アジア映画巡礼

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正統派の愛の映画『画皮 あやかしの恋』

2012-06-26 | 中国映画

先日試写で見せていただいた『画皮 あやかしの恋』は、久々に見た至高の愛の映画でした。その昔作られた胡金銓(キン・フー)監督の『ペインテッド・スキン』 (1993/原題:畫皮之陰陽法王)がいまいちピンと来ない作品だったので、今回のリメイクも、顔の皮に絵を描いて被るところが見せ場のCG使いまくり作品かなあ、とか思っていたら、いい意味で予想を裏切られました。まずは、作品のデータをどうぞ。

『画皮 あやかしの恋』 (原題『画皮・Painted Skin』)  公式サイト

© EASTERN MORDOR FILM COMPANY LIMITED.ALL RIGHTS RESERVED.

(2008年/シンガポール・中国・香港/中国語/103分/カラー/シネマスコープ/字幕翻訳:島根磯美)

出演:ジョウ・シュン(周迅)、ヴィッキー・チャオ(趙薇)、チェン・クン(陳坤)、スン・リー(孫儷)、チー・ユーウー(戚玉武)、ドニー・イェン(甄子丹)

監督・製作:ゴードン・チャン(陳嘉上)
プロダクション・デザイン:シュー・リーコン(徐立功)
撮影:アーサー・ウォン(黄岳泰)
美術:ビル・ルイ(雷楚雄)
アクション監督:トン・ワイ(董〔王韋〕)
音楽:藤原いくろう
提供:マクザム、パルコ、テレビ東京メディアネット 
配給:太秦

8月上旬より有楽町スバル座ほか全国ロードショー

物語は、砂漠の中にある盗賊のアジトから始まります。盗賊たちが酒盛りをしている輪の中にいるのは、絶世の美女小唯(シャオウェイ/周迅)。ところが、盗賊の頭が彼女を抱こうとすると、とたんに小唯の手が頭の胸に伸び、頭はそこにくずおれてしまいます。

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その時、王生(ワン・シェン/陳坤)将軍率いる軍隊が盗賊のアジトを襲撃、盗賊一味を討ち果たします。王生はふるえている小唯を救い出し、一行に加えて都へと帰還します。小唯の美しさは兵士全員の心を捉えてしまいますが、王生だけは彼女に親切に接するものの、一向に彼女に心奪われた様子を見せません。王生の心は常に、最愛の妻佩蓉(ペイロン/趙薇)へと向いていたのでした。

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王生から事情を聞かされた佩蓉は、小唯のことを妹のように遇し、屋敷に住まわせて面倒を見ます。しかしながら、だんだんと夫に対する小唯の振る舞いが気になり始める佩蓉。そんな時、佩蓉をかつて愛していた勇士パン勇(甄子丹)がふらりと都に戻ってきます。彼は佩蓉が王生と結婚するとわかった時、軍を捨てていずこへともなく姿を消したのでした。パン勇は、泊まっていた宿屋で降魔師だという若い女性剣士夏冰(シア・ビン/孫儷)と知り合います。

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同じ頃都では、心臓を取られて死亡する、という殺人事件が頻々と起こるようになりました。実は小唯は狐の妖魔で、新鮮な人の心臓を食べていないとその美しさを保つことができないのです。小唯を一途に愛するトカゲ男小易(シャオイー/戚玉武)は、人の心臓を奪い、それをせっせと小唯のもとに運んでいたのですが、小唯は彼には見向きもしません。小唯は王生を愛するようになり、どうすれば彼を妻の佩蓉から奪えるのか、それで心がいっぱいだったのです。やがて小唯は王生の夢に入り込み、少しずつ彼を自分の魔の手にからめ取って行きます...。

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まず目を奪われるのは、主人公を演じる6人の俳優の美しさ。中でも、陳坤(チェン・クン)と戚玉武(チー・ユーウー)の美しさにはゾクゾクッとしてしまうほど。将軍姿のチェン・クンはりりしいのですが、私室での彼はほつれ毛が何ともなまめかしく、傍らにいる趙薇(ヴィッキー・チャオ)をしのぐほどの色気を感じさせます。一方チー・ユーウーは、トカゲ男という異形の存在ながら、その異形ぶりが際立つ衣裳とメイクが何とも魅力的。報われぬ恋に身を焦がす姿も哀れを誘い、つい肩入れしたくなってしまいます。あんまりカッコいいので、でっかい画像を付けてしまいました。チー・ユーウーのファンの皆様、とっくりとご覧下さい。

 

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このトカゲ男が活躍するシーンでは、トカゲ男は擬態が得意ということでCG使用が目立つのですが、それ以外は押さえた使い方で、キモの”画皮”シーンもごく控え目に一瞬だけ。映画の見せ場はむしろ、王生と佩蓉の夫婦愛、パン勇の片思い、小唯の激しくよこしまな恋情、トカゲ男小易の報われぬ愛、といったそれぞれの愛の姿なのです。こういっては何ですが、とてもゴードン・チャン監督の作品とは思えません。

武器オタクのゴードン・チャン監督作品らしく、ちょっと珍しい武器が登場したりもしますが、アクションシーンは要所要所に入っているものの、それだけの作品に終わっていません。美しい画面から迫ってくる愛の迫力とでも言いましょうか、それにどっぷりと浸れる作品です。

偶然だと思いますが、ジョウ・シュン、ヴィッキー・チャオ、チェン・クン、そしてチー・ユーウーは、全員が1976年生まれ。30代半ばの彼らは、今こそが旬という輝きを放っていて、『画皮 あやかしの恋』を実に見応えのある作品に仕上げています。間もなくやってくる夏休み、ぜひ『画皮』の美麗な世界に浸ってみて下さい。

<追伸> 中国語圏では、この夏『画皮 あやかしの恋』の続編が公開されるようです。『畫皮II 轉生術(Painted Skin: The Resurrection)』と題され、今回もジョウ・シュン、ヴィッキー・チャオ、チェン・クンの『画皮』トリオが主演。公式サイトはこちらで、ヴィジュアルを見てみると何だか思いっきり日本趣味のようですが、さて、どんなお話なんでしょうね。

そうそう、BSジャパンでは、ドラマ版『画皮~千年の恋~』も6月26日(火)から放送中。番組案内サイトはこちら。興味のある方は見比べてみて下さいませ。

 


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2 コメント

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チー・ユーウーの (shoko)
2012-07-03 23:56:25
美しい写真を、ありがとうございます!シンガポール映画「881歌え!パパイヤ」の後、なかなか再会できませんでしたが、去年「処刑剣」で、今年TBSドラマ「ムーンケーキ朋友」で、彼を見ることが出来ました。そして「画皮」もとても楽しみです! ドラマは4話まではいい加減にしか見ていなくて、今日5話を外出のため録画しました。後半でたっぷり彼が見れました。龍雲ロンユンという役でした。BSジャパンの番組サイトを見ましたが、主要6人の登場人物に入っておらず、あらすじも彼に触れていません。ダントツ美形イケメンなのに、なぜ!?
「さらば復讐の狼たちよ」も、ほめ上手のcinetamaさんの解説で、楽しみたいと思います。いつもありがとうございます。
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shoko様 (cinetama)
2012-07-04 09:19:09
コメント、ありがとうございました。チー・ユーウーの大判ヴィジュアルに反応して下さって、ありがとうございます! 貼った甲斐がありました。

先日マグザムの方にお会いしたら、『画皮』のトカゲ男がいい、というお話に続いて、「あのキャラはもっと描き込まれていたのに、時間の関係でカットされたのでは、と思う。トカゲ男が小唯に厭われ、遠ざけられたのに、最後に彼女を助けに戻ってくるのはなぜなのか、ドラマ版の方を見るとよーくわかる」と教えて下さいました。ドラマではトカゲ男は別人が演じていたと思うのですが、チー・ユーウーはドラマの方にも出てるんですね。知りませんでした。
映画をご覧になったら、ドラマとの比較など、またご感想をお寄せ下さいませ。
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