僕が桐朋学園の学生だった頃、酒をかわしながら、先輩に気になるひと事を言われた。
「秋津、お前はいいよなあ。お前、実家がお寺なんだろう。それならチェロがだめでも、食いっぱぐれることはないもんなあ!」と言われた。
この頃は、自分はソリストになることを、ただひたすら夢見てたし、ダメだったときの事など、全く考えたこともなかった。
しかし、おぼろ気ながらに、自分が長男なら寺を継いでいかなきゃいけないんだろうに、一生懸命やっても、いづれはお寺を継ぐ時期が来たら、チェロは辞めなきゃいけないなら、何だか先々暗雲が垂れ込んでいるような、いまいちすっきりしない空を見ている気がしていた。
また、先輩からどう見られているか知ることとなり、「どうして自分はお寺なんかに生まれたんだ。普通の家に生まれてたら、自分のやりたいように将来を考えられたのに」と、自分の生まれた境遇を卑下したりしていた。
つづく
「秋津、お前はいいよなあ。お前、実家がお寺なんだろう。それならチェロがだめでも、食いっぱぐれることはないもんなあ!」と言われた。
この頃は、自分はソリストになることを、ただひたすら夢見てたし、ダメだったときの事など、全く考えたこともなかった。
しかし、おぼろ気ながらに、自分が長男なら寺を継いでいかなきゃいけないんだろうに、一生懸命やっても、いづれはお寺を継ぐ時期が来たら、チェロは辞めなきゃいけないなら、何だか先々暗雲が垂れ込んでいるような、いまいちすっきりしない空を見ている気がしていた。
また、先輩からどう見られているか知ることとなり、「どうして自分はお寺なんかに生まれたんだ。普通の家に生まれてたら、自分のやりたいように将来を考えられたのに」と、自分の生まれた境遇を卑下したりしていた。
つづく