先月３１日はスーパー･ムーンでブルー･ムーンでしたが、札幌は雲がかかり見られず残念。
代りに月の歌でも聞くか、ブルー･ブレイジズの｢アリゾナ･ムーン｣でも…のとき、頭の隅で｢月の沙漠｣も鳴り出し、そうだ、たまに童謡も良いかと聞き始めると結構ハマり、つい手元のＣＤ(主に図書館から借りたＣＤの複製)を聞き直したのですが。
この曲は、大正期に｢少女倶楽部｣の挿絵画家だった加藤まさをが詩を書き、佐々木すぐるが曲を書いて全国の小学校を行脚して広め、昭和７年に初めてレコード化されたそうです。
お揃いの白い衣装を着た王子様とお姫様、沙丘を越え月明かりに浮かぶ二人のシルエット。ラクダに付けた金の鞍には金の瓶、銀の鞍には銀の瓶…と、なんともロマンチック。
でも、どこにもお供の行列とは出てきません。供も付けず二人きりなのでしょうか？ 満月の晩だとしてもリスキー過ぎません？危険を冒し "朧にけぶる月の夜を" 二人だけでとは、もしかしてこれは恋の逃避行だったのか？
しかし終りの方の歌詞に "対のラクダはトボトボと" "黙って越えていきました" とあります。ネガティブな言葉が並ぶのは恋の逃避行では無く、反乱に遭って国を追われた王子と姫なのか？…なんて大人の邪推は置いておいて、ここはメルヘンの世界。
月の沙漠を越えてゆくアラビアのロミオとジュリエット、としておいたほうがロマンチックで良いじゃないですか。
余談ですが、何かの番組で荷を積んだラクダと人々が出発して行くシーンが映り、｢旅の商人たちが出発してゆきます…｣みたいなナレーションがかぶさりますが、映像と共に声まで拾っていたようで、彼ら｢俺たち今こんな事していないんだけどなぁ…｣と。
私はその番組を見ていないのですが、現地の言葉がわかる方がたまたまそれを聞き腹を抱えて笑った…というコラムを読んだ事があります。まぁ、演出もほどほどにしないとね。川〇浩探検隊じゃないんだから…って、今もそれに近いヤラセは多いらしいですが。
話は戻りこの歌、誰が歌っても素敵ですが、ボーイ･ソプラノや少女の声がより合うと思います。私が聞いた中で好きなのは昭和２０年代の伴久美子さんの歌声。
子供らしさ…と言うよりは、子供の声なんだけどナイーブでちょっと大人っぽく、憂いも感じさせる声が好きです。サトウ・ハチローや中田喜直にも気にいられ、彼らから歌唱者に指名される事も多々あったそうで、その気持ちすごくわかります。
残念ながら彼女が歌ったＣＤは見つからず、ＳＰ盤をネットで聞く(２ヴァージョンあり)しかありません。しかし手元のＣＤに残る｢わらいかわせみに話すなよ｣(S31.09)とか、｢おぼろ月夜｣(S30.04)などはとても愛らしく、繰り返して聞きたくなります。
伴久美子さんは小学校２年の時｢子供のど自慢｣が鐘三つを鳴らし、それをラジオで聞いていた佐々木すぐる(月の沙漠の作曲者)のたっての希望で指導を受ける事に。
しかし佐々木が子供の指導未経験だったからか、ヒットを出さねばの焦りからかわかりませんが無理な指導を続け、彼女は声が出なくなり佐々木の許を離れる事に。当時のコロムビアのディレクターだった足羽氏が基礎的な指導からやり直し、元の声に戻るまでには相当の月日を要したと、このＣＤの解説には書かれています。憶測で怒るわけにはいきませんが……
彼女は童謡歌手を卒業後、家業を継いで実業家として活躍されていたそうですが、４３歳の若さで…とは残念な事でした。
いま私が聞ける｢月の砂漠｣は久保木幸子の盤。彼女の吹込みは小学校４年から大学一年まで続き、コロムビアでは童謡歌手の年齢を中学生までと制限していたが、優秀だったため異例の延長となったそうです。
この間に彼女は｢月の砂漠｣を３回吹込んだそうですが、私の手元ＣＤはS39.11となっているので、これは１８歳の時の録音か？大人びた声ですが、これはこれで結構でした。付け足すと｢ニャンニャン踊り｣のニャンニャンの歌声も可愛く、猫がいる我が家では大うけでした。
ネットで聞ける｢月の沙漠｣でケニー･ボールが消えたのは残念ですが、他にはこんなのも。夭逝した天才リー・モーガンの演奏⇒https://www.youtube.com/watch?v=TDzRNcneeJg 無伴奏で歌う石原裕次郎⇒ https://www.youtube.com/watch?v=SrszOxZaQQs&t=11s
※2019年9月のteacupに【聞きたい３６５日 第１９３話】として書いたものに加筆し再掲載しました。