【今週末はどこに行こう?】今週末行きたい 展覧会・イベント

今週末行ける、オススメの展覧会やアートイベントをご紹介しています。
(関東地方・現代アート中心です。)

どこまでが現実? ー Rhizomatiks Research×ELEVENPLAY「border」を体験してきました!

2016年03月07日 | アート・写真レポート

昨年の紅白歌合戦でPerfumeのライヴにCGをリアルタイムで重ねたり、一昨年はドローンと一緒にダンスをしたり…
これまでに見た事がないようなパフォーマンスを演出してきたRhizomatiksが手がける新しいパフォーマンス「border」が行われるということで、山口情報芸術センター(YCAM)にいってきました!

  「border」@山口情報芸術センター(YCAM)


昨年末に青山のスパイラルホールでプレビュー版が行われたパフォーマンスの完全版です。青山の時は3日とも仕事で行けず(泣)観るのは今回が初めて。さて、どんな作品なのでしょうか…?!

(会場の山口情報芸術センター(YCAM)。図書館なども併設され賑わっていました。)

 

■ “現実”と”映像"の区別がつかなくなる…?!border「体験」!

「体験」「鑑賞」に分かれた今回のパフォーマンス。まずは「体験」から。

荷物は全て受付に預け、説明を受けた後にステージへ。無線で動きを制御されたパーソナルモビリティ「WHILL」(電動の車椅子のような乗り物です)に乗り込みます。

カメラ付きのヘッドマウントディスプレイ(HMD)とヘッドホンを装着して黒いガウンのような衣装を着けます。ヘッドマウントディスプレイの中は、カメラを通した現実の風景に、CGの風景が重ねられたAR(拡張現実)の空間。頭の動きに合わせて景色も動くのでキョロキョロ…

 

そして、演出振付家MIKIKOさんが率いるダンスカンパニーELEVENPLAYのダンサーさんたちが目の前を通り過ぎていきます。

目の前に「border」というタイトルが浮かび上がり、パフォーマンスがはじまります。

HMDを通してみる風景が、VR(仮想現実)とAR(拡張現実)で次々と切り替わり、自分の動きに合わせて風景が追従していくので、どこまでが現実でどこからがCGなのかわからくなって頭が混乱してきます…
目の前のダンサーさんも現実かどうかわからなくなってきたところで、ふっとダンサーさんの香水の香りで、「あ、本物だ!」と現実に戻ってきます。

目の前のオブジェが角柱から円錐、球体へ次々と形を変えていったり、WHILLが動いて柱にぶつかる!と思ったら目の前で消えたり、床が突然消えて宙に浮かんでいるように感じたり、突然ダンサーさんの衣装が変わっていたり…

夢の中のような出来事が目の前で次々と起こるのですが、ダンサーさんが時折体に触れてくれることで、また現実に戻る… 夢と現実を行き来するような不思議な体験です。

そして何より目の前でELEVENPLAYのダンスが見られて、CGの映像の世界も美しくて… 圧倒されたまま本当に「夢のような」約10分間があっという間にすぎていきました…

 

■ 「体験者」も「体験者の視線」も作品の一部? border「鑑賞」!

続いて、ステージより少し高い位置にある鑑賞スペースから「鑑賞」

「さっき見えたものは、本物だったんだろうか?」「動き回っているように見えたオブジェクトは本当に動いていたのかな?」と、「不安」のような感覚を覚えます。

ステージが始まると、前方のディスプレイには鑑賞者から見える視界が投影されます。

ここではじめて気づいて驚いたのは、
「体験」時には自分が一番近くで鑑賞しているように思っていたのに、実は全体像が全く見えていなかったこと

WHILLによって動きが異なり、ダンサーのパフォーマンスも対照的ではないので、人によって見えるものが全く違っていたということ

「体験」ではARとVRが切り替わり、一部は全く見えておらず、ライヴでありながら目の前のパフォーマンスが「編集」されていたということ。

 

さらに、ステージ上では自分が”鑑賞する側”だと思っていたのに、HMDと黒いマントを着けて個性がなくなり、制御されたWHILLで動き回る「体験者」は、外から見ると「パフォーマー」の一人になっていたり、
HMD越しの視点も鑑賞者から観られることで、「観る側」ではなく「観られる側」になっていることも驚きでした。

「体験」→「鑑賞」という段階を踏むことで、一般的なパフォーマンスを見るのとは全く違う、「観ること」の感覚を揺さぶられるような体験でした。

一方で、ELEVENPLAYのダンサーさんと柱状の白いオブジェクト、オブジェクト化した黒い「体験者」とのダンスはパフォーマンスとしてとても美しくて、写真を撮るつもりでいたのに結局ずっとパフォーマンスに観入ってしまいました…

(終了後に「鑑賞」ゾーンでもう一度拝見させていただき、その際に写真は撮影しました。それでも情報量が多すぎて観きれず…何度でも観たくなる作品でした。)

 

■「体験」〜「鑑賞」を終えて

ということで、「体験」「鑑賞」を通しで体験してみたのですが、このパフォーマンス、「体験」「展示」どちらかだけでも十分面白いです。でも、「体験」→「鑑賞」の順に通しで体験することで、感じること・考えることが掛け合わせで増大したように感じました!

「鑑賞」のところで書いた
  自分の目を通して見たものが本物だったのかという不安感とか、
  目の前で観ているはずの景色が誰かに「編集」されていた感覚とか、
  「観る側」「観られる側」のスイッチとか…
「体験」「鑑賞」のふたつを通して完成するパフォーマンスだったんだなぁと感じました。

後から同じステージを「体験」した人と話すと、やはり見えていた景色が全然違って、同じステージを観ながらも個別の鑑賞体験になっているようだったのがまた面白かったです。

だから「一度見たからもういいや」じゃなくて、また違うWHEELで「体験」したくなるし、ステージの中にたくさんの魅力があるから、また「鑑賞」もしたくなる。

とてもクールだけど、観た人の心を強く揺さぶるようなパワーを持った作品でした。

なお、ステージは2日間で終わってしまいましたが、3/4からは、「border installation version」として、展示がはじまるそうです。このステージがどんなインスタレーション作品として生まれ変わるのか…?こちらも気になります。

「border」ー2016.02.27@山口情報芸術センター[YCAM]

(映像も一部なら公開OKのようだったので、撮影した動画を短くまとめてみました。雰囲気だけでも伝われば良いのですが…!)

*******************

■DATA■

 「border」@山口情報芸術センター(YCAM)


開催日時:2016年2月27日(土)〜28日(日)
各日18回公演
会場:山口情報芸術センター(YCAM) スタジオB
料金:体験+鑑賞:一般4500円、鑑賞:500円(当日券のみ)

 

■ border installation version

会期:3月5日(土)〜5月8日(日)の間の土日
時間:12:00〜18:00
会場:山口情報芸術センター(YCAM) スタジオB
料金:参加無料


コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 今週末行ける展覧会・イベント【3/5(土)... | トップ | 今週末行ける展覧会・イベント【3/12(土)... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
うわぁ! (みやび)
2016-03-08 19:12:06
体験したいです~!!
北海道では無理でしょうねぇ・・・

でも、写真あり動画あり、とっても魅力あるイラストあり、そしてとても文章がお上手、ときているので、
行けないけれど、かなり迫力ある面白さが伝わってきて、楽しませていただきました!
ありがとうございます
返信する
>みやびさん (PLAstica.)
2016-03-09 21:08:59
今回もコメントありがとうございます^^
山口だけじゃなくて、いろんなところで体験できるといいんですけどね>_<
でも、一昨年の札幌芸術祭では確かYCAMで制作された坂本龍一さんの作品が展示されたり、真鍋大度さんの作品も展示されたりしていたので、ひょっとしたら来年見られたりするかも?!ですね。

ブログについて嬉しいお言葉ありがとうございます><とても励みになります!
返信する

コメントを投稿

アート・写真レポート」カテゴリの最新記事