Gai Waterhouse 厩舎に移って2週間が経ちました。
あっというまに過ぎてしまいましたね。ゲイ厩舎はスタッフ一同の士気が
以上に高く、うかうかしてると作業についていくことすら困難です。
朝は3時から作業開始なのですが(なんども言いますが、これは朝ではないです)
デイヴは2時半くらいからすでに寝わらを上げ始めてますし、全員が2時40分には
作業を開始しています。これは、なぜかというと、そうでもしないと
とてもじゃないけれど業務終了の8時半には終われないからです。
隣の部屋に住んでいるモトさんという日本人の方は、Bounding Away Logde通称
BAという4つあるゲイ厩舎の分厩のひとつを任されている方で、彼のアラームは
1時50分に鳴り、彼は2時20分頃からすでに作業に入っています。
そーじゃないと終わらないんだよね、まじな話で。
モトさんはゲイに永住権をサポートしてもらってすでに永住権を
取得なさっていて、ゲイ厩舎一筋5年以上のベテランです。
オーストラリアにはすごいキャリアをもっている日本人のホースマンが
何人もいますよ。
仕事はきついですけど、なにしろすごい馬がゴロゴロいるので、そういった
G1級の馬たちに乗ったり、引き馬したりできるのは財産になります。
どれだけの質の馬を何頭見てきたか、触ってきたかでホースマンとしての
技量は決まります。朝、僕がなにげなく跨っている馬も、実はネットで調べてみると、
セールで一億以上の価格で取引されていたり、あるいはすでに重賞を
勝っている馬だったりするわけです。120頭いますから、毎日違う馬に
乗っているのでまだあまり詳しく馬の成績がわからないんですけど。
例えば今日の午後作業は、一人が左右両手に一頭ずつ馬をもって、
1セット一時間のウォークを2セット(計4頭)したんですけど、
最初のセットは右手に2億円、左手に6千4百万円の馬を引いてました。
引きながら「そーいえばこいつら高いんだったな・・・・」とか
思ったり。馬に乗ったり引いたりするときに値段は全然関係ないんですけど、
最近は馬の名前を覚えて帰って、その馬の取引価格とか、血統とか、
全部調べて遊んでいるのでついついそんなことを考えたりしながら
引き馬してます。値段が高いからって走るわけではないですし、
また、高いからといって特別扱いすることは「絶対に」ないです。
2億だろうが、5億だろうが走らん馬には一文の価値もない世界です。
ま、血統のいい牝馬だったらお母さんになれるから走らなくても
どーとでもなりますが、牡、あるいは去勢された馬はもう走ってなんぼです。
こっからが今日の本題ですけど、「馬の値段と馬の価値は同等か」
どんなに可愛い馬でも、成績の振るわない馬を待ち受ける現実は厳しいです。
だからこそ、仔馬のうちにしっかりと人間の言うことを聞くように教育を施さないと、
もって生まれた「走る」才能を競馬で発揮できずにサヨナラしてしまうかもしれない
わけです。2億円でも、5億円でも、やっちゃいけないことをした馬は
殴りますよ、とーぜん。(大人になった馬はまず殴りませんけど。もう治らないので。
やられてやり返しているうちは人間側が修行不足でしょう。基本はやらせないことで
しょう)
基本的に馬に「やらせない」ことが人間側に求められる
わけですが、なんどしつけても仔馬が守らないとき、
あるいは人間の言うことを聞かないとき
(噛む、蹴る、あるいは人間をなめた態度をとったりをやめない)は
やっぱりしつけなきゃならんわけですから、慎重にタイミングを測って
殴るときは徹底的に殴ります。
腹を蹴り上げることもありますし、手持ちのリードロープで
馬が泣きをいれてくるまでボッコボコにすることもあります。
馬を「根切る」タイミングはキャッシュ・アスムッセン
(第一回ジャパン・カップ優勝ジョッキー)
曰く、「馬の一生のうちでチャンスは一回きりしかない。一回で仔馬を人間の
支配下におくことができなければ、もうノーチャンスだ」
とのことです。キャッシュは仔馬のブレーキングに関しては、いままで出会った
ホースマンの中でブッチギリで一番です。テキサスの田舎ですごい馬をつくってます。
また、この殴り方が上手なのがアイルランド人で、殴るタイミングを知ってるとでも
いいますか・・・・動物虐待とは一線を引くところでフルボッコするわけです。
「ヤる」モードに入ったときのアイリッシュはほんとに怖くて、ほうきがおれても
まだ殴ってましたね。そこまでやらんと、その馬が競馬にいってダメになる
ことをわかってるから、子供のうちに徹底的にヤるわけです。そして、
馬がちゃんと人間を理解するようになった後は超褒めてやる。
ぶっとばした後は必ず褒めてやることを彼らは必ずやります。僕もそうします。
フルボッコするときに、対象の馬のセールの取引価格なんか関係ありません。
そう思いませんか?もし値段が高いという理由で「修正」をためらうなら、
その馬は人間をなめた、人間をおそったりする恐竜みたいな馬になるかも
しれませんよ。日本でそーいう馬に出会ったことがあります。
今日言いたいのは、ゲイ・ウォーターハウス厩舎は素晴らしい厩舎だよ、ということと、
値段で馬の待遇は変えないよ、ということです。
値段なんて所詮人間同士が勝手につけた価値なので、当の馬達は
自分がいくらで買われたのかなんてことは知らずに120頭が一緒に暮らしてる
わけですから、やっぱり値段で差別はできないですね。
今日は写真がありませんよ。ちょっと撮ってるヒマがなくて・・・・
次はなるべくなんか画像をアップします。
それでは、夜7時ですけどもう寝ます。