□本日落語四席。
◆桂かい枝「寝床」(NHK大阪放送局『とっておき!朝から笑タイム』)。
NHK大阪ホール、令和5(2023)年3月9日収録(第433回「NHK上方落語の会」)。
◆春風亭一之輔「子は鎹」(NHK-BSプレミアム『超入門!落語THE MOVIE』)。
新宿末廣亭、令和5(2023)年3月26日。
落語を語りと同時に映像でも見せるというこの番組、本来、落語は演者が語ったものを、客が自身の脳内で映像化するイメージの芸だとするコンセプトに反する企画だが、なるほどねと思うところもある。
今回の場合、亀吉が親父からもらう50銭銀貨だ。これは、さんざん今まで聞いてきたけれど、そもそも50銭銀貨など使ったことも見たこともなかったので、ただもやもやしたものを思いうかべるだけだった。
それが、今回この番組の映像で初めて50銭銀貨を、嗚呼こういうものなのかと知った。NHKはそういう古銭も、小道具として各種とりそろえているのだろうか。まさか作っているわけではあるまい。いや、これ、もし作ったとしたら、貨幣偽造で罪に問われるのだろうか。もう一般に流通していない貨幣・紙幣は偽造しても罪にならないのか、ちょっと気になるところである。
さて、一之輔は、亀吉が親父からもらった小使いで靴を買うということにして演じていた。ふつうここは鉛筆を買うというところだ。これはどうしてだろう。亀吉は自分はいつまでも下駄を履いているのは嫌なので靴を買いたいと言っていた。
「子別れ」は、『増補 落語辞典』や川戸貞吉『落語大百科』によると、そもそも幕末に活躍した初代春風亭柳枝の作とされている。ということは、鉛筆も靴も一般にはなかった時代だから、これははじめからあったプロットではないことになる。
川戸の書によると、原型に手を入れたのが明治期の落語家三代目麗々亭柳橋だとあるから、この柳橋が鉛筆の型を入れたのだろうか。
ちなみに、『口演速記 明治大正落語集成』には、大正8年の初代柳家小せんの速記を載せるが、ここではただ50銭銀貨を与えたというだけで、亀吉はその金で何を買いたいなどという台詞はない。さらに、同書で、明治期の三代目春風亭柳枝の速記では、小使いの額は記されず(亀吉はただ「前は1銭もくれなかったのに……」と言っている)、やはり買うものには何もふれていない。
してみると、鉛筆買いたいはもっとずっとあとの誰かが入れたのだろう。
◆桂宮治「権助魚」(NHKラジオ第一『真打ち共演』)。
東京渋谷NHK放送センターCR505スタジオ、令和5(2023)年4月14日収録(4月22日OA)。
◆桃月庵白酒「四段目」(NHKラジオ第一『真打ち共演』)。
東京渋谷NHK放送センターCR505スタジオ、令和5(2023)年4月14日収録(4月22日OA)。
◆桂かい枝「寝床」(NHK大阪放送局『とっておき!朝から笑タイム』)。
NHK大阪ホール、令和5(2023)年3月9日収録(第433回「NHK上方落語の会」)。
◆春風亭一之輔「子は鎹」(NHK-BSプレミアム『超入門!落語THE MOVIE』)。
新宿末廣亭、令和5(2023)年3月26日。
落語を語りと同時に映像でも見せるというこの番組、本来、落語は演者が語ったものを、客が自身の脳内で映像化するイメージの芸だとするコンセプトに反する企画だが、なるほどねと思うところもある。
今回の場合、亀吉が親父からもらう50銭銀貨だ。これは、さんざん今まで聞いてきたけれど、そもそも50銭銀貨など使ったことも見たこともなかったので、ただもやもやしたものを思いうかべるだけだった。
それが、今回この番組の映像で初めて50銭銀貨を、嗚呼こういうものなのかと知った。NHKはそういう古銭も、小道具として各種とりそろえているのだろうか。まさか作っているわけではあるまい。いや、これ、もし作ったとしたら、貨幣偽造で罪に問われるのだろうか。もう一般に流通していない貨幣・紙幣は偽造しても罪にならないのか、ちょっと気になるところである。
さて、一之輔は、亀吉が親父からもらった小使いで靴を買うということにして演じていた。ふつうここは鉛筆を買うというところだ。これはどうしてだろう。亀吉は自分はいつまでも下駄を履いているのは嫌なので靴を買いたいと言っていた。
「子別れ」は、『増補 落語辞典』や川戸貞吉『落語大百科』によると、そもそも幕末に活躍した初代春風亭柳枝の作とされている。ということは、鉛筆も靴も一般にはなかった時代だから、これははじめからあったプロットではないことになる。
川戸の書によると、原型に手を入れたのが明治期の落語家三代目麗々亭柳橋だとあるから、この柳橋が鉛筆の型を入れたのだろうか。
ちなみに、『口演速記 明治大正落語集成』には、大正8年の初代柳家小せんの速記を載せるが、ここではただ50銭銀貨を与えたというだけで、亀吉はその金で何を買いたいなどという台詞はない。さらに、同書で、明治期の三代目春風亭柳枝の速記では、小使いの額は記されず(亀吉はただ「前は1銭もくれなかったのに……」と言っている)、やはり買うものには何もふれていない。
してみると、鉛筆買いたいはもっとずっとあとの誰かが入れたのだろう。
◆桂宮治「権助魚」(NHKラジオ第一『真打ち共演』)。
東京渋谷NHK放送センターCR505スタジオ、令和5(2023)年4月14日収録(4月22日OA)。
◆桃月庵白酒「四段目」(NHKラジオ第一『真打ち共演』)。
東京渋谷NHK放送センターCR505スタジオ、令和5(2023)年4月14日収録(4月22日OA)。