これまで何回、「タミル語映画界の呼び名『コリウッド』は、チェンナイのスタジオがたくさんあった地区コーダムバーッカム+ハリウッドでできています」と説明したことか。そのコーダムバーッカムを自分の足で歩かなくちゃ、というわけで飛び込み取材みたいな形で行ってみました。事前にネットで、チェンナイにあるいろんなスタジオをチェックしたのですが、有名どころはAVMスタジオぐらいで、ともかくもAVM関連の所に行こうとウーバーオート(ウーバーが自動車と共に手配してくれるオート三輪車)に「AVM Studio」と入れて、そこまで運んでもらいました。
着いたのは、コーダムバーッカム地区の西側にあたる地区の、アルコット通りから入ったところ。大きなカーヴェーリ病院というのがあって、その横の道をどんどん入っていくと、左手に上の建物AVM Studiosが見えます。外から写真を撮っていると、守衛さんが近づいてきて不審者尋問、事務所に行け、と言われてしまいました。なかなか、チェックが厳しいようです。ドアを入った受付みたいなところは、AVMの創始者の写真などがあったのですが、受付の人が電話を掛けて女性の上司につなぎ、建物を外から撮るのはOKがもらえたものの、受付は写真NGだと言われました。
で、元来た道を戻ると、途中に「AVMガーデンズ」の文字が。AVMが寄付した公園かな、と入ってみたら、まるで映画のセットみたいな場所です。写真を2,3枚撮ってから事務所を見つけたので行ってみたら、ここはまだAVMの所有地で、イベントなどをやる会場ともなるため、部外者立ち入り禁止だったのでした、スミマセン。ナイショで内部の様子を少しお見せしましょう。1枚目の奥の方にある四阿の前にイスが山と積んであったので、最近も何かイベントをやったのでは、と思います。昔はここでソング&ダンスシーンなどを撮っていた雰囲気でした。
このほか近くには、AVM関連のいろんなスタジオがあり、その間に、別の小さなデジタル・スタジオと名のるものや、いろんな事務所&会社がわちゃっと集まっているようでした。また、AVMのミュージアムもあったのですが、開館は週末の金・土・日のみ、今回の滞在では行けそうにありません。残念!と思っていたら、主たる展示はクラシック・カーだという投稿をみつけたので、ま、行かなくてもいいか、と自分を納得させました。いろいろ探し回って歩いたら汗だくになり、お昼ご飯は近くで見つけたムルガン・イドリー・ショップで一休みを兼ねて。すると何と、ここにジガルタンダーがありました、それもオリジナル味のが! ラワー・ドーサーと共に、おいしくいただきました。
というわけで、コーダムバーッカム地区には映画関連の会社がいっぱい集まっているのはわかりました。しかし、やっぱり先達はあらまほしきかな、というわけで、以前にもお世話になった大手配給会社APインターナショナルのワードワーさんの元へ。コロナ禍直前から事務所をリノベして、やっと最後の段階なんだそうです。きれいな事務所で、息子さんとともに勤務中でした。
会社の中も案内して下さった上、「今日、11時にスーリヤ主演映画の撮影があるんだって。見るかね?」とオファーが来ました。「見たいです~~~」とお願いしたら、現場の知っている人にすぐ電話して、場所はプラサード・スタジオ、手引きしてくれるのはアラウッディーンさんという人、等を教えて貰い、連絡を待って、プラサード・スタジオまで行ってきました。
この奥で、撮影現場が組まれています。で、撮影禁止。『Surya 45』と仮に名付けられたこの映画は、ストーリーは全然わからないのですが、今日は火を使った撮影をするので危ない、気をつけて見学して、と言われました。大きな撮影場所には左の方にボクシングのリングのようなものが作ってあり、右側は何かの台の上にスーリヤが立ち、まわり三方には火が燃えさかる鉄の格子のようなものが。時おり正面の鉄格子の近くで火が爆発し、それで画面に変化が生まれます。すごく暑い上に、みんなマスク姿。スーリヤだけがマスクなしで演技しているのですが、修行者のような格好で上半身は裸に、何やら首飾りのようなものを付けています。モニター画面で見るとそれはそれはきれいに画ができていて、天井のライトを見上げたりして、いつも見ている暗さの中にヒーローが浮かび上がるシーンはこんなライティングで撮るんだ、と感心しました。外見は前の作品『Kanguva』のイメージにちょっと近いでしょうか。
で、いったん外に出て涼んでいると、コーディネートをしてくれたアラウッディーンさんが監督に何か言ってくれたようで、中に呼び入れられました。監督のRJ バーラージーという人は、ラジオのDJとかもやるマルチな文化人らしく、多分アラウッディーンさんが、「監督、あとで休憩の時に日本人の客をちょっとスーリヤに会わせてやって下さい」とでも頼んでくれたのでは、と思われるのですが、休憩時間になったら突如持っていたマイクで、「皆さ~ん、日本からお客様が見学に来ています。コンニチハ、アリガトウ、この人です」と私を紹介してくれ、拍手の中をスーリヤの前に行く羽目に。目の前2mぐらいのところに、あの精悍な顔が! 上がってしまいましたが、『ピターマガン』から彼の作品を見ていることや、『ただ空高く飛べ』は日本で公開されたもののヒットしなくて残念だったこと、弟さんのカールティも人気があること、ぜひ作品を持って日本に来てほしいこと等々けっこう一方的にしゃべってしまいました。いやー、ステキなお顔と態度の方で、感服しました。
ということで、コーディネートをして下さったアラウッディーンさん(上写真右)に感謝して帰ってきたのですが、帰りも行きたいところまで車で送って下さったりと、写真が撮れなかった以外はとてもありがたいスタジオ訪問でした。これも、ワードワーさんのご威光だと思います。これからも、日本におけるインド映画の公開に微力ながらお手伝いをしていきますね。最後に衝撃の事実を一つ。撮影現場では皆さんマスクをしていた(ほとんどが黒や地味な生地の布マスク)ので、私も持っていた使い捨てマスクをしたのですが、ホテルに戻って見てみると、何とマスクに真っ黒なすすが入り込んでいる!
こんな現場でスーリヤは演技をしていたのか。プロとは言え、本当に大変です。11月の公開作が見られるよう、またインドに...などと考えてしまったのでした。