午前八時四十七分。
僕の乗っていた電車は人を、轢いた。
一号車に乗っていた僕は、けれどその光景を見ていない。
急ブレーキと、軽い、音。
アナウンスの鳴る頃には既に死人は二号車の車両に挟まっていた。
グシャリ。
人々は静かに興奮した。
程なくやってきた『死体処理業者』
噂する学生。苛立つサラリーマン。
子供の情報を遮断しようとする親。
僕は本を読んでいた。
ダイヤの乱れは気にしない。
気にしても、死人は蘇らず、ダイヤの乱れも止まらない。
だから本を読む。
ライトノベルの戦争モノ。
主人公は強く、それでいて無力。
物語中盤でヒロインは死ぬ。非日常の死。
アナウンスが鳴る。
日常の死は処理された。ダイヤの乱れは15分。
許容範囲。出席は30分遅れまで許される。
走り出した電車。
通常運行する日常。
僕はふと、身体を捻りレールを見る。
血の跡は残っていない。
更に深く観察する暇もなく電車は僕を乗せ加速してゆく。
最後に。
チ、 と。
舌打ち一つで無責任な死を軽く侮蔑した。
僕の乗っていた電車は人を、轢いた。
一号車に乗っていた僕は、けれどその光景を見ていない。
急ブレーキと、軽い、音。
アナウンスの鳴る頃には既に死人は二号車の車両に挟まっていた。
グシャリ。
人々は静かに興奮した。
程なくやってきた『死体処理業者』
噂する学生。苛立つサラリーマン。
子供の情報を遮断しようとする親。
僕は本を読んでいた。
ダイヤの乱れは気にしない。
気にしても、死人は蘇らず、ダイヤの乱れも止まらない。
だから本を読む。
ライトノベルの戦争モノ。
主人公は強く、それでいて無力。
物語中盤でヒロインは死ぬ。非日常の死。
アナウンスが鳴る。
日常の死は処理された。ダイヤの乱れは15分。
許容範囲。出席は30分遅れまで許される。
走り出した電車。
通常運行する日常。
僕はふと、身体を捻りレールを見る。
血の跡は残っていない。
更に深く観察する暇もなく電車は僕を乗せ加速してゆく。
最後に。
チ、 と。
舌打ち一つで無責任な死を軽く侮蔑した。