かりんとう日記

禁煙支援専門医の私的生活

お元気ですか?

2005年03月31日 | サポーターの心得
「ママの遺影のバックは桜なんですよ。」

昨年の今日、肺がんで亡くなった晴美ちゃん(33)の旦那様が、わざわざ病院に来て下さった。
晴美ちゃんは一見、純朴な高校生という感じの女性だったが、3人の子供のママでもあった。
とってもとってもがんばりやさんだった。
むしろ旦那様のほうが涙もろく、いつも晴美ちゃんが彼を励まし、支えていた・・・そんな感じだった。

「まんなかのお姉ちゃんの小学校入学を見届けるまではがんばる」が口癖だった。
でも結局、入学式まで待てずに、桜の花に見送られ、静かに逝ってしまった。
そのお嬢ちゃんも、もうすぐ2年生。
“お兄ちゃんと弟の世話が大変なのよ”と、すっかりお姉ちゃん顔で話してくれた。

晴美ちゃんはタバコを吸わない人だった。
でも、お祖父さん、ご両親、妹、そして結婚した相手、彼女を取り巻くまわりのすべての人が、喫煙者だった。
受動喫煙による肺がんが晴美ちゃんの命を奪ったのは確かだ。

実は不思議なことに、10年前の桜の季節にも、同じく33歳の女性患者さんと悲しい別れをしたことがある。
彼女もやはり、晴美ちゃんと同じ境遇だった。
肺がん治療医として、こういう患者さんとの別れは、最も心痛む。
悔しくもある。

私を禁煙サポートという仕事へ導いてくれたのは、彼女達だと思っている。
タバコのけむりのないむこうの世界で、彼女達は元気に暮らしているだろうか?







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