見出し画像

Retro-gaming and so on

講談社のラブコメが調子いい

このレビューを大変面白く読ませてもらった。

ところで、講談社のラブコメがずーっと調子がいい。
観測範囲で言うと「寄宿学校のジュリエット」辺りから「面白い」ラブコメが(少女漫画/女性向け漫画を除き)講談社から出てきてる気がする。

 

もちろん、全てがいい、ってワケじゃないだろう。個人的には「五等分の花嫁」とかは全然好きじゃない。
ただ、ここ10年くらい?途切れる事が無いカンジで講談社のラブコメは結構面白い作品が揃ってるんだ。現在でも、アニメになってる「てんぷる」なんかも調子がいい。面白い。



 

不思議だ。「あの講談社なのに」と(笑)。

いや、80年代基準で言うと、基本的にはどの少年誌も「ラブコメ」には弱かった。と言うか、あだち充擁する小学館一強だったんだよな。
あだち充が突出してた為、「ラブコメを描きたい」人間は小学館に集まるように見えた。いや、マジで多分そうだろう。こういうのって大体オピニオンリーダーの下に集まるからな。
少年ジャンプでさえラブコメには弱かった。「キックオフ」なんつーのもあったが、多分みんな忘れてる(笑)。それくらい遺らない、っつーか弱かったんだよ。
そして以前書いたけど、ラブコメってある種ムズいんだよな。「ラブ」が強まると「コメ」が弱まる。つまり、シリアス系展開に傾くと、すぐ「ドロドロの愛憎劇」になりかねない。結果、連載当初の「軽い筈のノリ」が、巻数を重ねる度に重くて読むのがツライ話に変わるのも良くある。電影少女は名作だが、後半の方の「重い展開」は多分初期の設計には入ってなかったんじゃないか。
少年ジャンプの場合、「いちご100%」以降、この分野を積極的に開拓していこうとしてるように見えるが、何だろな、基本的にはジャンプでは「邪道展開」なんだよね(笑)。1つ目は、いちご100%以降の「ラブコメ系漫画」ってジャンプの場合、実は敢えてメインテーマを「ラブ」にしないようにしてる。何だろ、例えばメインテーマを「幽霊退治」とか「妖怪退治」とか(笑)?全然違うモノに敢えてしておいて(笑)、あとは転んだら何故か女の子のパンツの中にアタマが入ってる、とか(笑)。そっちで「笑いを取る」系に行ってて、実は「コメディ」でもねぇんだよな(笑)。
要は、ジャンプって雑誌だと、読者層的に「ラブコメを」真正面から読んでくれる人たちがあんまいない、って事がバックグラウンドとしてあるんだろう。
いや、でもこれは「男女のシビアな愛憎劇にしたくない」以上、しょーがねぇ部分があるんだよな。マガジン、サンデー、ジャンプ、と見ると中心読者年齢層が一番低いのがジャンプだろうから、基本的には「ドロドロのシビアな愛憎劇」は向かないんだよ。それやっちゃうとアンケートがキツイとか。そういう背景があるんだろうな。

さて、講談社のメイン雑誌である少年マガジン。70年代に梶原一騎に「愛と誠」をやらせたくらいで、「純愛モノ」では傑作はあったんだよ。そして70年代後半には柳沢きみおの「翔んだカップル」が出る(※1)。しかし、これも最初は「同棲」をテーマにした軽いカンジの作品として始まるがどんどん愛憎劇になってくんだ(のちの「重い」柳沢きみおの最初の例となる)。
と言うわけで、80年代以降、「少年マガジン」で唯一性交成功したラブコメってのは「THE♥かぼちゃワイン」くらいで長い間、講談社の雑誌は(少女誌/女性向け雑誌を除き)「ラブコメ不毛の地」となっていたと思う。



 

ぶっちゃけ、特に週刊少年マガジンは、70年代の黄金期とは違って、80年代は迷走期、と言って良かった。ラブコメ不在の週刊少年マガジンは巨乳漫画雑誌になっていた。いや、巨乳ならまだいい。どう見ても巨大乳輪の魔境だ(爆
控えめの乳なんざ出てこない。アメリカのXXX女優の如く、豊胸した上での乳輪拡大じゃねーの、ってマンガばっか溢れかえるんだ(笑)。そこには美乳なんつー概念さえない。どこを見てもバランスが悪い乳だらけ、と言う化け物屋敷みてぇな雑誌へと豹変するんだ。
ラブコメには巨乳キャラが必要だが、爆乳だらけじゃラブもコメもありゃしねぇ。
かつて「サルまん」で、少年マガジンの印象論が書かれていたが、それで爆笑してたのは、まさしく「さもありなん」な解説になっていたからだ。


 
ホンマ、パイオツカイデーチャンネーは嫌いじゃないが(どっちかっつーと好物だが)、乳輪がデカいのは勘弁して欲しい土下座してぇくらいだ。怖いし気持ち悪いのだ。

そしてラブコメ不毛な80年代中期の少年マガジンだと、透明人間になってヒロインの裸を視姦する、と言う犯罪行為スレスレのマンガが一番人気だった、と言う世紀末な状態だったんだよ。

1990年代に入ると高校生が殺人を犯しまくりで高校生が事件を解決すると言う荒唐無稽なマンガが流行ったりしたけど、相変わらずラブコメ不毛地帯としてその後10年以上経過する筈だ。ジャンプがそこそこ「ラブコメ」でも佳作を出してる間、講談社はこのテのジャンルだと後塵を拝してた、って状態が延々を続いてたわけだ。

しかし、2015年前後から講談社のラブコメジャンルに於ける逆襲が始まった。この傾向がとてもが面白い。今後ひょっとしたら「ラブコメと言えば講談社」となるやもしれん。少なくとも、近年の作品のヒット比率を考えてみると、このジャンルでは「THE♥かぼちゃワイン」以降初めてのムーヴメントなんだよな。
しばらく講談社の「ラブコメ」に注目していきたい、と思っている。

※1: 柳沢きみおと言うと、現在だと印象的には青年漫画の、例えば「特命係長・只野仁」の印象だろうが、実は少年誌では、恐らく初めて「ラブコメ」と言う漫画ジャンルを「開発した」人で、企業で例えると(株)ラブコメ創業者が「柳沢きみお」、中興の祖が「あだち充」ってのが歴史的なポジションだろう。
元々、柳沢きみおは「ラブ要素が入ったギャグ漫画」をやってた人で、1976年に少年チャンピオンで「月とスッポン」、1977年に少年キングで「すくらんぶるエッグ」を連載し、この2作品ともそこそこ長い連載期間だった(後者は後の「ハーレムもの」の雛形かもしんない)。
この2作品が恐らく「歴史上、少年マンガ誌に登場した最初のラブコメ」となるだろう。
そして上記2作品と同時に少年マガジンで連載しだすのが「翔んだカップル」(1978年)だ。そしてこの作品が初めて「ラブ」と「コメ」の間で前2作と違って「ラブ」の比重が高まった。
当時、柳沢きみおはまさしく売れっ子で、3誌同時に連載し、「ラブコメ」と言うフォーマットを知らしめたんだ。
  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「マンガ」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事