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2013-09-07 09:05:14 | 日記

シリア代理大使 「米国につき従ってはいけない」
2013年9月6日 22:26
http://tanakaryusaku.jp/2013/09/0007844

 アメリカのシリア攻撃が目前に迫る。シリアのワリフ・ハラビ代理大使がきょう、日本外国特派員協会で記者会見を持った。代理大使は「日本政府は米国に圧力をかけてほしい」と訴えた。(冒頭のスピーチは以下)

 冷戦以降の新世界秩序下のコンセプト「保護する責任(Responsibility to Protect)※」により、国連は国家主権と内政不干渉の原則を変えてしまった。だがシリアはこれに同意したつもりはない。

 2年半にわたってシリア政府は人道に反する罪で攻撃されてきた。流れている情報はバイアスがかかったものだ。だれも我々の主張を聞いてくれない。一方的だ。我々は不当に扱われている。

 国際社会―国連には「いつでも来て調べてください」と言っている。テロリストがこんなことをやっているとお見せしたい。

 国連安保理の決議のないまま武力行使するべきではない。リビア進攻でリビアはどうなったか。結果としてカダフィ後、国内は混乱に陥っているではないか。

 今はアフガンのケースと似ている。ゴールが不明確だ。シリアに侵攻してどうしたいのか?政府が倒れればそれでおしまいにするのか?

 テロリストの80%~90%はアルカイダかヌスラ戦線。彼らはシリアにとってだけでなく、後々まで世界にとって危険な存在だ。

 我々のおかれた状況には神話がある-シリア政府は自国民を殺している。人道に反する罪を犯しているというものだ。だったら政府がやっているという証拠を今すぐ出してもらいたい。彼らは国連やシリア政府の努力は不要だと言っている。証拠は今もって示されていない。

 シリアはこの3ヶ月間、アメリカとアメリカの同盟国であるトルコや湾岸諸国の後押しを受けたテロリストを退けてきた。我々は決して化学兵器を自国民に対して使ったりしていない。「シリアが化学兵器を使用した」というのは、政治的なキャンペーンだ。

 アメリカはテロリストに武器を供給してきた。ロシアはシリアの側にある。ロシアは「国連(安保理決議)の原則を侵すのはとても危険」だと言っている。

 日本政府に期待することがある。日本はアメリカと強固な関係があるのだから、アメリカに圧力をかけて欲しい。また、日本は国連に最大の資金を提供している。我々の地域とも長い歴史がある。国際社会の中でとても重要な役割がある。

 アメリカ政府につき従ってはいけない。テロリストはアメリカのサポートを受けているのだ。この危機を何とかして回避したい。

記者との質疑応答は以下―

記者:「シリアは化学兵器を使っていない」という証拠は示せるか?
ハラビ氏:非難する側が、証拠を示すべきだ。米国のリポートはイラク進攻前のものとそっくりだ、イラクは全国が破壊されたが、何も証拠は出て来なかったではないか。

記者:アサド退陣など政治的解決方法は?
ハラビ氏:テロリストに資金を渡すことを止める。これが政治的解決だ。我々国民はアサド大統領の側につくことを決めた。国際社会は政治的解決方法を考えて欲しい。

記者:米国から攻撃があればどうするか?
ハラビ氏:沈黙を守るつもりはない。市民を守るため応戦する。

 化学兵器をめぐっての質問が相次いだ。ハラビ氏は「(自国の)市民に対して使うはずがない」「トルコ領内にテロリスト(自由シリア軍をさす)の兵器工場があり、湾岸諸国の支援を受けている」と答えた。

――記者会見ここまで
 
 もし米国がシリアを攻撃すれば、混乱はイラクの比ではない。シリアの背後につく中東の大国イランが黙ってはいないからだ。

 イスラエルの「レバノン侵攻」(2006年)を思い出してほしい。4次に渡る中東戦争でただの一度も負けたことのないイスラエルが、初めて敗北を喫したのが「レバノン侵攻」だった。レバノンへの資金、兵器、戦闘員(ヒズボラ)の出元はイランだった。

 米国がシリアを攻撃すれば、ヒズボラがイスラエルを叩くだろう。イスラエルはイランに対して「通常兵器では勝てない」という教訓を持つ。世界のどの国にもまして防衛意識の強いイスラエルが、核を使わないという保証はどこにもない。

 ◇
※保護する責任
自国民を保護する責任能力がない国家に対し、国際社会が代わって責任を負うという考え方。リビアで初めて国連の武力行使が容認された。

プロフィール:FCCJ資料より
ワリフ・ハラビ代理大使は1ヶ月前に日本に着任。NYのロングアイランド大学を卒業後、オックスフォード大に進む。1991年にシリア外務省に入省、国連勤務などを経て現職。


ワリフ・ハラビ 駐日シリア代理大使。冒頭の挨拶で45分間を費やして米国によるシリア攻撃の理不尽さを訴えた。=6日、有楽町 写真:筆者=