スロバキア、タトラ山脈の麓より

スロバキア人の夫と2人の娘と私の生活
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不公平

2019-12-17 | 育児
このあたりでは幼稚園の年長さんで2カ月(週1回)ほど、小学校3年生で1カ月半ほど(週3回ペース)水泳の授業があります。各学校、幼稚園にプールはなく、町の屋内プールへこの地区の幼稚園・学校からそれぞれ時期をずらし割り当てて行き、ネルカの学校もサクルカの幼稚園でもちょうど今水泳の授業があります。なんでこの寒い時期にと思いますが、全ての幼稚園・学校が一か所に来るわけですから仕方ないですね。同僚の子供の学校は4月にあるそうなので、学校によってどの季節になるのかは運なのでしょうか。

ともあれ、ネルカは一度も風邪もひくことなく全部出席し、明日が最後の水泳の授業です。
最終日はテストとのこと、まだ泳げないと半べそかくネルカを日曜日、プールに連れて行きクロールの特訓をしました。

上級グループと初心者グループがある中、ネルカは初心者のグループにいます。ネルカもスイミングスクールに通わせてあげたかったのですが、スイミングは平日の午後早い時間に隣町であるため、共働きの我が家は送り迎えができず通わせることができませんでした。そんなわけで9月から2カ月ほど日曜日のコースに子供二人を通わせましたが、あり得ないことに2カ月のレッスンで水に飛び込んで浮き具を使って泳ぐ以外に何も教えてくれず、二人とも全くの金づちのまま終了しました。よっぽど料金の払い戻しを請求しようかと思いましたが、スイミングスクールの経営者は知り合いだったので断念しました。
そんなわけでネルカは蹴伸びしかできない状態で初心者のグループに入りました。

日本の学校では担任、もしくは体育の先生が水泳を教えていましたがこちらは水泳専門のコーチがしっかり指導してくれます。ネルカに聞いてみるとどうやらこの一カ月の集中レッスンで全くの初心者がクロールの息継ぎができるようになるまでするのが目標のようです。先週の水泳後、「週明けの水泳最終日にテストがあるのだけれど息継ぎが全くできず、5メートルも泳げなかった」としょんぼりして帰ってきました。そして「練習したいから週末にプールに連れて行ってほしい」と。それで「大丈夫!絶対に泳げるように教えてあげる!」と日曜日、二人でプールに行ってクロールの練習をしました。学校で習った通りにしてごらんとさせたところ、ビート板キック(私よりも早く50メートルを泳ぎきるほど!)も、ビート板を使ってクロールの手と息継もできるのに、何も使わず泳ぐと確かに溺れています。これは今日一日で泳げるようになれるかな正直私が不安になりましたが、顔には出さず、ひとつひとつ動きを確認して特訓です。2時間の券で入場したものの、ネルカは泳げるようになるまで帰る気はありません。2時間目いっぱい使って練習し、最終的には息継ぎ6回ほど、18メートルくらい泳げるようになりました。

泳げるようになった!

ネルカは嬉しくて嬉しくて夜眠れなかったほどです。

今日、火曜日は水泳テスト前の最終練習日でした。「日曜日に特訓したから初心者のグループで一番になれるかもしれない!」意気揚々と朝出かけて行ったネルカ、午後、学校へ迎えに行くと様子が変です。イライラしてサクルカに八つ当たりしています。「プールどうだった?泳げた?」と聞いても「泳げた。息継ぎ10回できた。でも全然良くなかった。」と。

じっくり話を聞くとこういうことでした。

練習中他の女子はコーチが見ていないと50メートルプールを往復する代わりに、途中で休憩し、泳いでいないのがバレないよう適当に時間を稼ぎ、半分も行かないところで折り返して来るのだそうです。ネルカはまじめに泳いでいたので、後半クロールでどれだけ泳げるか見せるときにはもう息が上がって25メートル手前までしか泳げなかったのだそうです。一方他の女子はというと、ズルして体力温存していた上、これまたコーチが目をそらした隙にコースロープに掴まって休憩し、また泳いだのでネルカよりも距離が長かったのだそうです。結局誤魔化さずまともに泳いだのはネルカと数人の男子だけだったそうで、真面目に泳いだばかりにみんなより距離は短く、ネルカはやるせない気持ちで帰ってきて泣きました。

こんな子供の時からセコいことをという気持ちと、またかという気持ちで私もガックリと力が抜けます。順番を守らないとか、先生に嘘の告げ口をするとか、さぼって誤魔化すとか、人の手柄を自分のものにするとか、幼稚園でも学校でも、マルツェルの職場でも、週末に出かけたHrebienokのケーブルカーチケット売り場でも、この手の愚痴は家族から日常的に聞きます。

不公平さに涙するネルカの気持ちはよくわかります。「努力は必ず報われるから」と言ったところでその地道な努力を評価してもらえない現実があるのも事実です。でもやっぱりネルカに「じゃぁあなたもズルしなさい」とは言えません。

きちんと練習したものはしっかり自分の力となって残るから、そんな子たちのことは気にしなくていい。明日のテストは自分なりに頑張りなさい。そうできたらママは嬉しいそれだけ言いました。

子供がこうやって振る舞うのはきっと親にそう育てられているからでしょう。そしてこうやって育てられた子どもが将来社会に出ていく。先日の忘れ物の一件に続き、またもなんだか腑に落ちない出来事でした。






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