ホテルのことばかり書いてしまいましたが、映画もちゃんと見に行っています。最初に見たのはいろいろ物議をかもしていた伝記?映画『Emergency』。女優であると共に映画監督でもあり、昨年の総選挙では国会議員にもなってしまったカングナー・ラナウト(よく名前のローマナイズに従って「カンガナー」と書かれますが、発音としては「カングナー」が正しいです)の監督・主演作です。「エマージェンシー」は「緊急事態」のことですが、政治的なことでは「非常事態宣言」のことを指す場合が多いです。インドでは、インディラー・ガーンディー(建国時の首相ジャワーハルラール・ネルーの娘)が首相だった時代に、1975年から77年までインド全土にこの布告を出していたことで知られています。本作では、インディラーの幼い時から始まって、1964年に父ネルーが首相在任中に急逝、その後シャーストリーが首相に就任するものの、彼もまた1966年にタシケント会議出席中心臓発作で急死してしまいます。ネルーらの政党国民会議派は娘のインディラーを担ぎ出して首相に就任させ、彼女の政権は一時退任した時期も含めて、亡くなる1984年10月まで続きます。映画はこの歴史をざっと追っていくのですが、インディラーの描写がなかなかにユニークで、これはインド人民党から出馬したカングナー自身の見方がかなり入っているな、と思いチェックしてみたら「Story: Kangana Ranaut」とありました。ちなみに、インド人民党と国民会議派は対立している政党です。
映画の中のインディラーは、育ちはいいけど小心者で、下の息子サンジャイを溺愛する女性として描かれます。実際のインディラーの声も結構甲高かったように思いますが、本作の中では、良家の娘が父の後を継いで政界に投げ込まれ、国民会議派とインド人民を率いていかないといけないことから、混乱のうちにうわずった声のままに国を治めていく愚かな女性として、ふわふわした声が強調されていました。そして、政治家で、社会運動家でもあったJ.P.ナーラーヤン(アヌパム・ケール)や、のちにインド人民党政権で首相となるアタル・ビハーリー・ヴァージペーイー(シュレーヤス・タラプデー)、そして老練な政治家ジャグジーワン・ラーム(サティーシュ・コウシク)らの中で、内心右往左往する様子が描かれ、唯一信頼する息子サンジャイとの奇妙な母子関係も、息子に依存する母親として描かれていきます。何だか、あまりにも惨めな描き方で、本当にこういう人だったのか、とかえって疑問に思うほど。ですが1箇所だけ、アッサム州を訪れた時、象に乗って農民たちの村に入り、彼らの訴えを真摯に聞く姿が描かれていて、ここだけは心打たれるエピソードとなっていました。こんな作品なので、インドでの評価は低く、公開から2週間が経った今も、興収は低いままです。インディラーを見守る女性ププル・ジャイカルの役でマヒマー・チョウドリーが出ていたのには驚きましたが、何のためにこういう映画を作ったのかよくわからない作品でした。最後に予告編を付けておきます。
Emergency | Official Trailer | In Cinemas 17th JAN 2025 | Kangana Ranaut
もう1本見た『Sky Force(航空隊)』も、空軍パイロットで1971年の対パキスタン戦に出たまま戻ってこず、20年近くたって事実が判明するという、実話に基づく物語でした。結局彼はパキスタン機に迎撃され、パキスタン領に墜落して死亡、地元の人たちがお墓を作ってくれていたことが判明するのですが、何やら無理に引っ張り出した逸話を映画に仕立てたという感のある作品でした。彼の生存を信じて、世界中を調査して回る上司にアクシャイ・クマール、行方不明のパイロット役にテレビ出身のヴィール・パハーリヤー、その妻役にサーラー・アリー・カーン、そして上司の妻役はニムラト・カウルという顔ぶれです。埋もれていた事実を紹介しながら、戦闘機の活躍ぶりをCGとVFXで描いて観客を惹きつけよう、という感じの作品で、事実なら何だっていい、というわけじゃないでしょ、とか思っていたのですが、人気俳優+新人のコンビが功を奏したのか、現在のところ16億ルピーを稼いで、今年のヒンディー語映画で唯一「100カロール・クラブ」入りを果たしています。
アクシャイ・クマールの妻役にニムラト・カウル(『めぐり逢わせのお弁当』のヒロイン役の女優)という組み合わせは、これも事実に基づく物語『エアリフト ~緊急空輸~』〔2016〕と同じパターンですね。一方サーラー・アリー・カーンは、どんどん地味な役が似合う女優になっていく感じがします...。サイフ・アリー・カーンの娘として、もっと麗しいヒロイン役を演じるはずではなかったのか...。ということで、予告編をどうぞ。
Sky Force | Official Trailer | Akshay Kumar | Veer P | Sara | Nimrat | Dinesh Vijan | 24th Jan 2025
さて、もう1本、なんですが、昨日はカートコーパルのモールにシャーヒド・カプール主演作『Deva』を見に行きました。メトロの終点ガートコーパルからオートに乗って10分ぐらいのモールに行ったのですが、映画が始まる前の予告編が始まってみると、なんと画面がこんな色に。
なにー、これ? はい、プロジェクターの故障です。画面の左半分がグリーンになり、細かい横縞が出たりと、とても見られたものではありません。最初のCFや予告編からそうなっていたので、『Chaava』の予告編の時に2,3人男性が外に出てスタッフに文句を言いにいったようです。あわててスタッフ数人がやってきて、映写室にも行ったようですが、何度トライしてもダメ、30分ぐらいあれこれやってみても、このグリーンは消えません。その30分が必要だったのか、スクリーンの前に集まっていたシネコンのスタッフは、「お金は払い戻します」という説明をして、観客を追い出し始めました。空いている他のスクリーンはなく、代替のプロジェクターも手配できない、ということで上映取りやめとなったのですが、そのスタッフも「こんなことは初めてです」と言っていました。カードで払ったチケット代310ルピーは現金で返してもらいましたが、こちらは電車とオートを乗り継いで来てるのよ、どうしてくれるの、と、がっかりしながら帰ってきたのでした。『Deva』の前までは正常に作動していたと思われるので、う~ん、何の呪いなんでしょうね。こんなサプライズは要りませんねえ。ということで、今後に期待することにしましょう。『Deva』の予告編だけ、せめても付けておきますね。
Deva | Official Trailer l Shahid Kapoor | Pooja Hegde | Rosshan Andrrews | In Cinemas 31stJanuary