随分とご無沙汰しております。
仕事の方でバタバタしてて、なかなかブログの方に気が回らない感じで申し訳ない(苦笑)
そんな中、今回は気分を変える力を持った一枚。いやぁ、凄いですわコレ。
嵐
『Are You Happy ?』
2016/10/26リリース
ジェイストーム
Jaca-5827(通常盤)
前作が『Japonism』、前々作が『THE DIGITALIAN』、その前が『LOVE』『Popcorn』とアルバムごとにタイトルがコンセプトを指し示す方向で制作されていた訳ですが、今回のアルバムはタイトルから明確な統一感が見えにくい。逆に言うと制約が外れて、単純に良い曲をかき集めるというある意味個人的には嬉しいスタンスとも考えられる訳で。
そうして出来上がったアルバム、最初に聴いた時は軽く眩暈がした。もちろん良い意味で。
心の声は「うわっ!なんだコレ!?すげ!!堪らんな~」という感じで。私の好みで言えば、現時点で嵐史上最高傑作と言って良いかと。勿論、他のアルバムにも好きな曲いっぱいあるんだけど、トータルで全くダレないという楽曲アヴェレージの高さとグルーヴを感じる比率の高さから見て、今作が一番好きかもしれません。
でも、コンセプチュアルではないとは言いながら、アルバムとしての印象が散漫になってる訳ではなくて、良い楽曲を詰め込んだ事によってピシっと背筋が伸びた様な軸が存在する、とも思えるのです。
クオリティの高い楽曲を優れたスタッフやバックが構築し、円熟味を増した大人の彼らのヴォーカルを乗せる事でゾクゾクとワクワクが満ち溢れたアルバムになる。私が思い描いていた男性ポップヴォーカルグループの完成型に最も近い姿がここにある。そんな風に感じています。
という訳で、各曲のクレジットなど確認しながら簡単な感想など(歌詞には興味ないので作詞者は割愛ww)。
01.DRIVE(作・編曲:Jeremy Hammond)
「Are you ready now?」や「イン・ザ・ルーム」といった私好みのグルーヴチューンを提供しているJeremy Hammondが素晴らしい曲をまた作ってくれたなと。冒頭にこの曲が流れだした瞬間に、このアルバムは良いと確信できた。考えてみたら、こういうスタイリッシュなミドルグルーヴがアルバムのオープニングって記憶が無い。今野均ストリングスが打ち込みのバックトラックを豊かに、そして世界を広げる様に包み込む。気持ち良い事この上ない。松本潤監修という事だが、彼のセンスの良さが感じられる。
02.I seek(作曲:AKJ&ASIL 編曲:石塚知生)
この曲に関しては驚きしかなかった。シングルで聴いた時と印象が変わり過ぎてて、自分の耳を疑った。こんなに良い曲だったのかと。ホントにごめんなさいとしか(苦笑)前の曲からこのイントロのストリングスが入った瞬間にアドレナリン出まくりです。その疾走感溢れるダイナミックなストリングスは弦一徹。ベースに元ジャニーズの松原秀樹。ギターは名手:小倉博和。そして切れのある4管ホーンはTp:中野勇介&田中充、Tb:鹿討奏、Ts:庵原良司。オルケスタ・デル・ソルの中野氏は角松敏生やジャンクフジヤマ、SMAP、東京事変などの仕事をされてますし、鹿討氏と共に前アルバムにも参加してますね。庵原氏もSMAPやKinkiとお仕事されてます。田中氏も椎名林檎、今井美樹、いきものがかり、DREAMS COMES TRUEといった辺りとお仕事されてます。しかし、この曲ホントにシングルの時と同じヴァージョンだとは思えないんだよな・・・・リアレンジまではしてないにしても、ミキシングかマスタリングはいじってるんじゃないのかなぁ?
03.Ups and Downs(作曲:Joe Lawrence&Trevor Ingram 編曲:pieni tonttu)
もうね、オープニングのホーン一発でもっていかれる。キレキレのファンクグルーヴだけど軽やかさも乾いた感じもあって実に好み。そして控えめなギターカッティングと端々に挟まるエレピ、太いグルーヴを作るベースラインが最高。飽きさせずに展開する曲構成も秀逸。ベースは松原秀樹、ギターは石成正人&福原将宜、トランペットは中野勇介&田沼慶紀、トロンボーン:鹿討奏、テナーサックス:村瀬和広、バリトンサックス:竹村直哉。あ、後この曲のヴォーカルはみんな素晴らしいです。成長と円熟を感じます。フェイクに鳥肌。
04.青春ブギ(作曲:Soul-273 編曲:ha-j)
相葉雅紀監修というこの作品。ひたすらグルーヴィに攻めた出だしの3曲からガラッと雰囲気を変え、昭和歌謡テイスト全開。イントロが“ハイスクールララバイ”かと(笑)でも、相葉ちゃんのキャラが生きてるのも解るし意外と嫌いじゃない。Cメロの詰め込んだ早口の譜割やギミック満載の音作りは古のザ・歌謡界へのリスペクトが見える。何よりもキャッチーなメロディがちゃんと存在するのが良い。
05.Sunshine(作曲:Tommy Clint 編曲:石塚知生)
櫻井翔ソロ。ドラム:小田原豊、ベース:美久月千晴、ギター:林部直樹というベテラントリオに真部裕ストリングスと中野勇介・鹿討奏・村瀬和広の3管ホーンを配した躍動感あるバックトラックに翔くんの爽やかなヴォーカルが乗る気持ち良い1曲。“目合わせウインクして~”のメロディが短いながら秀逸でキャッチー。
06.復活LOVE(作・編曲:山下達郎)
山下達郎というグルーヴチューンの御大がこのシングルを手掛けた事が、このアルバムに影響を与えているのではないか。そんな風に考えない訳ではありません。他の楽曲にもヤマタツグルーヴが薄っすら透けている様に思えるのです。ガットギター:佐橋佳幸、トランペット:西村浩二&菅坡雅彦、トロンボーン:村田陽一&奥村晃、テナーサックス:吉田治、バリトンサックス:山本拓夫、弦スコア:牧戸太郎、弦:今野均ストリングスという豪華布陣(特にホーンは私にとっては夢の様な面子です)な上に、達郎本人が打ち込みとギターと鍵盤&パーカスとコーラスまで。贅沢の極みです。
07.Amore(作・編曲:eltvo)
相葉雅紀ソロ。ここまでの曲でも結構豪華にホーンを使ってますが、この曲に至ってはトランペット:中野勇介&田中充、トロンボーン:鹿討奏&東條あづさ、アルトサックス:本間将人、テナーサックス:大郷良知、バリトンサックス:竹村直哉という7管。ブラススコアリングとCo-Progを佐々木博史、オルガンとシンセソロを板倉真一、ギターにお馴染みの設楽博臣。中盤のシンセソロがもう私世代だと涙モノです。出だしスロウからアッパーに展開するラテンチック歌謡。コレはもう田原俊彦オマージュといって良いかと。往年の優れたジャニーズ歌謡の再構築が見事になされている。これだけ厚いホーンを被せるのは往年の歌謡番組はビッグバンドを従えて歌うモノだったという事と無関係ではないのかなと思ったりもする。
08.Bad boy(作・編曲:HARAJUKU KIDZ)
大野智ソロ。一聴して驚いた。歌唱力・表現力に定評のある彼のソロ曲にバリバリのEDM。しかもオートチューンでエフェクトかけまくり。しかし、そのギャップを軽々と乗り越えてくるのは流石。エフェクトや平板なメロというネガティヴファクターが全く気にならない。加工を突き抜ける大野智という歌い手の力を感じる。よくよく聴けばテンポがリットする辺りのメロディラインはEW&FのFANTASYを彷彿とさせたり、仕掛けもちゃんとある。歌からヴィジュアルが浮かび上がる、実に視覚的な歌。
09.WONDER-LOVE(作・編曲:Erik Lidbom、Jon Hällgren)
二宮和也監修。タメの効いたベースリズムと複雑に絡み合うメロディとコーラスワークが洒落た曲だなと思います。シンドラのアクセントもイイ感じ。5人の声の特徴が生きた歌割が素晴らしく、嵐というヴォーカルグループの実力が良く解ります。
10.また今日と同じ明日が来る(作曲:Fox.i.e 編曲:Fox.i.e、A-bee)
二宮和也ソロ。編曲で前作でも印象的なサウンドメイクをしていたA-beeが絡んでいるだけに、アンビエントで神々しいエレクトロポップに仕上がっている。内省的でウエットなイメージが強かった彼のソロとしてはかなりベクトルをずらしてきた感じがする。何よりも声の圧の強さと上手さが際立つ。
11.Daylight(作曲:Simon Janiov、wonder note 編曲:佐々木博史)
シングルの時は辛気臭いなぁと思ってたりした(苦笑)んだけど、ニノのソロから続いていくとイントロの鍵盤が実にイイ感じ。鍵盤と打ち込みのストリングスが壮大な世界を構築するミドルチューン。グルーヴは無いけど、アルバムの抑揚から考えればアリ。中野勇介のピッコロトランペットはエンディングを見事に彩っているけど、奥田健治と設楽博臣のギターがどこで鳴ってるのか良く解らないのは御愛嬌(笑)
12.愛を叫べ(作曲:100+ 編曲:100+、佐々木博史)
11曲目に続き、シングルの時よりアルバムに入った時の方が印象が良くなる曲(笑)ドラムは河村徹、ベースは柴田雄三、ギターは西川進に弦一徹ストリングスが彩りを添えます。西川さんらしいアタックの強いギターと、流麗なストリングスが華やかなパーティチューンを盛り上げます。
13.Baby blue(作曲:100+ 編曲:佐々木博史)
松本潤ソロ。このアルバムは驚かされる事が多いんだけど、白眉はこの曲。アーバンスタイリッシュグルーヴとして一級品の名曲。ドラム:佐野康夫&ベース:小松秀行という全盛期のオリジナルラブにおけるリズムセクションがグルーヴを溢れさせる。ギターとエレキシタールは輝かしいキャリアを誇る高野寛。パーカッションに坂井“Lambsy”秀彰、弦は弦一徹ストリングス、5管ホーンは中野勇介・田沼慶紀・鹿討奏・村瀬和広・庵原良司。コーラスアレンジはAKIRA。この渋谷系を彷彿とさせる(しかし、ちゃんと今の音)人力グルーヴチューンが本当に好き過ぎて堪らんです。センスの良さがダダ漏れてる。メロウグルーヴ“嵐”みたいなmix cd作るんだったらまず選曲すべき1曲。
14.Miles away(作曲:R.P.P 編曲:metropolitan digital clique)
大野智監修の壮大なミドルスロウ。普段ならあまり好まない曲のタイプだが、この曲に関しては嵐という個性的で魅力的なヴォーカルグルーブの力をまざまざと見せつけられて思わず聴き入ってしまった。レコーディングされたものとはいえ、ここまで歌の力を感じる作品はなかなか無い。個々の声のキャラクターが十二分に生かされ、力強く生き生きとした作品になっている。ギターは設楽博臣。
15.To my homies(作・編曲:韻シスト)
櫻井翔監修のこの曲は韻シストが作り演奏した柔らかく暖かなミドルテンポのヒップホップチューン。ドラム:TAROW ONE、ベース:Shyoudog、ギターとプログラミング:TAKU、ターンテーブル:DJ O.H.B.A.が紡ぐ優しいメロディと、5人が繋ぐRapと歌。実に心地良い。ドラムの金物とギターの音色が気持ち良い。
16.Don't You Get It(作曲:Didrik thott、Christian Fast、Henrik Nordenback 編曲:吉岡たく、佐々木博史)
初回盤のエンディングはリード曲であるこのファンクチューン。ドラム:Jimanica、ベース:松原秀樹、ギター:奥田健治、トランペット:中野勇介&田中充、トロンボーン:鹿討奏、アルトサックス:本間将人、テナーサックス:鈴木圭という布陣が繰り広げるサウンド、確かにカッコいいんですが・・・・・マーク・ロンソンやブルーノ・マーズ辺りをモチーフにした感覚がちょっとズレてる感じもするんですよ。あくまでも個人的な好みの問題ですが。少し遅い。というか寧ろ今なら1、3、13曲目辺りのスタンスでイイんじゃないかと思うんですけどね。とはいえ、ライヴとかで盛り上がるだろうってのは確かだし、クオリティ高いのは充分理解できます。
17.TWO TO TANGO(作曲:Kevin Charge、Andress Oberg、HARAJUKU KIDZ 編曲:metropolitan digital clique)
通常盤のボーナストラック。通常盤のみというのが惜しい様なクオリティ。タンゴの要素を塗したヘヴィファンクなヒップホップで実にカッコいい。エンディングがこの曲っていうのがもう常識外れ(褒めてます)。中野勇介・鹿討奏・大郷良知・川上鉄平・武嶋聡という腕利き5管ホーンがかける圧を真っ向から受け止める嵐の歌唱に大人の魅力を感じるのです。“ファンタスティックなギターはDjango”と歌った後に紡がれるギターが遊び心に溢れててニヤッとしちゃう。アコギはAndress Oberg、エレキギターは奥田健治です。
さて、駆け足で各曲を見てきた訳ですが、このアルバムで個人的に嬉しかったのは生楽器の比率の高さ。特に弦と管という上モノが半分以上の曲に入っている。普段は少なめなドラム参加曲が5曲あったのも良かった。そして1曲目~3曲目の流れは卒倒するレヴェルでカッコいい。凄いですホントに。
ただ、やってる事はシンプルです。良い曲を良い状態で歌う。音楽的に凝った事をマニアックに見せずに大衆に楽しめる様に作る。ポップミュージックの真髄がこのアルバムにはあると思います。あらゆるジャンルを呑み込み、横断しつつも右往左往せずに揺らがぬ軸を持つ。
私は、このアルバムが嵐の作品の中で重要な位置を占めるモノであろうと確信します。
嵐ファンでない方にも胸を張って薦められる極上のポップアルバムだと思うのです。