以前から、嵐の過去のアルバムレヴューを書いて欲しいとリクエストされてました。
妄信的ファンではない、ただのグルーヴチューン好きが書くモノにどれくらい需要があるかわかりませんが(笑)
とりあえず、実質的ファーストアルバムと言われるこの作品から。
嵐
『HERE WE GO!』
2002/7/17リリース
ジェイ・ストーム
JACA-5003
シングル「A・RA・SHI」でデヴューしてから2年と8カ月後、こんな印象的な作品が作られるとは思ってもいなかった。
だいたい、アイドルのセカンドアルバムの1曲目に、こんな壮大なオーケストレーションが必要なのか?
オープニングから暫くは、服部隆之のサウンドトラックかと(爆)
ただ、2分を過ぎてからのホーンとストリングスのクオリティの高さは未だに色あせない。
特にホーンのブレイクのカッコよさはワクワクものだ。このゴージャスなバックトラックに乗せてラップする櫻井くんって・・・・・カッコよすぎるきらいすらあるな(笑)
オープニングからの3曲に関しては、重ための曲調。
歌唱にも軽やかさは感じられずダークめトーン。
デヴューして3年弱のジャニーズアイドルのセカンドアルバムというには、あまりにアーティスティック。
しかし、それはスタッフが彼らに何かを感じ、希望を見たからなのか?という気がしないでもない。
この時点では、まだ楽曲に振り回されてる部分も見えるけど、時折見せるキラッと光る輝き。
制作陣は、彼らにジャニーズポップの未来を託したのかもしれないと思える瞬間が確かにあった。
へヴィな雰囲気に変化が出始めるのは4曲目「Tokyo Lovers Tune Night」から。
軽やかなギターカッティングのイントロ。
駆け回るフルート&サックス。
パーカッシヴな鍵盤が跳ねるアーバングルーヴ。
そして、運命を変える1曲「A Day In Our Life」へ繋がる。
スケボーキングのSHUNとSHUYAの手による極上ヒップホップは、少年隊の「ABC」をサンプリングしたバックトラックが実にクールでポップ。
櫻井翔のラッパーとしての才能をまざまざと見せつける低音ラップと、大野智という稀代のヴォーカリストが目覚める瞬間を感じるヴォーカルパートの絡み合う時、嵐というグループが化ける。
これこそが、嵐をアイドルから脱皮させる転換点だったのだと改めて思う。
そのまま、再度ダークめヒップホップ「ALL or NOTHING Ver.1.02」に続くわけだけど、3曲目までの印象と全然変わるのは、サビのヴォーカル部分がちゃんと歪な心地よさを持ったユニゾンになってること。
1枚のアルバムで、こうも変わるか?とすら思う(笑)
これも、ア・デイ効果?・・・んな訳ないと思うけど(苦笑)、続けて聴くとそんな気分にさせられる秀作。
作曲とアレンジをした野崎昌利の手腕が光る。
アルバム中でも、もっともファンクネスなテイストを漂わせる「眠らないカラダ」は、個人的に大好きな曲。
ひたすら左チャンネルをドライヴするアコギのカッティングから堪りません・・・
アレンジと打ち込みをした安部潤が最も得意とするサウンドメイクが聴ける名曲だと思います。
彼は、煌びやかでタイトなアッパーグルーヴをやらせたら、ホントに上手い。
大野くんのソロヴォーカル部が実にファンキー。
余談ですが、トランペットの下神竜哉は米米クラブのホーンセクション:ビッグ・ホーンズ・ビーにいたヒマラヤン下神氏ですね(笑)
ところで、このテイストのアルバムには異分子の様な「IROあせないで」だが、何故にバックがこんなに豪華なのだろう・・・・
ウィリアム・ジュジュ・ハウスのドラムにウィル・リーのベース(出だしからビンビンに響いてますww)、ピアノはフィリップ・セスでアレンジと打ち込みはCHOKKAKU氏って、全盛期のSMAPのようだ(笑)
その流れで「愛してると言えない」はアレンジと打ち込みが長岡成貢、ドラムがヴィニー・カリウタ、前出のウィル・リーとフィリップ・セス、ギターのアイラ・シーゲルに加えてホーン隊まで・・・・・音づくりがゴージャス極まりない。が、バックトラックはやはりSMAP(苦笑)
文句なくカッコいいアレンジと演奏なのは間違いないが、この音の既視感は・・・・
あ~でもやっぱ長岡さんのアレンジ好きだな~(笑)
そのままならば典型的なジャニーズ歌謡である「IROあせないで」を、SMAPが切り開いたサウンドメイクを施すコトで新たな息吹を与え、次ステージのグルーヴチューンとして昇華させた「あいしてると言えない」では、まだ発展途上ながら嵐グルーヴの片鱗を示した。
そして、この曲から「星のFreeWay」への流れが、個人的にアルバム最大のツボ。
野崎氏の作曲・アレンジ・打ち込みには美意識が溢れ、オマー・ハキム&ウィル・リーの鉄壁リズムセクションは腰に響く様なうねるグルーヴを醸し出す。
小池修のテナーサックスも実にイイ音色で彩りを添える。
最後の「ナイスな心意気」は、アルバム全体から考えればトーンがポップで浮いている曲なのかもしれないな・・・・・
でも、この曲は私にとって特別な一曲。
嵐という存在をアーティストとして認識し、好きなグループとして捉えられる様になったきっかけ。
大野くんのソロパートの声に落ちた。粘りも軽やかさも兼ね備えたグルーヴィでフックの効いた声質。
バックトラックのサウンドプロダクションに、オールドソウルマナーが感じられる実に小粋なポップグルーヴ。
打ち込みのホーンやストリングスを抑え込む様な工藤毅の生スラップベースが最高なんです。亡き青木智仁氏を思い出すなぁ・・・・
確かに、若さゆえの未熟さはある。しかし、特筆すべきは制作陣が本気で彼らを育てようとしていたコトだと思う。
このアルバムには、あらゆる楽曲の美味しいエッセンスがそこかしこにある。
音楽好きが聴いて、ワクワクするような一枚になってる。
8年前に作られたとは思えぬくらい、今でも真っ当に評価できる楽曲がいくつもある、というコトがこのアルバムの真価。
タブローのクオリティこそが、アルバムの評価を高めるのだという実証になる好アルバムです。
ディレクターである、鎌田俊哉氏の手腕に脱帽と感謝。
このシリーズ(笑)、時々思いだした様に、ゆっくりゆっくりとリリース順に続けていきたいな、と思います。
気長にお付き合いくださいませ