今でこそ頑固な反喫煙者として、"望むべきは無煙社会!"などと吠えている私ですが、実は黒歴史があり、キャビン85を1日に2箱も吸っていたチェーン・スモーカーの時代がそれ。狭い事務所の中で、モウモウと人間蒸気機関車をやってた時期があったのです。
あるとき新入女子社員から、高校生の妹が「お姉ちゃん不良になったのね!タバコ臭い!」と叱られたと。むろん彼女は吸っていません、犯人は僕らで、事務服に着替えるにも関わらず、その臭いを家にまで持ち込ませてしまってすみません、本当にごめんなさい、反省しています。… 煙草にまつわる痛い思い出で。
真っ当な (?) タバコの話で思い出すのは、イギリスのビート・グループのナッシュヴィル・ティーンズの「タバコ・ロード」。全米14位(1964/11/07)となった彼ら最大のヒットで、日本でもヒットはしたかは覚えが無いのですが、私には記憶に残る一曲。
彼らを知ったのは良くある寄せ集めLPからですが、60年代イギリスのヒットを集めたアルバムで、ほかにもゼムやエーメン・コーナー、ボビーとヴェラなど、ラジオから流れていたアメリカ物とはまた違う、香りを感じた若い頃の思い出の一枚。
タバコ(tobacco)は植物の名で、紙巻煙草はシガレットなのはご存じの通りですが、タバコ・ロードとは、ジョージア州のタバコ農園を縦断する道路を指すそうで、この周辺には白人貧民層が多く暮らしていたそうです。
I was born in a dump Mama died and my daddy got drunk…厳しい中に生れどれだけこの場所を憎んだか、だが金を稼ぎこんな所ブッ飛ばし新らしいタバコ・ロードを作るんだ… 生まれ育った所への憎悪と屈折した愛。曲を書いたのはジョン・D・ルーダーミルク。
ズダッ ズタッというリズムが良く、それに乗ったツイン・ボーカルが心地いいです。このリズムの刻み方、後のピンクレディーが「UFO」で参考にしたかも…は想像ですが。
結成以来実力派バンドとして力を付けていた彼らは、ジュリー・ルイスやボ・デットリーのツアーのバックを務め、その縁で一回限りの録音契約にこぎつけ選ばれたのがこの曲。そのオリジナルは初めて聞きましたが、そのルーダーミルクの盤は何とも味わい深いです。
今まで知らなかったソング・ライターなので調べてみると、彼はポール・リビア&レイダースがヒットさせた「嘆きのインディアン」も書いていて、その曲は知っていましたがヒット曲としての興味は無く、今までスルーしていました。
折角だからあらためて聞くと、チェロキー族の人達が居留地に集められ、武器を取り上げられ、生き方を否定され言葉を取り上げられ… という歌で、明治政府はこのやり方に倣ったのか?と思うくらいそっくりな話。重ね合わせて胸が痛くなります。
"涙の旅路"と言う言葉も、こういう楽曲だった事も知らず、メロディを口ずさむ事の無い曲の詞など、今まで気にも留めていなかったと反省。今更ですがスルーしてきた曲も聞き直してみよう、ヒットしたのには、それなりの訳があるのだろうから。
以上【聞きたい365日】第387話でした。
参考にしました ウェイン・ジャンシェック:著「ただ1曲のスーパーヒット①」 音楽之友社