイアスを持たせても奴なら大丈夫という信頼を得たのかな、

とちょっぴり嬉しかったりします。別にモアジョイアスを引いたからって、

別にどーというこたないんですけど。左手で引いてる未勝利の馬と

なんらかわらないですよ、引き馬してる分には。ま、馬です、異様に肩の筋肉

が発達した男馬みたいな女馬っつーだけの話です。

それにモアジョイアスは超おとなしい。もはや悟りの境地に達したかの

ようなたたずまいですから、むしろモアジョイアスが引けないなら、

他の馬の方がもっと引き難しいでしょう。

さて、今日8月1日から南半球の競馬は新シーズンとなります。

馬の年齢が一斉に一つ増えます。昨日まで1歳だったベイビー

達が今日から2歳となり、レイシングエイジとなります。


また新たなシーズンの始まりです。



ゲイ厩舎の朝は早い、速い

2011-07-31 | アメリカ生活のあれこれ

今週はあっという間に終わってしまいました。ほんと一瞬の出来事のように

一週間がすぎてしまいます。厩舎の仕事は牧場のそれとは違って、

とにかくラッシュラッシュなので、同じだけの労働時間なのだけれども、

体感する拘束時間の長さが全然違うんですね。

牧場だと、まだ昼飯まで一時間か~とか思ったりすることがあるんですけど、

今の厩舎は3時スタートという名の2時45分スタートで、一時間で僕は

馬房を3つから4つ掃除します。ちなみにゲイ厩舎は寝藁なんですね~。

寝わら嫌い。ほこりっぽい。シェイビング(日本でいうチップ、おがくず)の方が

掃除しやすいです。

朝、厩舎に行って、頭絡とハミを馬につけて、

馬着を着せ替えて、シート引いて汚れた寝藁をだして、おしっこで濡れてしまっている

箇所にライムパウダー(石灰かな、多分)をまいて、餌をあげて一丁あがり。

これを3頭分。一時間で。けっこうラッシュでやらないと間に合わない。

馬着の着せ替えがけっこう時間食うんですよね。あと汚れた寝わらを捨てに

いく時間。日本はおしっこで濡れた寝わらを天日で干して乾かせて、再利用しますが、

そこは資源の豊富な国。全部捨てます。汚れている箇所の周りの汚れてない

寝わらも巻き込んでかき出しますから、量が多い。北海道の牧場の人が見たら

卒倒するんじゃないかっつーくらいの量を一日で「捨てます」


さて、僕は今馬に乗って調教もつけているので、4時の馬場の開門時間までには

ランドウィック競馬場に馬2頭を連れて到着していないといけないので、

朝は時間との勝負です。4時に乗り出して、あっという間に7,8頭乗って、

気がつくともう朝日が登りはじめて、ああ、もう7時か・・・・・みたいな

感じですね。調教は8時でだいたい終わって、厩舎に帰り、馬の手入れを

パパっとやって、掃き掃除して8時30分には絶対業務終了。これが鉄則。

8時30分を1分たりともオーバーしてはいけないのです。なぜなら

そうすると我々授業員に、残業手当を請求する権利が発生してしまうからです。

日本と比較したとき、海外の職場で絶対的に違うのは、残業に対する

意識でしょうか。早出、残業を美徳とするような感覚を持つ日本の

社会とは違い、働かれたら金を払わなければならないという被害意識が

経営者側にはあるので、かならず時間内に仕事を終わらせなければ

なりません。ただ、ゲイ厩舎の場合、朝は完全にフライングで仕事を

はじめてしまっていますね。これはかなり珍しいケースだと思います。

それでいて、誰もエクストラの賃金の要求をしないのだから、これは

もうモラルと士気の問題で、金うんぬんじゃなくて、この厩舎で

常に重賞で勝ち負けレベルの馬を面倒みたいというやる気が

みなぎっている連中だけが頑張ってるんですね。

たらくさいのはほんと、1日で居なくなります。


仕事はほんと大変なんですけど、僕も仕事はテキパキする方なので、

たらくさい仕事をする連中と、なあなあのだるい雰囲気の中で仕事を

するよりはバンバン仕事して、さっさと終わらせて帰るっていう方が

肌に合ってますから、以前務めていたシーモアのファームより

ずっと張り合いがあって、調子いいです。

そんなとこです。はあっと

 


馬の値段は馬の価値と同等か

2011-07-14 | 日記

 

Gai Waterhouse 厩舎に移って2週間が経ちました。

あっというまに過ぎてしまいましたね。ゲイ厩舎はスタッフ一同の士気が

以上に高く、うかうかしてると作業についていくことすら困難です。

朝は3時から作業開始なのですが(なんども言いますが、これは朝ではないです)

デイヴは2時半くらいからすでに寝わらを上げ始めてますし、全員が2時40分には

作業を開始しています。これは、なぜかというと、そうでもしないと

とてもじゃないけれど業務終了の8時半には終われないからです。

隣の部屋に住んでいるモトさんという日本人の方は、Bounding Away Logde通称

BAという4つあるゲイ厩舎の分厩のひとつを任されている方で、彼のアラームは

1時50分に鳴り、彼は2時20分頃からすでに作業に入っています。

そーじゃないと終わらないんだよね、まじな話で。

モトさんはゲイに永住権をサポートしてもらってすでに永住権を

取得なさっていて、ゲイ厩舎一筋5年以上のベテランです。

オーストラリアにはすごいキャリアをもっている日本人のホースマンが

何人もいますよ。


仕事はきついですけど、なにしろすごい馬がゴロゴロいるので、そういった

G1級の馬たちに乗ったり、引き馬したりできるのは財産になります。

どれだけの質の馬を何頭見てきたか、触ってきたかでホースマンとしての

技量は決まります。朝、僕がなにげなく跨っている馬も、実はネットで調べてみると、

セールで一億以上の価格で取引されていたり、あるいはすでに重賞を

勝っている馬だったりするわけです。120頭いますから、毎日違う馬に

乗っているのでまだあまり詳しく馬の成績がわからないんですけど。


例えば今日の午後作業は、一人が左右両手に一頭ずつ馬をもって、

1セット一時間のウォークを2セット(計4頭)したんですけど、

最初のセットは右手に2億円、左手に6千4百万円の馬を引いてました。

引きながら「そーいえばこいつら高いんだったな・・・・」とか

思ったり。馬に乗ったり引いたりするときに値段は全然関係ないんですけど、

最近は馬の名前を覚えて帰って、その馬の取引価格とか、血統とか、

全部調べて遊んでいるのでついついそんなことを考えたりしながら

引き馬してます。値段が高いからって走るわけではないですし、

また、高いからといって特別扱いすることは「絶対に」ないです。

2億だろうが、5億だろうが走らん馬には一文の価値もない世界です。

ま、血統のいい牝馬だったらお母さんになれるから走らなくても

どーとでもなりますが、牡、あるいは去勢された馬はもう走ってなんぼです。


こっからが今日の本題ですけど、「馬の値段と馬の価値は同等か」


どんなに可愛い馬でも、成績の振るわない馬を待ち受ける現実は厳しいです。

だからこそ、仔馬のうちにしっかりと人間の言うことを聞くように教育を施さないと、

もって生まれた「走る」才能を競馬で発揮できずにサヨナラしてしまうかもしれない

わけです。2億円でも、5億円でも、やっちゃいけないことをした馬は

殴りますよ、とーぜん。(大人になった馬はまず殴りませんけど。もう治らないので。

やられてやり返しているうちは人間側が修行不足でしょう。基本はやらせないことで

しょう)

基本的に馬に「やらせない」ことが人間側に求められる

わけですが、なんどしつけても仔馬が守らないとき、

あるいは人間の言うことを聞かないとき

(噛む、蹴る、あるいは人間をなめた態度をとったりをやめない)は

やっぱりしつけなきゃならんわけですから、慎重にタイミングを測って

殴るときは徹底的に殴ります。

腹を蹴り上げることもありますし、手持ちのリードロープで

馬が泣きをいれてくるまでボッコボコにすることもあります。


馬を「根切る」タイミングはキャッシュ・アスムッセン

(第一回ジャパン・カップ優勝ジョッキー)

曰く、「馬の一生のうちでチャンスは一回きりしかない。一回で仔馬を人間の

支配下におくことができなければ、もうノーチャンスだ」

とのことです。キャッシュは仔馬のブレーキングに関しては、いままで出会った

ホースマンの中でブッチギリで一番です。テキサスの田舎ですごい馬をつくってます。


また、この殴り方が上手なのがアイルランド人で、殴るタイミングを知ってるとでも

いいますか・・・・動物虐待とは一線を引くところでフルボッコするわけです。

「ヤる」モードに入ったときのアイリッシュはほんとに怖くて、ほうきがおれても

まだ殴ってましたね。そこまでやらんと、その馬が競馬にいってダメになる

ことをわかってるから、子供のうちに徹底的にヤるわけです。そして、

馬がちゃんと人間を理解するようになった後は超褒めてやる。

ぶっとばした後は必ず褒めてやることを彼らは必ずやります。僕もそうします。

フルボッコするときに、対象の馬のセールの取引価格なんか関係ありません。

そう思いませんか?もし値段が高いという理由で「修正」をためらうなら、

その馬は人間をなめた、人間をおそったりする恐竜みたいな馬になるかも

しれませんよ。日本でそーいう馬に出会ったことがあります。


今日言いたいのは、ゲイ・ウォーターハウス厩舎は素晴らしい厩舎だよ、ということと、

値段で馬の待遇は変えないよ、ということです。

値段なんて所詮人間同士が勝手につけた価値なので、当の馬達は

自分がいくらで買われたのかなんてことは知らずに120頭が一緒に暮らしてる

わけですから、やっぱり値段で差別はできないですね。

 

今日は写真がありませんよ。ちょっと撮ってるヒマがなくて・・・・

次はなるべくなんか画像をアップします。

それでは、夜7時ですけどもう寝ます。






 


On the Beach

2011-07-05 | アメリカ生活のあれこれ

今朝は仕事始めが朝2時40分(世間では朝とは呼ばない)

調教開始が4時。なぜならトラックが開くのが4時だから。

こっから7時半までに120頭ほどに調教をつけるわけですが、

今日は7時くらいに厩舎長のロフティーによばれて

ビーチで馬に乗ることに。

「I get you to the beach this morning」

とか言われてもなんのこっちゃ!?と思いました。

関節が腫れてる馬がいるから、海水につけて歩かせる治療&調教ということで、

そこから連想するビーチウォークはなんとなくオシャレな

イメージで。サーファーがモーニングサーフィンする横とかで

馬に乗っちゃったりしちゃったりするのかな・・なんて思いました。


4頭を厩舎自前の馬運車にのせて15分。

どこのビーチに行くのかと思ってたら、おもいっきりシドニー国際空港の

埋め立て滑走路の横じゃないですか!どういうビーチなんだバカ!!

オシャレなサーファーなんかいやしないよ。

ま、たしかに砂浜だし、遠浅だからけっこう沖まで行ってもせいぜい人間の

胸下くらいまでしか水位はないんだけど、あれ?鞍は?

鞍なしか!!!こりゃグリップ勝負ですな。どれだけ馬を足で

グリップできるか。馬場馬術の世界です。

落馬したらそこには冬の海水が待っているわけで・・・

こりゃ落ちれない、と心底思いました。


裸馬に跨って馬に入水をうながすものの、超怖がって入らない。

久しぶりに結構強く脚による扶助でもって入水成功。

でも馬の肩口まで海水に浸すように言われてやったけど、

そうすると俺の足のくるぶしまで水がきちゃうんですけど・・・・・

僕は長靴ではなく、ショートブーツにチャップスというふくらはぎを

保護する道具をつけているので、くるぶしから下は完全浸水。

寒いなんてレベルじゃない!!!海風も強いし。

しかもすぐ横の滑走路からはマレーシア航空とカンタス航空の

飛行機が5分おきに離発着をしていて、超うるさい。

 

馬はとてもリラックスできて、気持ちよさそうでした。

やっぱりずっと狭い馬房と馬場との往復じゃあストレスたまるよね。

うちの厩舎は馬房と広めのサンド・ヤードとがあって、

全馬、2日に一回はサンド・ヤードで午後一杯を過ごします。

これはやっぱり馬のストレスを考慮した措置だと思います。

やっぱ金のある厩舎は設備が違います。そう感じます。


爆音をともなって離発着する旅客機の真横で裸馬に跨ってビーチウォーク

ってあまり素晴らしくはないですよ。

でも馬は全然怖がるでもなしに、水遊びを楽しんでました。

そんなもんだ、と思えば馬だってなにも怯えたりしません。

カメラのフラッシュに怯えたり、サングラスの反射に怯えたり、

クラクション鳴らされて暴れたりする日本の馬とは違うんです。

これはアメリカだって同じです。ゼニヤッタの引退セレモニーに

行きましたけど、何千発カメラのフラッシュにさらされていたか。

微動だにしませんよ、そんな程度では。

日本のブリーダーはなぜ生産した馬のメンタルをもっと鍛えないのか

と疑問に思います。馬は環境とトレーニング次第ではこんなに

賢い動物なんだということを「人間」が知っていれば、もっともっと

馬に物事を教え込むことが可能なはずです。

日本のホースマンの「馬の常識」「馬ってのは臆病な動物だから・・・」

という概念は世界基準からは大きく逸脱した位置にあると個人的に

思います。

 

話はそれましたが、ノンキなもんで、カンタス航空のパイロットが着陸したあと

こっちに手を振ってましたよ。俺はそんな余裕はないです。

寒いし、落馬したくないし。

ま、鞍なんかなくたって馬の背中に跨ったときの騎座の場所さえ

しっかりしていれば、まず落ちるこたないですけどね。

またしてもいかにもオージーな話でした。


シドニーで三日過ぎて

2011-07-02 | 日記

ゲイ・ウォーターハウス厩舎で働き始めて三日が経ちましたけど、

いや~久しぶりの厩舎生活は楽じゃないです。なにしろ朝2時10分起きは

キツくはないですけど、なんだか夜が短かすぎて虚しいです・・・・

作業は朝3時から。でも実質2時40分から現場に出てます。

僕の居る「メイン」と呼ばれている厩舎で63頭。そのほかに3つの

分厩舎があり、全部で120頭ほどいます。調教助手はどこの

分厩の馬とか関係なく、片っ端から乗っていくので120頭

全てが担当馬ですね、感覚的に。乗り出しは4時から。7時半までに

120頭全てに調教を付けます。猛烈なスピードです。

今僕は全身骨折患者みたいになっていて、まともに歩くことすらできないんですけど

(カラダが馬乗りのカラダになってないので・・・)、調教が始まって、馬にまたがって

しまえば、痛みは忘れちゃいます。それくらい集中してますし、忙しいです。

でも仕事が終わったあとにスーパーに買い物に行ったりする時はびっこ

引いてますから、なんか恥ずかしいです。カラダがフィットするまで、

もう一週間くらいかかるでしょう。それくらい、馬に乗る時につかう人間の

筋肉は負担がかかりますし、内ももとか、日常では使わない筋肉を酷使します。

やっぱり、現役の馬を相手にするのは、牧場でベイビーを相手にするの

とは違いますね~。

あと一週間もすれば慣れるとは思いますけど。