サキの短編集を読んだ。英語学習者用の1000単語までの要約版だ。
サキは遠い昔に『開かれた窓』を読んだ記憶があるだけ(もちろん,日本語)だ。ストーリー展開が面白かったのとイギリスの邸宅がうらやましかったのを思い出す(笑)。
今日の本の短篇も動物と子供がからむ不思議な物語で,夢見がちな子供や大人との少々残酷な世界が描かれている。
それもそのはずで,巻末の作者についての短い解説には次のように書いてある。1870年にビルマに生まれ,母が死んでからはイギリスで叔母達に養育されたが幸福なものではなかった。1893年にはビルマへ従軍し負傷してイギリスに戻り,ロンドンで新聞記事を書きながらSakiとして作家活動を始めた。しかし,それも束の間,第1次世界大戦に参加し1916年,頭を撃たれて戦死してしまう。
彼の屈折した生い立ちと戦争体験が一連の残酷な物語を生んだのかと納得した。この本に収録された4編もそれが反映されたものばかりだ。厳しい叔母に隠れて少年が物置で密かに育てている野生のイタチとの顛末を語ったSredni Vashtar,猫がしゃべり出すTobermoryの他に,The Story-Teller, Gabriel-Ernest, The She-Wolfの全5作品をやさしい英語に書き直して収録。中学英語で十分楽しめる。
■Saki, Tooth and claw; short stories. retold by Rosemary Border. (Oxford bookworms library) Oxford University Press, 2000.