間もなく11月がやってきます。そして、11月1日(金)は、ヴィジャイ主演のタミル語映画『カッティ 刃物と水道管』(2014)の封切り日。インド映画ファンの皆さんは、ヴィジャイ主演作もすでにたくさん見ておられるでしょうが、この『カッティ 刃物と水道管』、私にとってはヴィジャイ主演作のベストスリーに入る作品です。やっぱり、監督A.R.ムルガダースはすごい!と言うべきか。彼がヴィジャイと組んだ『サルカール 1票の革命』(2018)も素晴らしかったですが、『カッティ 刃物と水道管』も同等かそれ以上の面白さ&完成度です。ヴィジャイファンでない方も、ぜひ劇場に駆けつけてご覧下さい。では、映画のデータと簡単なストーリー等をどうぞ。
『カッティ 刃物と水道管』 公式サイト
2014年/インド/タミル語/163分/原題:Katti கத்தி/字幕翻訳:
監督:A.R.ムルガダース
出演:ヴィジャイ(二役)、サマンタ、ニール・ニティン・ムケーシュ、サティーシュ
配給:SPACEBOX
※11月1日(金)より 新宿ピカデリーほかにて全国順次公開
© Lyca Productions
ここはコルカタ中央刑務所。ある男が脱走を試みた。看守のピストルを奪い、看守を撃ち殺して逃走する男。刑務所長たちはこれまで18回脱走を試みた囚人カディル(ヴィジャイ)に頼み、脱走囚人を追う先頭に立たせる。こうして無事、脱走囚人は捕らえられたが、どさくさにまぎれてカディルはまんまと逃げおおせたのだった。カディルは友人ラヴィ(サティーシュ)の所に現れ、バンコクに高飛びするので航空券や旅券を用意しろと言いつける。ところが、出発時に空港でかわいい女性アンキタ(サマンタ)に会ったとたん、カディルは高飛びをやめてインドにとどまることに。空港を出た時フライオーバー(陸橋)の上からカディルとラヴィが見たのは、ピックアップトラックが交通事故に遭い、男たちが運転していた青年を亡き者にしようとする場面だった。カディルはその青年を助けようとするが、何と彼は自分とそっくりの顔の男だった! 襲撃者を蹴散らし、青年を病院に運んだのだが、その後も不思議なことが次々と起こる。どうやら自分は、あのそっくり顔の青年と間違われている、と思ったものの、何だか黙っていても大金が懐に飛び込んできそうな気配に、カディルはにんまり。やがてカディルは老人ホームに連れて行かれ、ホームのみんなから「ジーヴァ坊ちゃん」と信頼される存在があのそっくり青年だったことを知る。しかし、そこには6人の老人の写真が飾ってあり、彼らは集団自殺したと知らされる。この老人たちに一体何が? やがてカディルは、彼らとジーヴァの物語を知っていくことになる....。
© Lyca Productions
ヴィジャイほど、二役(時には三役)をたくさん演じてきたスターはいないのでは、と思います。ある時は父と息子を、またある時は兄弟を、そしてまたある時には他人の空似を演じてきて、ストーリーの面白さの幅を広げてきたのがヴィジャイです。今回は「カッティ(ナイフ)」というあだ名を持つちゃらんぽらんなワルのカディルと、真面目な水文学(すいもんがく。英語ではhydrology。日本語としては聞き慣れない&見慣れない単語なので、字幕はちょっと工夫していただいた方がよかったかも。でも私は字幕仮ミックス版らしき動画をオンライン試写でみせていただいたので、本番上映用字幕では直されているかも知れません)の研究者で、老人施設で彼らに尽くすジーヴァとを演じています。ジーヴァ役の時は、頬を膨らませて敏捷性をそぎ落とし、純朴さを出すなどの工夫がしてあって、演じる二役の見分けがつくのはさすが。物語の中心はカディルですが、ジーヴァにも見せ場を作り、うまく両者をかみ合わせた脚本も、A.R.ムルガダース監督の手になるものです。ちょっと笑いを取りに行きすぎてるかな、と思う箇所もあるものの、3時間近い長さでも、全然だれるところがありません。
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アクションも見応えがあります。特に、コインを使ったアクションシーンは、よく考えてあるなあ、とうならされました。ソング&ダンスシーンも、アニルドの曲がまず斬新なうえ、本筋とは関係がない使い方のため、ここだけで完結してしまう世界観に彩られており、気分転換にもなって楽しいです。ひょいと、これらソング&ダンスシーンがまったくなくてもいい作品になっていたんじゃない? とも思ってしまい、いやいや、それはヴィジャイのファンが黙っていないだろう、と思ったりと、いろんな面で楽しめる作品でした。楽しいと言えばギャグも上出来で、サマンタの登場と共にパロられる『マッキー』(2012)は、この作品より前に公開されてヒットしたのね、と再確認。ムルガダース監督、S.S.ラージャマウリ監督がお好きなのかしら? いやいやいや、A.R.ムルガダース監督、なかなかの才人だということを再確認しました。
© Lyca Productions
ところで邦題に付いた副題ですが、『カッティ 刃物と水道管』とは、一体どんな意味だろう、と思いませんでしたか、皆さん。「カッティ」がナイフの意味で、主人公の二つ名でもあるため「刃物」はわかるのですが、「水道管」とは何でしょう? 日本だと、「冬期の水道管破裂」などとよく使われるため、あの家の外に立っている、蛇口が付いた姿の金属製の管を思い浮かべる人が多いのでは、と思います。最近は水を通すための管は塩ビ管も多くなり、イメージがだいぶ変わってきていますが、そんな想像をしながら見ていたら、どうもまったく別物のことを言っているのでは、と思うシーンがクライマックスに登場します。これが水道管? いや、それはちょっと違うのでは...。「導水管」という呼び名もあるようですが、あれは一体何と言えば、わかりやすくイメージしてもらえるのか??? 途中に、我々がイメージする水道管に似たものを武器にして主人公が闘う場面があるのですが、あれを示しての「武器は刃物と水道管」という意味だったのか??? おわかりになった方がいらしたら、コメントで教えて下さいね。
© Lyca Productions
サマンタもソング&ダンスシーンで美しい姿をいろいろ見せてくれます。最後に予告編と、それからソング&ダンスシーンを付けておきますので、ぜひ大画面で見直して下さいね。二度、三度と見てもあきない面白さの『カッティ 刃物と水道管』、インド公開時に日本でも上映できていたら、マスコミでも紹介してもらえたかも、と残念ですが、名作は色あせません。10年後になってしまいましたが、日本全国の皆さんに見ていただきたいです!
Kaththi - Trailer | Vijay, Samantha | A.R.Murugadoss | Anirudh | Official
Pakkam Vanthu | Full Video Song | Kaththi | Vijay, Samantha Ruth Prabhu | A.R. Murugadoss, Anirudh