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劒岳 点の記

2009年08月04日 | Cinema
監督が「本物」を撮った映画だと言っていたのが印象的で、「これは見なくちゃイカン」と思っていたのでやっとこさ観賞してまいりました。
あとはまあ、香川さんを見に。
すみません、ほんと。なんかもう、趣味の傾向に統一性のカケラもなくて。
(本人はめちゃくちゃ一貫してると思ってるんですけどねー。)
目と頭と腕(かいな)が好きです。
あ、聞いてないすか。そりゃどうも失礼。



気を取り直して、まずは映画全体について。

実際、本物でした。
おまけに浅野さんの演技が自然過ぎて、ドキュメンタリーかと錯覚しそうになるほどで。
なんにしろ背景が雄大。
人物があり、その後ろに遠巻きに見える背景ではなく、自然という「背景」にぐるりと取り囲まれたその中で、人物がちまちま動いている。せっせせっせと観測点を立ち上げる。
飛行機やヘリならひとっ飛びの山々も、人の足では何日もかかるし、それどころか命かけなくちゃ登ることもできない。
デカイ仕事のようで人間の小ささを思い知らされる仕事。

ちっちゃいことやってんな。
こんなことして、なんの意味があるんだろ。
人が登れない山の地図作って、何になるんだろ。

芳太郎さんがわざわざ口に出さなくても、見ていて自然とそう思いました。


でも小さい存在ながらもそこには生活の営みがあり、家族があり、協力や葛藤や尊敬や愛ありで、押し付けがましくない静かな感動がありました。


(ここからちょっとストーリー詳細にふれます)



とにかくもう・・・芳太郎さんと長次郎さんの演技が自然でホレます。
出会ったばかりの頃、一緒におにぎりを食べながら芳太郎さんがちょこちょこ会話をふるも長く続かず、うっすらと「間がもたね~」って空気が漂う感じがリアルで微笑ましかったです。


長次郎さんと息子の絆には泣けました。
時代が時代なら、わたくし、長次郎さんの嫁に行きます。
これといった学もない人だけど、山に対する勘は誰にも負けない。
家族への愛も負けない。
山に対する自分なりの信念も負けない。

野性的な人間をやらせたら香川さんの右に出るものはいないと思います。
猛吹雪の中、足跡を見失い帰り道がわからなくなった時に、五感全てを使って雷鳥を見つけた時の長次郎さんの動物的な姿にはちょっとウケたけど。


幾多の困難を共に乗り越え、最後まで謙虚に芳太郎さんの案内人を務めて、ようやく山頂に到達するって時にふいに足を止め、
自分はただの案内人、この先はもう大丈夫ですから、みなさんが先に行ってください。
と、「初登頂」を芳太郎さんたちに譲ろうとするところがもう・・・涙ダダモレです。

「いえいえ長次郎さんが」「いえ、ここはあなた方が」、ってやってたのには、ちょっとだけ、ダチョウ倶楽部が脳裏をよぎったけど。


1つ言いたいのは、なぜあの役があおいちゃんなのかな。と。
見る前からそんな気はしてたんだけど、見てみてやっぱりちょっと違和感が。

設定上の年齢がどうとか、芳太郎さんとの年齢差がどうとか細かいことは知らないのでアレですけど、若すぎるというか、幼すぎるというか。色気がないというか。

可愛らしいのは言うまでもないのだけど、ちょっと・・・。
もうなんだかんだである程度の年齢になってきたわりには、ちょっと・・・。
新婚さんの甘~い雰囲気は伝わってきましたけど、「戦場」に向かう夫の留守を預かる良妻にしてはちょっと頼りない感じでした。

どうしても彼女にこの役を!っていうなら、尚五郎さんと駆け回ってた「おカツ」ではなく大奥に君臨する「天璋院」くらいの、
純情きらりでいうなら味噌樽に落っこちたおてんば桜子ではなく、出征した達彦さんの代わりに山長を守る若女将くらいの声音レベルでお願いしたかったです。



とにかく全編通してひとことで言うなら「男のドラマ」。
最後の非情な仕打ちには、ちょっとちょっと、そりゃないよ~、っていう脱力感というか、やるせない気分になるけど、でもそういう時代だったんだよね・・・。
そんなどうにもならない憤りは小澤さんが代弁してくれていて、視聴者も測量部もあれでいくらか救われていると思う。
それに加えてきわめつけの仲村トオルの手旗。
あれがあって初めて、この男たちの大仕事は報われた。

大日本帝国下、絶対的な権力が存在していて、今よりもっと、どうすることもできない、逆らうことのできない、理不尽なことばかりだった時代にに生きていた男の人たちは、今よりもずっと強かったんだろうな、と思います。
そんな世界に女が口を挟む余地はない。
けどその代わりに彼らや家族を立派に支えている。
これはこれですごく自然な関係に思えました。
明治の女が強いって言われていた意味がわかった気がする。
今の日本は男も女もふにゃんふにゃんよ。 残念ながら。
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