年4回発行している当院の広報誌。
昨年から、垢抜けた感じにリニューアルされた。
公的病院でも、法に触れない可能な範囲で広報をしていかないと、患者獲得競争に勝てず、存続が危ぶまれる時代になった。
というわけで、病院側も広報に力を入れるようになり、広告業界に興味を持っているという総務課のNさんが担当窓口になり、病院専属のカメラマン氏の力量も発揮されて、なかなかいい感じの広報誌になってきたと思う。
来月号には、禁煙外来の紹介ページが掲載されることになった。
禁煙外来は18年前からやっているが、やっと病院公認になった気分である。
これまでの努力が報われた気がして、感慨深い。
先週末、休み返上してがんばって原稿を書き、提出した。
ところが、2日後、Nさんからダメ出しされた。
「先生の禁煙治療への熱意はとてもよくわかるんですが、マーカーをつけた文章は、病院の意向ととられると困りますので・・・」
見ると、「喫煙者の多くは、ほんとうはやめたいと思っている・・・」といった文章や、「タバコは薬物・・・」という言葉の部分に緑色のマーカーで線が引かれていた。
喫煙者の6-7割は、本数を減らしたりやめたいと思っているというデータは多くの研究で示されている。
ならば、引用文献を示せばよいのか?
いや、どうも、そういった問題ではないようである。
編集長であるNさんに、事の真意を聞いた。
「(小声で)いまだにやめない輩がうちにもいますよね。自分はやめたいとは思っていないとかって言われても困りますし。先生の禁煙への熱い思いはもう少し抑えていただいて、治療内容の紹介を前面に出すようにしてください」
そういうことか。
恥ずかしながら、当院のトップは喫煙者なのである。
直接クレームを言われてはいないのであろうが、組織のトップへの気遣いが働いた結果のダメ出しなのであった。
忖度した広報部長F医師からの指示であるのかもしれない。
公認されたなどと、喜ぶのはまだ早かった。
私はやっとスタートする選手として名前を呼ばれただけであり、しかも、フライングしそうなところを、「まあまあ落ち着いて、どうどうどう」とマネージャーから背中を撫でさすられたのであった。
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