ガキの頃の話である。
かつて、小学生とか、低学年の安全を考えて朝、「登校班」とか作んなかった?
町内の、小学校5〜6年生とかがさ、班長に選出されて、朝の登校とか、低学年を引き連れて登校する、とかやってたんだよな。
今でもやってんのかしら。
んで、そこの「班長」が言うんだよ。
すげぇ映画を観た、と。
「女の人の背中から赤ん坊が産まれるんだぜ?」
とか言われてさ(笑)。
もう、毎日言うんだわ(笑)。
クソガキは興味を惹かれざるを得ないわけじゃん?
実は1970年代ってホラー映画が大ヒットして、大量生産された時代なんだよな。
理由はただ一つ。特撮が進歩したから、だ。
んで、このテの技術が進歩した時に、大体最初に取り込むのがホラーかエロってのが相場なんだよ(笑)。いやホンマ。
例えば、後に、80年代に「3Dメガネを使った」3D映画って技術が出てきた。
今じゃそんなに珍しくなくなったけど、80年代は珍しかったんだ(んで、当時はやっぱメガネが邪魔、ってぇんでイマイチ広まらなかった)。
んで大体最初にそーゆーのを使う、って言うとホラー系の映画なんだよな。
駄作だけど、ジョーズの3作目、ってのはこの3D映画だったし。
それはさておき、当時の回想に戻る。
んで、親戚の良く面倒を見て可愛がってくれたねーちゃんに頼み込んで、この映画を観に行くことになったのだ。
そして・・・・・・メチャクチャ後悔した。
何故ならクソガキ相手にはメチャクチャ怖い映画だったからだ。
毎晩マジで眠れない。
もうホンマ、観なきゃ良かった、と。
映画館ではあまりの怖さに、殆ど目を瞑ってたくせに。
神様、もう二度とホラー映画は観ません、とまで誓った。
もうホント、この映画、「マニトウ」はそのくらいトラウマになったのである。
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そんな純な頃もあったワタクシなのに、今はホラー映画が好きだ、っつーんだから世の中分かんねぇよなぁ。
いずれにせよ、このトラウマ化した映画、マニトウが、ドラキュラとかフランケンシュタインとか四谷怪談とかクラシックな怪奇映画を除き初めて観たホラー映画である。しかも劇場での鑑賞である。何やってたんだ、俺(苦笑)。
ちなみに、あれだけガキを怖がらせたマニトウだが、今は、カルトムービー扱いらしい。
その理由は唯一つ。監督のウィリアム・ガードラーのせいである。
この人、実はパクリ屋としての悪名が高く、その仕事のせいで訴訟まで起こされて、映画監督としてはサイテーの映画監督、と言う評を受けている。
だからマニトウはカルトムービー扱いなんだ。
でもちょっと待って欲しい。
確かに彼の経歴を見ると「輝かしい経歴」とは縁がない。多分全般的に言うとダメな監督だったんだろう。
でもだからと言って「全作品がダメ」と言う評価はおかしいと思うんだ(※1)。少なくともマニトウは(原作小説があるにせよ)オリジナリティが光る映画である。
何度も言うけど、そもそも、ドラマでも映画でもコンセプトを一文で表せるものはいい作品だと思っている。コンセプトがゴチャゴチャしてる、つまり、一文で表せないのはあまり良い作品ではないのだ。
冒頭にも書いたが、マニトウと言う映画は
・女の人が背中から赤ん坊を産む話
である。
一行でストーリーを説明出来るんだから大変優秀な映画なのだ。
んで、この一行、が他作品に見られないユニークなアイデンティティを表している。
例えば、まぁ、好きで読むんだけど、「小説家になろう」の異世界転生モノ、とか、何故にオリジナリティが欠如するか、と批判される理由も、コンセプトが全部
- 異世界に転生して無双する話
だからだ。一行でコンセプトが説明出来る、と言うのは優秀なんだけど、そのコンセプトでは差別化が生じない。要するにこのコンセプトで説明出来る作品ばっか、ってのが問題なのである。
単一の「どれ」「あれ」「これ」を説明出来るくらいのアイデンティティがない、から批判が生じるわけだ。
まぁ、内容はそこそこ面白いヤツはあるんで、暇つぶしに楽しんで読む分には問題ないんだけど(所詮娯楽だし)、唯一無二ではない、ってのは間違いないわけだ。
それに比べるとマニトウは唯一無二のコンセプトを持ってる、って事は言えると思う(※2)。
もう一つ言うと、繰り返すがマニトウのコンセプトは
- 女の人が背中から赤ん坊を産む話
である。このコンセプトが素っ頓狂過ぎて、失笑対象になってる、と言う話もあるが、多分そういう人は笑いは分かっててもホラーが何たるか良く分かってないんじゃないか、と思う。
実の事を言うと、ギャグとホラーは合い通づるものがあるのだ。それはどっちも
・正常だったらこうなんだけど、異常だからこうなってる
ってのがバックグラウンドにあるから、だ。
例えば「鼻の代わりにチンポコを付けた男」(©筒井康隆)ってのを考えてみよう。つまり「正常だったら鼻がある場所に異常だからチンポコが生えている」わけだ。
こういうクリーチャーを考え出した時、それをギャグにするかホラーにするか、と言うのは作者の好みになる。
しかし「鼻の代わりにチンポコを付けた男」と言う「正常を代替する異常なクリーチャー」を発明出来ない以上、そこから一歩も進めないのは間違いないのだ。
ちなみに、何故に優秀だったホラー漫画家が突然ギャグ漫画をやりだして成功するのか、と言うと(例えば楳図かずおとか魔矢峰央とか)、この「正常だったらこうなんだけど、異常だとこうなる」と言う発想に長けてるからじゃなかろうか。
いずれにせよ、正常だったらこうなのに、異常だったらこうだ、ってのは実生活上極めて「怖い」ものなのである。
そして、女性にとっての妊娠と出産。正常だったら神の所業と言うような神々しい「生命活動」なんだけど、背中で妊娠してそこから子供が産まれる、なんつーのは確実に「怖い」し、異常な事なのである。
従って、やっぱり
- 女の人が背中から赤ん坊を産む話
ってのはコンセプト的に考えるとどう見ても「怖い話」なのである。
と言うわけで、ウィリアム・ガードラーと言う監督のせいで、不当に評価が低くなってんじゃねぇの、ってのがこの映画、マニトウである。
実は失笑ポイントは他にもあるし、今、観直してみると「あ〜、予算がそこまで取れなかったんだろうなぁ」と言う特撮のチープさはあるとは思う。
しかし、やっぱり「アイディアは良い」としか言いようがないし、ホラー映画をリメイクする、ってのなら絶好のネタなんじゃないだろうか。
もう一つ、僕がマニトウが優秀な映画だ、と思ってるポイントを言おう。
実はある種、この映画はホラー映画のフォーマットからズレているのだ。
実はホラー映画では・・・まぁゾンビ系の映画は敢えて除くが、基本的に「個 vs. 超自然的なモノ」と言う対立構造を持ってるものが多い。仮に個、じゃない場合は、基本的フォーマットは「小集団」 vs. 超自然的なモノ、ってカンジなんだよな。例えば「家族 vs. 超自然的なモノ」とか「恋人同士 vs. 超自然的なモノ」とかな。
ところが、このマニトウって映画はストーリーの殆どが病院で進む為、一種の集団戦になっている。この辺が他のホラー映画と大幅に違うトコである。
もちろん、病院のスタッフは自ら望んで事件に巻き込まれたわけではないが、「背中で妊娠してる」女性が患者であり、超自然的な「ナニか」が憑いていようともその患者を見捨てないのだ。
ある意味、非常に職業倫理感が高い連中であり、だからこそ主役に結果協力し、患者を助けようと奮闘して殺されたりするわけだ。
こういうフォーマットはハリウッド映画では極めて珍しいと思う。通常、真っ先に逃げ出すのは内輪の関係者じゃない「外部の者」であり、真っ先に殺されるのはそういう「エゴイスティック」な奴らであり、型で言うと「医者」なんつーのは大喜びで殺される役にしたがりそうだが、この映画ではそれが無いのだ。
出てくる医療関係者は基本的に皆良いやつで職業倫理が強い。これはハリウッドのホラーだと非常に珍しいスタンスだと思う。
なお、監督のウィリアム・ガードラーは、この映画「マニトウ」を撮った後、フィリピンで次作準備中にヘリコプターでの事故で亡くなっている。享年30歳だった。
当時のチラシには「マニトウの呪い?」とか無責任な事が書かれてたように覚えている。
さて、最初に「マニトウ」と言う単語に付いてちと解説する。
アメリカン・インディアンの言葉らしいが、大雑把に言うと「霊」を表す。
この場合の霊は幽霊もそうだし、いわゆる「精霊」も含む、ホント大雑把な言葉なのだ。
そして古典的なアメリカン・インディアンの信仰では「万物に霊は宿る」。
そう、アニミズム、そしてシャーマニズムが前提のホラー映画、それがマニトウ、である。
と言うわけであらすじ。
サンフランシスコのシスターオブエルサレム病院にカレン・タンディ、と言う女性が診察に訪れる。
3日前に彼女の首の後ろに腫瘍が出来、それがどんどんと大きくなっているのだ。
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しかもその腫瘍は1日に4〜5回も動くと言う。原因は全く不明。
しかし、医者たちはレントゲン検査によって、その首の後ろの腫瘍の中身が「まるで胎児のように見える」事を知っていた。
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ところ変わって。
インチキ占い師、及び心霊研究家のハリー・アースキンは、元カノであるカレンから電話を受ける。
ハリーはカレンの「会いたい」と言う言葉を受け入れる。
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カレンは腫瘍の奇怪な成長度合いにおびえており、「こんな話は貴方にしか出来ない」と言う。
そして手術は明日に迫った、と言う。
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カレンを家に誘い、余興として二人の今後をタロットカードで占うハリー。
しかし何度行ってもDEATHしか出てこない。
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その後、(久しぶりに会ってエッチしたんだろうな・笑)ハリーとカレンは同じベッドに寝る。
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熟睡中のカレンだが、寝言で「パナ・ウィッチー・サラトー」と言う意味不明の言葉を発する。
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その寝言でハリーは起き、その言葉を心に刻みつけるのだ。
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翌日、腫瘍の手術が行われるが、麻酔が効いてるはずのカレンは突然目を開け、例の言葉「パナ・ウィッチー・サラトー」と唱えだす。
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そうすると、執刀医は何故かメスで手首を切り始め、結果手術は中止になる。
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同じ頃、ハリーは営業用の付け髭を付けつつ(笑)、来客の為にタロットを行っていたが、やはり結果はDEATHが出る。
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そしてそれと同時に客のバァちゃんも「パナ・ウィッチー・サラトー」と唱えだし狂乱状態に陥る。
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錯乱状態の婆さんの為に救急車を呼ぼうとするハリーだが、婆さんは部屋を出ていってしまう。
しかも彼女は宙に浮いた状態だったのだ。
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そして、そのまま彼女は階段から転落して死亡してしまう。
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すぐさま、ハリーは病院でカレンの担当医に会う。
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カレンが「パナ・ウィッチー・サラトー」と言う謎の言葉を言ってた事、そして今朝の顧客の転落事故に付いて説明するハリー。
その「謎の言葉」には担当医も心当たりがあった。手術中にカレンがその言葉を唱えていたのを聞いてたから、だ。
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ハリーはカレンの命の危険を訴える。
担当医は、不思議な事に手術は失敗し、今はカレンは安静状態にある、と言う。そしてオカルトは信じない、と。
そしてハリーに「腫瘍の中に胎児のようなモノがある」と明かす。
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ハリーは、担当医に「黒魔術を信じるか?」と問う。
「もちろん俺も信じてない。が、何か、何者かがカレンを操ってるんじゃないか、と言う気がするんだ。」
と。
二人はカレンの容態を見に行く。
ハリーは「パナ・ウィッチー・サラトーと言う言葉に覚えがあるか?」とカレンに聞くと、カレンは「パナー!!!!」と叫びだす。
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見事な楳図かずお顔である(謎
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さて、カレンに憑いてる「何者」かを探る為、ハリーは霊能関係でのかつての知人女性、アメリアを訪ねる。
彼女のツテで本物の霊能者を呼び、彼女の旦那と合わせて4人で「降霊会」を行ってみよう、と言うのだ(この辺のぶっ飛び具合がこの映画が批判されるトコなのかもしれんが・笑)。
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降霊会で「何か」は現れたが、全く意思疎通が出来ない。
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そして「降霊」が終了した途端に、部屋の窓が弾け飛び、突然の嵐と雷が室内を襲う。
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4人が見た「何か」は黒魔術に関係した悪霊である事、そしてその顔は良くある木製のアメリカン・インディアンの像等に酷似してる、と結論付ける。
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ハリーは「アメリカン・インディアンの呪術師に関係あるのでは?」と予想するのだが、アメリカン・インディアンの呪術師と、カレンの首に出来た腫瘍と、「パナ・ウィッチー・サラトー」と言う謎の言葉と、顧客の婆さんの死の関連が分からない、と悩む。
その時、アメリアの旦那がある本の記述を発見する。
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その本にはこう書かれていた。
「アメリカン・インディアンの呪術師は強力な魔術師で、超自然的な現象を起こすことが出来る。彼らは不滅の存在で、彼らのマニトウ、あるいは不滅の魂は、時間を問わず、未来でも過去でも、男性、女性、動物に関わらず"妊娠"させて生まれ変わると信じられている。」
アメリカン・インディアンの呪術師がカレンから「生まれ出よう」としてるのではないか。ハリーは誰かアメリカン・インディアンについての「専門家」が必要だ、と感じるがそのツテがない。
そこで旦那は「この本の著者に連絡を取ってみれば?」と提案する。
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すぐさま電話帳で住所を調べるアメリア(個人情報保護法が無い良い時代だ・笑)。
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その本の著者はカリフォルニア州のサウサリートに住んでるらしい。
翌日、霊媒師を除いたトリオはその本の著者、人類学者のアーネスト・スノウ博士を訪ねる事となる。
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この時点でカレンの腫瘍は以前の2倍程に成長し、医者も完全に腫瘍の中に「胎児」がいるのを確認してた。
スノウ博士は、1851年にミズーリ州で少女の腕にその50年前に死んだ呪術師が転生した、と言う言い伝えを知り、その事を本に書いたのだ、と言った。結局その少女は死んだそうだが。
結局、「腫瘍の権威ではない」と言う事で博士は話を終わらせたがるが、ハリーの説得により、少し心を動かされ、資料がある天井裏へと一行を案内する。
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ついでにハリーは博士に「パナ・ウィッチー・サラトー」と言う言葉を知らないか、と問うてみる。
博士は「北カリフォルニア(※3)のピスカタウェイ族の言語に聞こえる」と言い、その意味を「我が死は我が帰還を予告する」だとハリーに教える。
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博士は、白人が来る前にアメリカン・インディアンの呪術師は死に絶えただろう、と言う。少なくとも非常に強力な呪術師なら400年以上も前の呪術師だろうと。そんな呪術師と闘うなんて正気の沙汰ではない、と警告する。
そして、カレンは「選ばれた」わけではなく、単に運が悪かったのだろう、と。
トリオ全員がカレンの死を覚悟した時、博士は最後に言う。「ひとつだけ方法はあるとは思う」と。
「目には目を。呪術師には呪術師を。」
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博士の情報では、サウスダコタ州にアメリカン・インディアンの呪術師がいる、との事。
「いくらかかるんだ?」とハリーは尋ねるが、博士は
「アメリカン・インディアンは金を求めない。彼らの価値は"信頼"と"友情"だ。そのためには彼らは命を賭けるだろう。」
と答え、この会合はお開きとなる。
ハリーはカレンの担当医に「呪術師を呼びたい」と言うが当然担当医はそれに反対する。カレンにはレーザーによる腫瘍摘出手術を行おうとしてる、と。
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「腫瘍切除だとカレンに死の危険がある、って話じゃなかったのか!」
と激昂するハリー。
ところが、二人の口論が始まった途端エマージェンシーコールが入る。
レーザーによる切除手術をはじめようとした途端、手術室のレーザーが大暴れするのである。
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カレンは担当医に言う。
「彼が言うの。貴方は彼に触るな、って!」
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カレンは「彼は光が怖い、光が痛いって言うのよ!」と言って暴れる。
カレンは結果取り押さえられるが、首のうしろにあった腫瘍は背中まで下がり、こんなに成長していた。
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「光が怖い、痛いって何だ?」と言うハリー。
担当医は「レントゲンだろう。照射によって、細胞が死んだりする。胎児にはキツいのではないか」と答える。
これが後の重大ヒントになる。
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翌日、ハリーはサウスダコタ州の呪術師、ジョン・シンギングロックのもとを訪れる。
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この人がカッコイイ(※4)。「恐怖に立ち向かう」エエ顔をしとる(笑)。
実はハリーはここに来るまでに5人も呪術師に断られ続けてきた。
ジョンが言うには「恐らく取り憑いた呪術師は4〜5回は転生してるんじゃないか」。
そして「転生するほど呪術師は強くなる」と。
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ジョンは本当は「先祖の地を奪った」白人が大嫌いなのだ。
だから100,000ドルの依頼料を要求する。ただし、それをインディアン教育基金に寄付してくれ、と。
自分自身にはタバコを数箱くれれば良い、と。
なかなか粋なヤツである(笑)。
さて、ジョンとカレンの初顔合わせ。
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まずは特殊な砂を使ってカレンの周りに結界を描くジョン。
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そして動物の骨で作った(ような)呪術具を叩いてカレンに憑く「何者か」に話しかけようとするジョン。
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その時、カレンが目を開け、話しだす。
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「俺は貴様より強い。貴様の呪術は役立たずだ。」
「お前は誰だ?」
「かつては、ミスカマカスと呼ばれた。白人をおいて立ち去れ、同胞よ。奴らを助けるな。さもないと死ぬぞ。」
驚愕するジョン。
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ミスカマカスとはかつて、アメリカン・インディアン史上最強の魔術師である。
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↑ 間違い(謎
ジョンは断言する。
「白人社会の信仰や教会では勝てない。彼の前では白人の神なんか無意味だ。」
と。
ハリーは「カレンはどうなるんだ?」と詰め寄るがジョンはこういう。
「わたしが勝てばカレンは生きるだろう。もしわたしが負ければ・・・信じてほしいが、彼女は我々より楽に死ねるだけだ。」
その夜、病院で待機するハリーとジョン。
突然、病室でカレンを見張っていた病院のスタッフが惨殺される。
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ハリーとジョンがカレンの病室に入ると、カレンがまさしく「出産」しようとしていた。
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かわいくねー400歳の赤ん坊の誕生である(苦笑)。
ジョンはすかさず、精霊(他のマニトウ)の力を借り、ミスカマカスを眠らせ、時間を稼ぐ事に成功する。
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病院のスタッフが殺された事にショックを受ける担当医。警察を呼ぶべきだ、と主張する担当医に対して、警察を呼んでも無駄だ、と諭すジョン。
何故ならミスカマカスなら拳銃を持ってる警官を操って警官自身を殺す事が可能だからだ、と言う。
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ジョンは取り敢えずこの階を閉鎖すべきだ、と助言する。これに対し、担当医は
「この階は手術用の階で、カレンの他には今は患者はいない。」
と答える。取り敢えず一般患者の虐殺は避けられる模様だ。
別のスタッフをカレンの部屋の監視に回す。
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その時、ジョンの呪術が解け、ミスカマカスは死体を呪術で操りスタッフを襲わせようとする。
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間一髪、ジョンは「嵐のマニトウ」の力を借り、ゾンビ状態の呪術を解く。
その時、ミスカマカスはカレンを操り、自分の意思を伝える。
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「貴様は逆らった。俺を傷つけた。痛いぞ。お前らを皆殺しにしてやる。」
と。
そしてミスカマカスは結界を破ろうとしはじめる。
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かつ、古代のアメリカン・インディアンの悪魔、木トカゲを召喚しようとする。
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木トカゲの攻撃目標は取り敢えず「担当医」だった。手術でミスカマカスを殺そうとしたので報復を考えたのである。
木トカゲは担当医の右手に噛み付く。
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ハリーは取り敢えず担当医を抱えて上階(15階?)に避難。
その間にジョンはミスカマカスと対峙する。
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担当医を安静にさせた後、ハリーはおっとり刀でカレンの病室がある10階へ帰る。
しかし、そこにあったのは氷漬けの世界だった。
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ジョンを探すハリー。
辛うじてジョンは生きてはいたが、呪術対決では負けてしまった。
ミスカマカスは結界を完全に破り、どこかに姿を消していた。
ハリーはジョンを連れて、取り敢えず上階に避難しようとする。
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そこにミスカマカスが現れ、「野のマニトウ」の力を借り、吹雪を起こして二人に襲いかかるのだ。
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苦し紛れにそこにあったタイプライターを投げつけるハリー。
ところが何故かこれが効果があったのだ。
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命からがら上階へと退避するハリーとジョン。
上階でジョンの治療を行いながら話をするが万策尽きた、と言うような感じであった。ハリー以外は「やはり警察を呼ぶべきなのでは」と言う感じになっていた。
ジョン曰く、「俺達は負けたんだ」と。
「山、風、雨の精霊を全部試した。でも通用しなかった。」
と。
そこに地震が襲いかかる。
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地震がおさまった後、ジョンが言う。
「これは地震じゃない。これがわたしの畏れていた事なんだ。ミスカマカスは旧支配者(※5)を呼び出してきた。」
「旧支配者って何だ?」
「悪魔、ルシファー、サタン、何とでも呼ぶがいい。」
「そいつを倒す方法はないのか?」
ハリーはミスカマカスにタイプライターを投げつけ「効いた」事に目を付ける。
「それは機械の精霊が効いたのだろう。」
「ちょっと待った。」
ハリーは担当医のオフィスに備え付けてるオフコンに目をつけ担当医に尋ねる(※6)。
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「この病院にはこういう機械はどのくらいある?」
担当医は答える。
「そういう研究用の機械はたくさんある。レントゲンやコンピュータ。小さな町くらい賄えるだけの発電機もある。」
「全部一気に点ける事は?」
「可能だよ。そこの端末からね。」
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ハリーは再びジョンに向き合う。
「機械にも精霊がある、って言っただろ?」
「ああ。」
「もし、病院中の機械の精霊を集めて、それらをぶつければ・・・。」
少し考えるジョン。そしてこう答える。
「可能だよ。多分可能だ。ただ一点・・・・・・。」
「何だ?」
「機械のマニトウも我々に敵対するかもしれない。」
しかし、ハリーは「それしか手がない」とジョンを説得する。
そして担当医は「手伝うぞ」と言い出す。
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作戦の決行はキッカリ5分後となる。
ハリーとジョンはミスカマカスとの最後の決戦の為、再びカレンの病室へと向かうが、そこは凄まじい事になっていた。
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「旧支配者」を呼び出した為、宇宙空間になっていたのだ。
ジョンは「幻影だ」と断じるがミスカマカスの背後に「何か」がある。
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ジョンは「旧支配者だよ」と言う。
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その時、5分が過ぎ、担当医が病院の全機械のスイッチを入れる。
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ジョンは「機械のマニトウ」に呼びかけるが彼らは応じない。ジョンとハリーは吹き飛ばされてしまう。
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ジョンは言う。
「無理だ。出来ない。機械のマニトウは来ない。彼らは白人の精霊なんだ。」
激昂したハリーがミスカマカスに啖呵を切る。
その時、機械のマニトウが反応し、カレンに乗り移ってミスカマカスと「旧支配者」に攻撃を仕掛けるのだ・・・・・・。
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そして、乳首が上手い具合陰になってて見えないのだ・・・・・・(謎
さて、このラスト、一般には「それまではホラーだったのに最後はスターウォーズだ」とか言われて失笑モノ、とされるが、白人が作り上げた「機械」の精霊はアメリカン・インディアンの呪術師の言う事を聞かない、とか、400年前の悪霊でも新しく登場した「機械」の精霊には弱い、とか、割とロジックはキチンとしてて、ストーリー的には納得のいく展開だと個人的には思っている(ホラーは不条理ではなく、本来、因果関係がハッキリしてるロジカルな物語である)。
繰り返すが、特撮予算があまり取れなかったんだろうな、とは思うがストーリーは悪くない映画だと思う。オススメ。
※1: ちなみに、僕はアニオタと違って、庵野秀明と言う監督を全く評価していない。
毎回大風呂敷を広げては伏線は回収しきれずに話は破綻するし、いっつも描く事は「自分探し」である。良くも悪くも90年代を象徴する「ダメな監督」だと思っている。
しかも彼は音楽センスが0である。クラシックやそれに類する劇伴を使えばイイ、ってもんじゃない。非常に安直な音楽ばっか使って正直辟易する。
(根本的に、彼の作品の「劇伴」は音楽がどーの、じゃなくって全部パロディに立脚してて、そこから一歩も出てないのだ)
実写映画「キューティハニー」で、ハニーがおバカキャラになった上にハニーまで自分探しをしてた暁にはひっくり返ってたものである。面白かったのは冒頭10分程度程。「こんなしょーもない映画しか撮れないのか」と正直言って憤慨してた。
そう、僕の評価では「庵野秀明と言う監督はマトモなエンターテイメントは撮れない監督」なのだ。
そんな彼がゴジラを監督する、と聞いた時、
「ゴジラが自分探しして日本中放浪でもすんじゃね?」
とかなり冷めた事を考えていた。
しかし、蓋を開けてみると、シン・ゴジラはメチャクチャ面白かった。個人的な意見ではゴジラ映画としては最高傑作なんじゃねーの、とまで評価が高くなった。過去の庵野作品の評価を全てぶっ飛ばした、と言って良い。
っつーか、過去の作品が全てダメ、でも傑作を撮る可能性はいつでもある、ってこったな。もちろん、次回作が面白いかどうかは知らんが。
いずれにせよ、どんなダメな監督でも生涯でたった一本だけでも傑作を撮る可能性はある、ってこった。
※2: 実はこの前後で初めて手塚治虫のブラックジャックの単行本を読んだと思う。
ピノコ初登場の回、「畸形嚢腫」を読んだ時、「あれ、これマニトウが元ネタ?」とか思ったもんだ。さすが手塚治虫、映画もあまねく観てるんだなぁ、とか感心したモンだが。
でもこれは勘違いだった。マニトウの原作小説が上梓されたのが1976年。一方、ピノコの初登場は週刊少年チャンピオンで1974年の事なのだ。
なんと、似たようなコンセプトで、ブラックジャックの方が2年も早い。
こういう素っ頓狂なコンセプトで話を描ける、ってのが手塚治虫の天才性の怖ろしいトコロなのである。
※3: 実在のアメリカン・インディアンの族名を元にしてるが、実際の彼らが住んでるのはメリーランド州らしい。
※4: 演じてる役者はマイケル・アンサラって人でインディアン役を良く演じてたらしいが、実は彼は血統的には全くアメリカン・インディアンと関係がなく、実際は中東系の血筋らしい(笑)。
※5: The Great Old One。聡い人は気づくだろうが、クトゥルフ神話のアレである。ここに来て、この映画、ビミョーにクトゥルフが混ざってきた。
※6: これでCP/Mが動いてたのかどうかは知らない(笑)。