Run, BLOG, Run

http://d.hatena.ne.jp/bluescat/

終わらない手紙 / D.o.a.L.

2005年01月27日 21時54分14秒 | about him
 ええと。 わが友人 (というか彼) の話でもしましょうか。

 昨年十一月のブログ休止直後、彼が、わが家に転がり込んできた、という話、私、しましたかしら?

 このブログ (のようなもの) を割と読んでくだすっているかたは わかるのかもしれませんが、私の付き合っている人は、とっても貧乏 ... 。 自慢するようなことではありませんが。

 自由奔放に生きている人で、「仕事 (お金) のための生活」 よりも、「生活のための仕事 (お金)」 という考え方をしているのか、いわゆる日雇い労働者をしていて。 好きなことをして、とりあえずの生活が出来ていればいいや、と、将来に備えた蓄えなどして来なかったところ、寒い冬の訪れとともに 大きく体調を崩し、仕事に行けなくなってしまいました。 なんの保証もない生活をしているので、仕事をしなければ、もちろん収入がゼロになってしまいます。 当然のごとく生活苦に陥り、わが家へ避難しに来た、ということなのですけれど。

 かたや私は、一応は保証されたサラリイマンとして、それなりの暮らしをしていて。 それなりに蓄えもあって。 住まいは、以前は同居人がいたため ちょうどあまっている部屋があるので、とくに問題はなく。

 女の一人暮らしは、なにかとこわかったりするので、むしろ大歓迎とばかりに。

 あたたかな部屋と手づくり料理のおかげ ... かどうかは わかりませんが、とりあえず仕事に行けるくらいまでには回復できました。

 そうして、二人仲良く暮らしていたのです、が、今月から、彼の仕事が夜のシフトに変更となりました。 いわゆる夜勤というもの。

 夜通し働いて、朝 帰宅して、シャワーを浴びて、寝て。 夕方に起き出し、午後七時くらいに出かけます。 そして、また夜通し働いて、朝 帰ってきて、シャワーを浴びて、寝て。 夕方に起き出し ... 。

 いっしょに住んでいながら、顔を合わせられるのは、朝のほんのわずかな時間のみになってしまいました。

 あたたかいベッドで朝寝の夢にまどろむ私の隣りに、そっともぐりこんでくる彼の身体は、水を打ったように冷たくて。 とても、せつない気持ちになります。 そうして、私は、ひとり天井を見上げて、彼が寝息をたてるのをじっと待って。 彼を起こさぬよう、そうっと寝室を抜けて、そうっと支度をして、こっそりと会社に出かけていきます。

 なんだか、ワケアリな関係みたいですねえ ... 。







 彼が朝、帰ってきたときにあたたまるようなものを。 と思って、煮物だとか おでん だとか、そんなものをこしらえておくことにしました。 温めるだけになっていれば、きっと彼も食べてくれるだろう、と。

 帰宅してみると、食卓には、きれいに平らげた空(から)の鍋と、チラシの裏に書かれた 置き手紙が。

 私への感謝と、私への気遣いと、お天気のこととか、なんやかや。

 なんてことない、数行の手紙でしたが、それは、読んだだけで、とてもしあわせな気持ちになれるものでした。

 そういえば、ブログ (一時) 復活第一弾として上げた記事 「幸福なフォント」 にいただいたコメントで、『Three frogs which smile.』 のあくあさんが、「好きな人の書いた文字が幸福フォント?」 とおっしゃられていました。 いかにも書き殴ったようなオトコの字、という感じの彼の文字。 けれども、これこそが、「幸福フォント」 なのかしら、なんて思ってしまった次第。





 そうそう。

 彼の書いた字を見たのは、付き合いはじめて間もないころでした。 私たちの出逢いの場所、お互いに出入りしていた音楽関係の場所、に置いてある落書き帳 ―― よく、民宿やらペンションのようなところに行くと置いてある雑記ノートのようなもの ―― に書かかれた彼の日記を見たとき。

 その場所に来たら、必ずのように日記をつけていた彼。 人当たりがよくて人気者の彼は、そこへやって来たら、必ずみんなと わいわいやっているのですけれど、ふっと気がつくと、ひとりの世界にふけるように、すみっこで日記を綴っている姿を何度か見かけました。 みんなと話もしたいけれど、書き留めておきたい出来事や想い、というものがあるのだろうか。 なんて思ったりしながら、ひとり、せっせと日記を綴る後ろ姿を、いとしく見つめたものでした。

 そして私は、あるとき、その落書き帳を開いてみました。 彼がいったい、どんなことを書いているのかと。

 何人かの書き込みがありました。 ああ、○○さんらしい文章だわ、とか、このドラえもんの絵、似てないわ、などと思ったりしながら、ページをめくっていき、ある書き込みを見た瞬間、これだ、というものにぶつかりました。

 彼は、じぶんの書き込みに署名をしていないのですけれども。

 字の感じ。 文章の感じ。 書いている内容。 それらで、これは彼が書いたものにまちがいない、と確信できるような。

 手書きの文字という媒体で はじめて知る、彼の、なにげないつぶやき。

 「コイビトの日記」 を覗き見する 妙などきどき感から、とめどもなく、ぱらりぱらりとページをめくっていきました。

 あ、わたしのことが書いてある! ―― まだ、私たちが付き合うまえの書き込みにどきどきしたり。

 ああ、そういえば、あのころ、あんなことがあったっけ。 こんなこともあったっけ。 なんて。

 いろんなことを思い出したりしながら、私は、「幸福フォント」 を味わい尽くしました。

 誰に宛てたわけでもない、そのメッセージを。






 このブログも、もしかすると、ダレデモナイ ダレカ に宛てた 手紙だろうか?

 もし、何年か経って (このブログが残っているとして)、 このブログを彼に見せたら、どんなふうに思うのだろう?

 手書きの文字、ではないけれど、彼は、どきどきするだろうか。 幸福な気持ちになってくれるだろうか。 それとも、怒るかしら。 こんなに勝手にじぶんのことを書かれて。





 夜勤に行くまえに走り書きしたと思われる彼の置き手紙に、私は、返事を書きました。 彼に倣って、チラシの裏に。

 新たに買って来た食材のこと、電子レンジでの温め方、どこにお醤油があるか、とか、卵がもうすぐで賞味期限が切れるので早めに食べるように、とか、なんやかや。

 すると、また翌日も、チラシの裏に置き手紙が。

 なかなか体調が完全に回復しないじぶんへの、苛立ちとか焦りとか、そんなこんな。

 私は、また返事を書きました。

 とにかく、しっかり栄養を摂って、充分休むこと。 そうしていれば、きっと、じきに春が来る、と。

 すると、また翌日も手紙が。 そこには、私への感謝の気持ちが書き連ねてありました。

 私は、やはり、返事を書きます。

 ―― そうして毎日、手紙のやり取りをするようになった私たち。

 携帯電話でメールすれば済むことなのですけれど、なんとなく手紙のやり取りはつづいています。

 チラシの裏の、メモ書きみたいなもの。 殴り書きされた、ただの紙っきれ。

 けれど、それが、すれちがいの日々を送る私たちをつないでくれる、唯一のもののような気がして、手紙を途切れさせまいと、私たちは、チラシの裏にペンを走らせているのです。

 手で書く紙。 を、私は、今夜も綴るのです。 ひとり、ぼんやりと、幸福な気持ちで。










 BGM:
 ・Police ‘孤独のメッセージ / Message in a Bottle’
 Sting が在籍していた、三つ巴 (スリー・ピース) バンドの第二作アルバム、“白いレガッタ / Reggatta De Blanc” より。

 この、「孤独のメッセージ」 という邦題は、なかなか粋ですね。



 ・Johnny Thunders ‘恋人の日記 / Diary of a Lover’
 Johnny Thunders というと、“So Alone” や Heartbreakers 名義の “L.A.M.F.” あたりが有名かもしれないが、個人的に名盤だと思っている、“Hurt Me” という弾き語りアルバムに収録されている。

 恋人の日記を読んで、‘She's live in my world’ と 会えないさみしさをまぎらわせるかのように じぶんに言い聞かせている部分に、せつなく、共感を覚える。



コメント (15)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

守るべき人 / Baby, It's Cold Outside

2004年11月01日 12時42分50秒 | about him
 先日、友人 (というか彼) が、風邪をひいてしまって、寝込んでいる ... という記事 (「おうちへ帰ろう」) を書いたのだけれど。

 あれから、良くなったのかな ... と思っていたら、無理がたたって、ぶり返してしまったもよう ... 。

 そのため、先週末は、看病をしておりました。 (看病というほどではないけれど。 おかゆを作ったり、いろいろ必要なものを買い出したり ... )

 昨日作った、中華粥は、好評だった。 インターネットで検索して、出てきたページのレシピをそのまま作っただけなのだけれど。 土鍋で作ったのが良かったのかもしれない。


   『Go on』 - 「ガクショク」 - #33 風邪に効く料理


 ふだん料理をしない私でも、失敗せずに作れたので、とても簡単。 でも、おいしい。 鶏がらスープと豆乳が、決め手なのかしら。 仕上げにちょいと たらしたごま油も、とってもいい香り。 しょうがとねぎの効力か、ぽかぽかと身体があたたまった。

 ただでさえ、消化器系が丈夫ではないうえ、風邪をひいているときなので、なるべく消化の良いものを、と思っているのだけど、いつも、同じようなものだと やはり飽きてしまうようなので、このレシピはなかなか掘り出し物だったかも ... と、かなり自己満足。 ... と言っても、検索結果の一番上に出てきたというだけなのだが ... 。

 おいしく食べてもらって、しっかり栄養補給してもらえると、看病するほうとしても、安心できる。
 (ドリンク剤や、サプリメント類などは、胃腸に “クル” らしく、あまり彼には合わないようだ)

 しかし。 ほんとうは、三日間くらい休んで、消化の良いものを食べて、あたたかくして寝ていられたらいいのでしょうけれど、社会人ともなると、そうもいかないようで ... 。

 せっかくちょっと良くなりかけたのに、昨夜もまた、のっぴきならぬ用がある、と言って、出かけてしまって ... 。

 そんなふうでは、いつまで経っても、治らなそう ... 。

 はあ~。 早く元気になってくれると、いいなあ~。





 そうそう。 彼に元気を出してもらおうと、看病しながら、風邪にまつわる笑い話をしてあげた。
 (こんなときでも、ついつい、ふざけてしまう私 ... )



 一.

 私の友人、P くん (日本人)。 天然ボケが炸裂している舞台俳優。

 ある日、劇団の稽古場にいたら、同じく劇団員の J くんから、P くんに電話がかかってきた。

 「わるい、おれ、風邪ひいて、今日は稽古に行けないわ」 と、J くん。

 「おお、そうか、大丈夫か? 熱あるのか?」 と、P くんが訊ねたところ、 J くんは、ちょっと冗談を言ってみよう、と思い、

 「あ、うん、五十度くらいあるんだよ」 と言ったら ... 。

 「ええええ~! まじで?! それやばいよ! 今日は、ほんと来なくていいから、寝てなよ」 と、本気に受け取り、こころから心配する P くんなのであった。

 そして、電話を切ると、稽古場にいた人全員に、「アイツ、熱が五十度あるんだって」 と吹聴して回ったとか ... 。

 あの ... 、五十度あったら、死にます。



 二.

 同じく、天然ボケの P くん。

 今度は、P くんが風邪をひいてしまった。

 心配した友だちが、薬を持って、P くんの家に遊びに来た。

 お友だちいわく、「この薬、すげえよく効くから、飲めよ。 これさえ飲めば、どんな風邪も一発で治るから」

 すると、P くんは、

 「おお、そうか。 じゃあ、もうちょっと悪くなったら、飲むね」

 ... 。

 悪くなるのが前提の風邪なのかしら ... 。















 * 遠く離れた、被災された方々に、愛のともし火を。 そして、なにより、身近な大切な人に、ぬくもりを。 (2004.11.1)










 BGM:
 Ray Charles with Betty Carter ‘Baby, It's Cold Outside’

 (クリスマスの時期にぴったりな、スタンダード曲)
 (Louis Armstrong さん、Holly Cole さんや Vanessa Williams さん、Tom Jones さん、Rod Stewart さんなどなど、いろんなかたが歌われています)


コメント (21)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

おうちへ帰ろう

2004年10月25日 23時40分43秒 | about him
 私の友人 (というか彼) が、風邪をひいて、昨夜から、わが家で寝込んでいる。

 きょうは、仕事を早めに切り上げて、めずらしく、定時で帰宅した。

 彼が、待っているから。

 いつもは、ぼけぼけと歩いている街並みを、いそいそと、早歩きで、通り抜けた。



 いえ、なんというか。 帰る家に、待っている人がいるって、いいですね。

 何年ぶりかしら?

 (同居人がいたのは、もう二年もまえ ... )

 彼が風邪で寝込んでいるのに、不謹慎なのは、わかっているのだけど ... 。

 こんなに息をはずませて帰宅したのは、ほんとうに、ひさしぶりだった。










 BGM:
 Kazuyoshi Saito ‘Aruite Kaerou’



 * いっしょに暮らしたりなんかしたら、たまには、一人になりたい ... とか思うのかもしれないけれど ... 。





 当 blog 内関連記事:
 ・「ただ、そこにいるだけで / Zoom Zoom Zoom」


コメント (14)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

お守りピック / Good Times, Bad Times

2004年10月19日 21時51分31秒 | about him
 まるで、身内の恥をさらすような話なのだけれど ... 。

 わたしの友人 (というか彼) は、お金にツイていない。

 わたしと付き合うようになった、この十ヶ月くらいのあいだだけでも、空き巣に遭い、お財布を失くし、いつも窮々している。

 やっと、ここのところ経済状態も立ち直ってきたので、二人で温泉旅行でも行きたいね、なんてことを言っていた。

 そして、今月末に、修善寺へ行く予定であった。

 とても、楽しみにしていたのに。

 先週半ば、彼からメールが来て、とつぜん、「旅行には行けなくなった」 と。

 その前日まで、旅行の話をしていたのに、あまりに急なので、おかしいとは思ったのだけど、仕事がいそがしいのだろう ... ということにした。

 彼のことだから、きっとなにか、理由があるはずだ、と。

 そうして、先週末、いつものようにいっしょに過ごして、さりげなく、「なんで旅行に行けなくなったの?」 と訊いたら。

 彼は、言わねばならぬ時が来た、という様子で、「あのね」 と言って、話しはじめた ―― 。





 先週の日曜の夜、彼が、わたしの部屋に泊まりに来ていた。

 翌朝、月曜日、彼が仕事に出る前に起きて、わたしは、朝ごはんを作った。

 (ちなみに、わたしは、朝ごはんを食べない)

 彼のために、一食分だけ、用意。

 一人暮らししていて、あまり食事に頓着できない彼のために、栄養のある朝ごはんをしっかり食べてほしいのである。

 彼は、よろこんでごはんを食べて、仕事に向かった。

 わたしが、いそがしい朝の時間のなか朝食を作ってあげたことで、とても気分よく歩いていたそうなのだが、急に、便意をもよおして、駅のトイレに寄ったとか。

 以下、ちょっと変な話で、恐縮 ... なのだけれど。

 彼は、大きいほうをするときに、いわゆるワンワン スタイルというのだろうか? しゃがまないと、出ない人で、和式トイレでないとだめなのである。

 で、駅のトイレで、いつものように、ズボンのポケットの中身 ―― お財布と携帯電話 ―― を出して水タンクの上にぽんと置き (ポケットになにか入っているとしゃがみづらいのだそうだ)、ズボンとパンツを下ろして、よっこいしょとしゃがんで、用を足した。

 御用が済み、気持ちよく駅のトイレを出、そのまま会社に向かった。

 お財布と携帯電話を置きっぱなしのまま ... 。

 そのことに気がついたのは、会社に着いてからだった。

 その後、駅に問い合わせたら、携帯電話は届けられているとのことだった。

 しかし、お財布は ... 。

 まえに、ここで、何度か書いたことがあると思うのだけど、彼は、お金を銀行に預けたりするのがきらいなうえ、空き巣に入られたことがあって、家にお金を置いておけないので、全財産をお財布のなかに入れて持ち歩いているのである。

 その、全財産が入っているお財布を失くしてしまったのだ。

 いくら入っていたのか定かではないが、きっと、そのお財布は戻ってこないだろう ... 。 たとえ、お財布が戻ってきたとしても、なかに入れていたお金はきっと戻ってこないだろう ... 。

 わたしたちは、無言でうつむいた。





 そういうわけで、彼は、またまた、無一文になってしまったのだ。

 う~ん。 またお財布を失くすなんて ... 。 かわいそうな彼。

 ああ、ひょっとして、わたしの devil パワーで、金運を吸い取っているのだろうか ... 。

 (考えてみると、わたしのほうは、ここのところお金まわりが良い。 いそがしいながらも、仕事が好調なので ... )

 あああ、わたしは、彼のためによくないのかしら ... 。

 わたしが、あの日、朝ごはんを作ったりしたから ... 。

 きっと、わたしったら、余計なことをしたんだわ ... 。

 わたしは、彼からすべてを奪い取る、devil なんだわ ... 。



 ... なんてことを考えて、落ち込んでいたら、昨夜、彼から電話が。

 なんと、お財布が戻ってきたのだそうだ!

 昨日、警察のかたから電話がかかってきて、お財布が届けられていると連絡があったそうで。

 どきどきしながら、お財布を取りに行き、どうせ中身はないだろう ... と思って、確認すると、全額そのまま残っていたという!

 なんという親切な、奇特な人がいるものだろう ... と、拾ってくださったかたの連絡先を訊き、さっそくお礼の電話をかけてみたとか。

 電話の向こうのかたの声は、想像していたより、ずっと若くて、いまどきの少年ふうだったそうだ。

 こんな人が、ネコババもせずに、財布を届けてくれたのか ... と、ちょっと驚きつつも、

 「あなたのような人に拾ってもらって、ほんとうに助かりました。 ありがとうございます」

 と伝えると、電話の向こうのかたは、

 「いえいえ、いいんです。 ほんとのこというと、一瞬、お金に目がくらんだんですけど、小銭入れのなかに、(ギターの) ピックがあったんで ... 。 おれも、バンドやってて、おんなじメーカーのピックを使ってるんですよ。 で、バンドやってる大変さを、おれも知ってるから、悪いな ... と思って ... 」

 と、照れくさそうにおっしゃっていたとか ..... 。










 ギターのピックを、入れていて、良かったね!

 バンドマンに拾ってもらって、良かったね!

 世の中、悪いことばかりじゃないね!

 うん。

 ありがとう。

 ギターの神さま ... ?















 ... でも、これからは、お財布を失くさないようにしないと、ね。

 (ちなみに、旅行は、すでにキャンセルしてしまったあとでした ... )










 当 blog 内関連記事:
 ・「こころのジューク・ボックス / Please, Please Me」

 ・「ほんとうは、ナニジン?」

 ・「プライドのカタマリ」








 BGM:
 Rolling Stones ‘Good Times, Bad Times’


コメント (15)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

うわごと / つい、本音

2004年09月08日 23時32分13秒 | about him
 ああ。 日付が変わってしまったのだが。

 昨日、九月七日は、「鏡花忌」 であった。

 泉 鏡花さんの作品、それほど詳しくないのだが、とても印象に残っている作品で、『外科室』 というものがある。

 読まれていないかたには、申し訳ないのだが、あらすじを (かなり) 端折って説明してしまうと ... 。


 胸の病いを患う、とある高貴な夫人が、手術に際して、麻酔をかけられることをどうしても拒む ... 。 というのも、人には打ち明けられない秘密が、こころのなかにあり、麻酔にかかっているあいだに、その秘密をうわごとで言ってしまうのではないかと恐れているために。 麻酔をしなければできない手術であれば、しなくてもよい、病気など治らなくてもよい、とまで言い放つ夫人 ... 。


 子どものころには、まったくわからない話であったが、いまは、なんとなく、わかるような気も ... 。

 死を賭しても守りたい、と言うと、おおげさになるのだが、ずっとずっとじぶんの胸のうちだけに秘めておきたい事柄、というのは、どんな人にも、あるものなのだろうか? と、ふと考えてしまう。





 ところで、私の友人 (というか彼) の話になるのだが。

 彼に関して、私は、こわいものなしの人、という印象を持っていたのであるが、先日、わが家に泊まりに来たときのこと。

 私が blog をしているあいだに、いつものように彼が先に寝てしまったので、あとからベッドに入ると、スヤスヤと寝ていたところに、とつぜん人の気配でびっくりしたのか、彼が、本気でびっくりして、「うわっ!」 と叫び声を上げた。

 そして、半分寝ぼけながら、「うぅ~ん、ほんとにびっくりしたよお、こわかったよお ... 」 と、ぶつぶつとつぶやいていた。

 そんなにびっくりされるとは思わず、私のほうがなおさらびっくりしてしまったのだが、ひょっとして、彼は、ほんとうは、とっても臆病なところがあるのかしら? それとも、こころの奥底に、なにか不安をかかえているのかな、ふかい悩みわずらいがあるのかな ... なんて、思ったりして。

 そういえば、いっしょに眠っていると、ときどき、私の背中にしがみついて寝ることがある。 さながら、私は 「抱き枕」 状態。

 なにか安堵感とか、安定感というか、そういうものを無意識に求めてしまっているのかなあ、なんて。

 あとで、私が、「本気でびっくりしてたよ」 なんて話をすると、「それ、おれじゃない」 とか言って、以前にも聞いたことのあるせりふを言う。

 ... うん。 そういうことにしておいてあげよう。

 でも。 いつか、その不安を、けむりのように、消し去ることができたなら、いいのだが ... 。





 (ちなみに。 私は、あまり寝言を言わないらしい。 ほっ。 よかった ... )





 ★おまけ★
 寝言で思い出した、笑い話 ...





 BGM:
 The Pretenders ‘I Go to Sleep’

 (The Kinks のカヴァー。 ドラマティックに歌い上げていて、The Kinks とは、またちがった魅力が)

 (ちなみに、九月七日は、The Pretenders のヴォーカリスト、Chrissie Hynde さんの誕生日でもあった。 おめでとうございます(遅))

コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

笑って、おどけて / ワンダフル・ワールド

2004年09月06日 22時59分44秒 | about him
 にちようびは、夕方から、新宿へ。 ..................................................

 友人 (というか彼) も、私も、ちょうど、新宿に用事があったのだ。

 人ごみがあまり好きでない彼といっしょのときは、あまり新宿に来ることはないのだが。

 こういうときこそ、とばかりに、お互いにさまざまな用事をこなした。

 私は、お絵描きソフトを見て回ったり、愛用していた台所用品が壊れてしまっていたので、東急ハンズであたらしいものを買い求め、高島屋でかねてからほしかったスカーフを購入した。

 彼は、電気店に修理に出していた CD ウォークマンを受け取り、楽器屋でギターの弦を買い ... 、

 そのあと、CD を買いに行きたい、と言い出した。

 私が、ごくふつうに、「なに買うの?」 と訊いたら。

 「ん? いやさあ。 ユミがさあ、さいきん、悩んでるみたいだって、話したじゃん」

 「うん」

 (ちなみに、「ユミちゃん」 とは、 彼の 「七番目の女(の子)」 (?) のこと。 便宜上、仮名で、ここではそう呼ぶことに)

 「どうやら、かなり深刻に悩んでるみたいなんだよ」

 「恋の悩みだったっけ?」

 「いや、そういうんじゃなくてさ、ユニットのことで、いろいろあるらしいよ」

 私たちの音楽仲間のひとりであるユミちゃんは、キーボード奏者の女の子と二人組みで、歌をうたっているのである。

 話を聞くと、ユミちゃんは、キーボードの女の子と、いま、どうやらしっくり行っていないらしい。

 「女ふたりってのは、たいへんみたいだよな」

 「 ... う~ん。 そうだね。 こじれると、いろいろややこしくなるかも」

 「でさ、すごく落ち込んでるんだよ。 これから、ブッキングがいっぱい入ってるのに」

 ユミちゃんのグループは、ついさいきんテレビに出たとかで、ちょうど、勢いに乗って、どんどんライヴ活動をしていこうとしているところなのである。

 (私は、このテレビ出演が、ユニット間の不和のきっかけのひとつなのかな ... と想像しているのだが)

 「でさ、落ち込んでるときは、『いい歌でも聴いて、元気出せや』 って、なんか CD でもプレゼントしてやろうかね、と思ってさ」

 う~ん。 彼らしい発言。 ほんとうに、世話好きで、面倒見のいい、みんなの、やさしいやさしいお兄ちゃん。

 そう。 みんなに、やさしいのだ ... 。



 そうして、いざ、タワー・レコードに向かい、ふたりで、新宿の街並みを歩いていたら。

 彼が、

 「いや、さあ、ローウェル・ジョージっているじゃん? あいつがさあ、ヴァレリー・カーターに、『きみは、一年間、ひたすらこれを聴き続けろ』 って言って、アル・グリーンのアルバムを渡したんだってさ。 その言いつけを守って、ヴァレリー・カーターは、毎日アル・グリーンを聴いて、それでシンガーとして成長したんだって (* 注1)。 いい話だよなあ。 おれもさ、それを、真似してみたかったのよ」

 と、言った。

 もしかすると、私が、ちょっと気にしていると思って、そんなことを言ったのかもしれない。

 「ふうん、じゃあ、アル・グリーンのアルバムをあげるの?」

 「いや、サム・クックをやろうと思ってさ。 おれは、サム・クックを通過していないシンガーはだめだと思ってるからさ」



 そうして、タワー・レコードの Sam Cooke コーナーで、ああでもない、こうでもないと物色。 いきなり三枚組み CD なんかをあげると重すぎるので、あまりヴォリュームのありすぎない、無難な選曲のベスト盤を購入していた。

 私は、私で、人が CD を物色していると、なぜかじぶんも欲しくなってきて、「わたしも、なにか買おうかな」 と、ふと、つぶやいた。

 「なに買うの?」 と、彼が訊いてくる。

 私は、先日いっしょに観た、ブルースの映画のサウンドトラックを買おうかな、とこたえた。

 じつは、私は、サウンドトラックも好きなのである。

 「あれ、良かったよなあ。 サントラ、出てんのかねえ。 よし、ちょっと見に行ってみるか」

 そうして、サウンドトラック コーナーへ向かったのだが。

 ぱっと見た感じ、見当たらなくて。 きっと、売り切れてしまったのかな、なんて考えていたら。

 彼が、「あっ!」 と叫んだ。 声が大きいので、こっちがびっくりしてしまう。

 「あったよ、これだよ!」

 「あ、ほんとだあ。 わあい」 と、早速、その CD をもらって、レジへ直行しようとしたら。

 「ちょっと待て。 これは、おれが見つけたんだから、おれが買う!」

 ええ~! なんてことかしら!

 「もう一枚ないの?」

 「これ、一枚しかない。 へっへーん、おれのもんだからな」

 うえ~ん。 しどい!

 「じゃあ、今度、それ、MD にダビングしてね」

 「やだ」

 「ふぬぁ! けちんぼ!」

 なんて、会話を交わしていたのだが ... 。



 彼が、会計を済ませた商品を、私に、ぽんと手渡した。

 私が、彼の顔を見ると。

 「いや、ユミに CD 買ってやって、おまえに買ってやらないのは、おかしいだろ?」

 一瞬、なんのことかわからない。

 「?*$!」

 「だから、ぷれぜんと・ふぉー・ゆー、だよ!」

 と、彼は、照れくさそうに言った。

 私が、あまりにびっくりして、「わーん、どうして?!」 と言ったら、

 「いらねえなら、いますぐ、捨てちまえ! ほら、いますぐ!」 なんて、怒り出す始末 ... 。

 ほんとうに、くれたばかりの CD を奪って、床に叩きつけるふりまでして ... 。

 結局、(いろんな意味で) 半泣きで、ありがたく頂戴した。





 彼というのは、こういう人なのだ。

 だから、彼を慕う人が、あとを絶たないのかもしれない、と思った。





 アリガト。










 * ちなみに。 「七番目の女の子」 とかいうのは、もちろん冗談で言っているだけなのです (たぶん)。





 BGM:
 Sam Cooke ‘I'm so Glad (Trouble Don't Last Always)’

コメント (14)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

七番目の女 / 一番目の孤独

2004年09月03日 18時28分53秒 | about him
 先日、音楽好きの仲間たちと集まって、飲んでいたときのこと。





 私と 「彼」 が付き合っていることは、諸所の事情があって、みんなのまえでは、ないしょになっている。

 それゆえ、音楽仲間たちといっしょのときは、私たちは、あまり会話をしないことに。

 不自然にならないように、あくまで、「仲間」 という関係を演じているのだが。

 たまたま、彼のとなりに座っていた女の子が、どうやら彼に相談ごとをしている様子だった。 どうやら、「恋の悩み」 らしい。

 彼は、「恋に悩んでるときは、海に向かって叫べ!」 だとか、「もし、恋に破れたときは、おれのむねに飛び込んで来い!」 だとか言っていたりして。 どこまで本気なのか、わからない。

 終いには、「おれでよかったら、いつでも相手してやるぜ!」 などと言って、ズボンのチャックを下ろすふりまではじめる始末 ... 。

 (ええと、べつに露出狂とか、そういうのではなくて、つい、冗談でそういうことをしちゃう人なのです ... 。 念のため)
 (ちなみに、ちょっとまえ、この女の子に勢いでチューしていたこともある ... 。 はあ~ ... )

 おかしかったのは、私のほうをじっと見つめながら、チャックを下ろそうとしていたこと。

 そんなに私の視線が気になるのなら、さいしょから、しなければいいのに ... 。 と思ってしまう。

 大胆なのだか、臆病なのだか ... 。 (やれやれ)





 そして、さらに。

 「おまえがもうちょっと女を磨いたら、おれの七番目の女にしてやるよ」 なんてことを、例の女の子に言っていたりして ... 。

 それを聞いた別の女の子が、「ええ~、わたしは~?!」 なんて言ってくると、

 「じゃあ、おまえは六番目の女」 とか、「おまえは四番目の女」 なんてことを言い出して、女の子たちのあいだで、「やったあ~、○○ちゃんに勝った~」 とか 「△△ちゃんに負けた~」 なあんて、みんな喜んだり、悲しんだり。

 なんだか、たのしそう。

 「一番目の女」 であるはずの私は、ひとり、ぽつんと、お愛想わらい。

 ああ、かなしい、かなしい。

 気のとおくなるような、せつなさ。

 「一番目」 であることを知られてはならない女は、とっても孤独なのね。

 「一番目の女」 になってしまったら、その座を維持するか、あとは、落ちるしかないものね。

 ... なんてね。





 あとで、彼と二人きりになったとき、「さっき、変なこと言ってたよね?」 なんて、私がちょっと言ってみたりすると、

 彼は、「しょうがないじゃん! あれがおれなんだから! おれはああいうことを言っちゃうやつなの!」 と開き直る。

 別に詰め寄ろうとしているわけではないのに、むきになって反論するところが、まあご愛嬌かしら ... というところだろうか。

 逆に、「そうだけど、それがなに?」 なんて、あっさり流されてしまうよりは ... 。





 「一番目の女」 であるはずのことに、あぐらをかくな、ということなのかしらね。

 と、良いように解釈することに、しておこう。 (強がり)





 ※ちなみに。 「彼」 は、はっきり言って、そんなにかっこいいわけではない。 世話好きな人なので、慕われやすいのである ... 。





 BGM:
 Eric Serra ‘My Lady Blue’

 (『Le Grand Bleu (グラン・ブルー)』 の ending theme)

コメント (12)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

元かのじょ / 対決?

2004年09月02日 21時57分13秒 | about him
 彼の住むアパアトの、大家さんちのねこ。 ..................................................

 「まる」。

 「まる」 は、彼のこと、そして、彼の部屋が大好きで、しょっちゅう遊びに来ているとか。

 彼の部屋は、二階にあるのだけど、前足で器用に窓をあけて、ひょいっと部屋に入り込んでは、澄ましているらしい。

 彼の布団のうえに、ねこ特有の、あの横座りをして、彼のギターに耳を傾けたり、いっしょにレコードを聴いたりして、ご機嫌になっているとか。

 夜寝るときも、いっしょにごろごろしたりして、まるで、彼といっしょに暮らしているかのよう ... ?

 ねこが大好きな私としては、彼が、うらやましい。

 いや、彼が大好きな私としては、「まる」 が、うらやましい (キャー) 。



 しかし。 私は、まだ、「まる」 には会ったことがない。

 写真で見た感じでは、とてもりっぱで、強そうなねこだ。

 どうやら、彼のアパアトの一帯を仕切っているボスのようで、よく、ちっちゃいねこを引き連れて、そのあたりをのしのし歩いているらしい。

 ううううん、けんかしたら、負けそうな気がする ... 。



 私と付き合うようになってから、わが家に泊まりに来る機会が増えた彼は、あまり 「まる」 にかまえなくなってしまった。

 わが家に泊まった翌日、じぶんの部屋に帰ると、あきらかに 「まる」 がやって来た形跡があるという。

 いつまで待っても、彼が帰ってこないので、怒って、部屋中暴れまわって帰ったという形跡が ... 。

 そんな話を聞くと、「まる」 がかわいそうだから、さみしいけれど、部屋に帰ってあげてね。 なんて、つい遠慮したくなる。

 今度、私が、***さんの部屋に泊まりに行くから、「まる」 を紹介してね。 なんて言っているのだけど ... 。



 先日、彼が仕事から帰ったら、「まる」 が部屋で待っていたそうだ。

 「おう、まる、来てたのか」 と声をかけると、すりすり、ごろごろ。

 「まる」 の頭をなでながら、彼が、

 「あのな、** (筆者の名) が会いたがってるぞ」 と、言ったら ... 、

 「まる」 は、ぷいっと横を向いて、ぴゅうっと部屋を飛び出して行ってしまったとか ... 。

 あああ。 完全に嫌われているらしい ... 。

 ねこってのは、敏感だから。 きっと、私の名まえを聞いただけで、ライバルだと察知したのか。



 「まる」 と仲良くできる日は、遠いのかもしれない ... 。







 ---
 [追記]:

 ちなみに。 彼には、ごはんを作ってくれる友だちがいる。

 彼が、「腹減ったー」 と電話一本かければ、「よし、わかった」 と言って、彼の好きな焼き魚かなんかを用意して待っていてくれるとか。

 私と付き合うようになってから、「おまえ、メシ喰いに来なくなったよな!」 と言われているらしい ..... 。

 うむむむ。 モテる(?)オトコは、つらいね?!







 BGM:
 Cat Power “You Are Free”

 (ねこぢから、です)

コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「映画みたいな恋」 / いい波

2004年09月01日 16時03分40秒 | about him
 ここのところ、仕事が立て込んでいたり、趣味活動にうつつをぬかしていたり、はたまた、blog にばかり気を取られていて、ゆっくり映画を観る時間がなかった。

 なるべく、月に、二、三回は映画館に行き、週に一、二本くらいは、ヴィデオを観ることにしていたのだけれど、八月は、そんな余裕はなく ... 。

 九月は、のんびりとできたら、いいのだが。

 ところで。

 私は、以前まで、映画館の座席は、まんなかの列の、後ろのほうの席で観たい性分だったのだけど。 わが友人 (というか彼) が、まえの座席で観たいというので、それに合わせている。

 まえのほうの席だと、首が疲れそう、とか、スクリーン全体が目に入らないそう、とか、スクリーンの下のほうが見えなさそう、などという不安があったのだが、じっさいにまえのほうに座ってみると、スクリーンが近い分、臨場感があったり、細かいところまで見えて、いかにも映画館で映画を観ている、という気分になれるので、なかなかいいではないか、と思うようになりはじめた。

 現在の彼と付き合うまで、付き合ってきた人は、みんな 「後ろで観る」 派だった (あるいは、私の意見に合わせてくれていたのか ..... 。 私が拒否できないような圧力を与えていたのか ..... )。

 彼と出会わなければ、まえのほうの座席で観るという、別の観方を、知らないままでいたかもしれない。





 そういえば。 白いごはん。 私は、硬めに炊く派だった。 やわらかすぎて歯ごたえがなかったり、お米がつぶれてしまうのが、いやだった。

 しかし、彼は、やわらかめが好きな人だった。

 彼に合わせて、やや水分を多めにして、やわらかめに炊くようになった。

 そのうち、料理の本なんか買って来て、お米がおいしく炊ける とぎ方、なんてのを憶えたりして。

 その通りにといで、炊いてみたら、彼も気がついたらしい。 「今日は、ごはんがうまい」 なんて。

 お米は同じなのに。 とぎ方ひとつ変えただけで、こんなにちがうものなのか、と、びっくりした。

 そのうち、彼がおいしいと言ってくれるのがたのしみとなり、さらに欲が出て、土鍋などを買ってみた。

 以前から、土鍋で炊いたごはんはおいしいと聞いていたので、ためしてみたくなったのだ。 いざ、炊き上がったごはん、まるで、テレビ・コマーシャルのごはんのように、ふっくら、つやつや。

 格別のしあわせだった。

 このふっくら、つやつやのごはんさえあれば、海苔の佃煮だとか、ふりかけだとか、ちりめんじゃこなんかでもあれば、あとは、お味噌汁だけでも、よろこんで食べてくれる。

 保温がきかないので、すぐに食べなくてはいけないのだけど。 スイッチひとつ、タイマーで好きなときに炊ける、というわけにはいかないけれど。 いいお米でなくても、とぎ方と、鍋次第で、おいしいごはんが炊けるのだとわかって、うれしかった。

 「ごはんのおいしさ」 というのに、出会えたのも、彼のおかげかもしれない。





 彼は、いままで付き合ってきた人のだれにも似ていなくて、じぶんにとって、異世界の人だ。

 彼と知り合うまえまでは、「運命的な出会い」 みたいなものを、少なからず、信じていたが ... 。

 なんでも趣味の合う、まるで、じぶんの、分身のような? 王子さまみたいな? 映画のような、衝撃的な出会いを?

 音楽の趣味は似ているところがあるけれど、食べものの嗜好とか、生活習慣とかなんかが、あまりにもちがいすぎて、さいしょは、わたしたち、合わないのかな ... などと煩悶したこともあった。

 けれど、ふとしたことで出会ってしまった、この、偶然/運命への結末を、どうつけていいのかわからず、宿命に身をゆだねるかのように、無心に思いつづけてきたが。

 いま、こうして、考えてみると、じぶんの知らない世界を見せてもらえて、どきどき・わくわく、ときどきがっかり、まれにしょんぼり。 いろいろな意味で刺激を与えてもらえている。

 趣味・嗜好が合わなくても。 互いに良い刺激を、良い影響を与えられるなら、これもまた、悪くないのかもしれない。

 私も、なにか、彼に、いい波 を送れていると、いいのであるが。





 ※ちなみに。 お風呂の温度の好みもちがう ... 。 ふとん派かベッド派か。 たたみ派かフローリング派か。 そば派かうどん派か ... 。 ほんとに、ぜんぜんちがうなあ ... 。





 関連リンク:
 ・「美味しいお米のとぎ方 」

 ・「映画占い」
  (私は、「メリーに首ったけ」 で キャメロン・ディアス が演じた、メリー、だとか。 ... うむむのむ)
  (そういえば、むかし好きだった人が、キャメロン・ディアスが好きだって言っていたっけ。 ... とほほのほ)





 BGM:
 The Jam ‘Heat Wave’
 (The Supremes のヒット曲。 The Who もカヴァーしている。 少年ナイフも。 The Jam のアレンジが好きである)

コメント (8)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

こころのジューク・ボックス / Please, Please Me

2004年08月20日 23時09分55秒 | about him
 何週間かまえに、

 たんじょうびを迎えた。

 べつに、約束をしていたわけではないけれど、勝手に、たんじょうびには、かれ と会えると思っていた。

 勝手に、その日は、予定を空けていた。

 blog の記事なども、ほったらかしておこう、とも思っていた。

 その前日、じぶんにとって、会心の一作を書いていた。

 (あくまでじぶんにとって、であるが)

 (いままでいろんなことを書いてきたが、いちばん好きな記事だ)

 ちょうどいい部分を書いているさいちゅうに、彼から電話がかかってきた。

 しかし、わたしは、キーボードを叩く手を止めることができなかった。

 ぜんぶ書き上げて、アップしてから、かけ直そうと、思っていた。

 夜十一時過ぎに、やっとアップして、電話をかけ直そうと思っていたら、かれ から、携帯電話のほうにメールが届いていた。

 (かれ は PC を持っていないので、携帯電話にしかメールは来ないのだが)


 「一日早いけれど、誕生日おめでとう。

  申し訳ないけれど、明日は用事があるので、

  プレゼントをさっき、郵便受けに入れといた」


 あわてて、マンションの表の郵便受けを見に行くと、Tower Records のビニール袋が。

 中身は、わたしが欲しがっていた、あるアーティストの新作の二枚組みライヴ盤と、『レコスケくん』 というレコードコレクターの男の子の漫画作者のかたが描いた、ポストカード・セットだった。

 かれ らしい贈り物に、思わず、笑ってしまった。

 せっかくプレゼントを持って、やって来てくれたのに、わたしは、blog の記事なんか書いていて ... と、申し訳ない気持ちになった。

 と、同時に、せっかくのたんじょうびなのに、なぜ、明日は会えないのだろう? という、ちょっとした怒りに似た気持ちも、ふつふつと沸きあがった。

 あとで、お礼のメールを返したけれど、とくに、それへの返事はなかった。

 そして、たんじょうびは、孤独に。 いつもと同じように、blog の記事を書いて、アップし、時間が流れて、日付が変わっていった。

 二、三日は、たんじょうびにも会ってくれない人なんて ... と、ちょっとすねてみせようかとも思ったけれど。

 結局、その週末には、いつものように、会って、いつものように、過ごした。

 ふと、気になった。

 わたしのたんじょうびになにをしていたか。 ではなくて。

 ここで、一度書いたのだけど、かれ は、七月の中旬くらいにお財布をなくし、そのときの全財産を失ってしまっていたのだ。

 まだお給料が入っていなかったはずなので、このプレゼントは、いったいどうしたのだろう? と思った。

 そう。 わたしは、プレゼントなど要らなかった。 ただ、そばにさえいてくれたら、それで良かったのに ... 。

 わたしは、思いきって、かれ にたずねてみた。

 「お金、だいじょうぶだったの?」 と。

 すると。 レコードを中古店に売った、という。

 レコードを ?!

 「なにを売ったの?」 と訊いたら、The Beatles の “Please Please Me” だという !

 なんてことだ。

 このアルバムは、The Beatles の記念すべきデヴュー・アルバム。 そして、かれ が持っていたのは、たしか、くわしくはよくわからないのだが、英国オリジナル盤だかなにかで、ファン垂涎の、コレクターズ・アイテムだったはず。 そして、かれ のたいせつな宝物だったはず。

 「なんで、そんなことするの?!」

 「金が一銭もなくなっちまったからよ、うちにあるレコードでいちばん金になりそうなやつを売っぱらったんだわ。 まあ、プレゼント代と、二、三日のメシ代くらいにはなったわ」

 ああ、どうして、そんなことをするのだろう。

 わたしのプレゼント代なんかと、二、三日の食事代のために、たいせつな、たいせつなレコードを売ってしまうなんて ... 。

 わたしが、ことばを失っていると、

 「いいんだよ。 プリーズ・プリーズ・ミーなんてさ、もう何百回って聞いてるから、モノがなくても、だいじょうぶなんだよ。 おれのココに、ぜんぶ、インプットされてるからさ」

 と言って、かれ は、じぶんのあたまを指差した。

 ・・・ 。

 よりによって、かれ がいちばん好きだという The Beatles の、そして、記念すべきファースト・アルバムを売らなくてもいいのに ... 。

 けれど、かれ は、だからこそいいのだ、という。

 あたまンなかで、いつだって、自由に再生できるんだから、レコードは、たんなるカタチでしかないのだ、と。

 好きな作品だからこそ、擦り切れるほど聴いている。

 だから、歌詞カードなんか見なくたって、ぜんぶソラで歌える。

 コードもぜんぶ憶えている。

 じぶんのこころのジューク・ボックスから、好きなときに、好きなだけ、再生オン。

 そこまで愛して、レコードを聴いてきた かれ。

 たんじょうびに会ってもらえなかったこと、それがいったいなんだろう。

 かれ、という人は、こんなすてきな人なのだ。

 にんげん ジューク・ボックス。

 きっと、かれ には、iPod は、いらないのだろう。






 BGM:
 Ramones ‘Do You Remember Rock'n Roll Radio?’

コメント (12)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする