コロナの世の中、少しは関連の本を読もうと思い、我孫子での作品ということもあり志賀直哉の短編『流行感冒』を読むことにしました。普段は白樺派などには無縁な生活を送っているのですが、まあいいか(笑)。
なお、この作品は、本の帯にあるようにNHKでドラマ化されBSで放送されました。ご記憶の方も多いことと思います。BSはないので私は観ていません。(しかし、岩波もこんな帯を付けるようになったか...)
この作品は、我孫子(千葉県)時代の志賀直哉一家がモデルで、私(志賀)と妻と幼い二女佐枝子、使用人の石ときみが主な登場人物です。二人の使用人は近傍の娘です。
手賀沼畔で幸せに暮らしていた一家にも流行感冒(スペインかぜ)が迫ります。都会育ちであり、かつ、幼い長女を喪ったばかりの主人公は過敏と思えるほど警戒します。ところが、田舎社会はのんびりしたもので、石は我慢できず芝居見物に出かけてしまいます。主人の言うことを聞かないうえに、みだらに自分の子に接触する石に「私」は不快感を募らせます。石は田舎の娘で、素朴ですがふてぶてしいところがあります。そうこうするうちに、よりによって主人が罹患してしまいます。家庭内クラスター発生に一家はどうなるのか。
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これ以上は差しさわりがありそうなので書きませんが、流行感冒が田舎社会やひとりで焦燥する文士をあぶりだします。それとともに、登場人物たちの心模様が簡潔なタッチで描かれます。移り住んだ田舎にまで拡大して来る感冒に対して為す術がないのは今日とあまり変わりがありません。
神経質、狭量な都会人に対し無神経とも思える石の言動ですが、私には分かるような気がします。都会人との対比が物語に奥行きを与えているように思います。
私は読後、小津映画を観た後の感じと似たものを感じました。さらりと描いていてかえって心を動かされるのが共通しているように感じたのです。モノクロのシーンが浮かんで斉藤高順の音楽が聞こえるようでした(笑)。
そこで、調べてみると小津は志賀を大変尊敬していたことが分かりました(Wikipedia)。私は文学にも映画にも疎いのでよく分かりませんが、志賀直哉の世界が小津監督の映画にも投影されているのかな。
志賀直哉著「流行感冒」(『小僧の神様;他十篇』[岩波文庫、2021年3月刊]所収)
※正義派、清兵衛と瓢箪、城の崎にて、焚火、真鶴など全11編を収録.
NHKのドラマ見ました。(https://blog.goo.ne.jp/hannpa2018/s/%E6%B5%81%E8%A1%8C%E6%84%9F%E5%86%92)とても良かったです。
実は原作はまだ読んでいません。ドラマは本木雅弘はじめ役者もいいし、ともかくていねいに作ってある感じがしました。
そういわれると小津映画のイメージがあるかも。
うちは昨年BS付けない決議がなされたので見ることはできませんでした。総合で番宣していたので悔しかったですね。
志賀と小津の関係を知ると文学と映画の面的な関係が面白く思いますが、まあ、あまり深く追求しない方がいいような(笑)。。
クラシック音楽でもこういう関係は大事なのでしょうが、もう手に負えないです。。
私も毎日のように腰痛に悩まされています。せろふえさんもどうぞお大事にしてください。