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『ペリリュー;楽園のゲルニカ』第1話を読んで

2021年09月02日 | 折々の読書



あれから76年も経つと、戦後生まれの人は歴史に疎くてもいいようなことになっていて驚いてしまうのですが、私は戦後生まれだけれど、激戦があったペリリュー島は知っていました。もちろん、本などで読んだ範囲内で詳細を知っているわけではありません。南方の島々が激戦地となったのは、それらを拠点に沖縄、日本本土上陸のルートが想定されていたためです。そのため、日米が人的、物的戦力を投入した結果、大きな犠牲が払われました。

この漫画の主人公もペリリュー島に配属され圧倒的な敵と渡り合うことになります。空爆、艦砲射撃などで痛めつけられ、上陸後は機械化されたアメリカ軍に蹴散らされます。あっけなく死んでゆく戦友たち。また、敵兵の死も目撃することになります。南の楽園は非情な戦場と化します。彼は戦い抜くこと、いや、生きていくことができるのでしょうか。


戦争を表現する場合、漫画はちょうどよいメディアなのかも知れないと思いました。映画では生々しすぎる、文学では暗すぎる、絵画では嘘が混じると言えないことはないと思います。
この漫画の場合、簡略な絵だからこそ戦争の生々しさを緩和するようでいて、実は読者の想像力に働きかけ主人公たちの置かれた想像を絶する世界を再現してくれているのだと思います。

のほほんとした主人公は、あの当時、現実にはありえないかも知れません。しかし、漫画家志望で戦争にはまったく向かないであろう、平凡な、ちょっと気弱な普通の人の視点は、戦争を知らない人でもすぐにストーリーに没入することができるでしょう。また、彼のような人物の視点で描かれることではっきりするものがあるのではないでしょうか。普通の人が、死ぬことが普通である世界に放り込まれる。そのこと自体の恐ろしさ。


これから折を見て読み進んでいこうと思っているのですが、表紙(上の画像)を見ていて、なんとなく、現在の日本を象徴するかのように見えてきてしまいました。
国破れて山河ありではなく、国乱れて惨禍あり。国民(兵士)は病み、疲れ、経済・産業はボロボロ(ゼロ戦の残骸)。このままでは、本当にこの絵のとおりになってしまうのではないか。
コロナで自宅療養って玉砕と同じ? せめて、野戦病院くらい作れば? 存亡の危機なのに大本営は権力争いに明け暮れる... あの時代から何が変わった?

武田一義著『ペリリュー;楽園のゲルニカ』第1話.白泉社、2018年7月刊.


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