文化遺産としての赤塚不二夫論 今明かされる赤塚ワールドの全貌

赤塚不二夫を文化遺産として遺すべく、赤塚ワールド全般について論及したブログです。主著「赤塚不二夫大先生を読む」ほか多数。

語り継がれる永遠の名作「チビ太の金庫やぶり」

2020-01-13 19:10:58 | 第2章

「チビ太の金庫やぶり」(65年42号)は、刑務所から釈放された後、過去を清算し、平穏な暮らしを営むかつての金庫破りの名人(チビ太)と彼を執拗なまでに付け狙う刑事との対立をドラマの縦軸に、元金庫破りの身を削るような心理的苦悩と、耐え忍んだその末にある光ある希望を清々しく描いた名編で、O・ヘンリーの『よみがえった改心』をルーツとした一編だ。

極寒の地で長い刑期を終え、心を改めたチビ太は、東京下町のトト子の父が営む小さな魚屋で、住み込みの店員として働き、細やかな幸せを手に入れる。

だが、かつてチビ太を逮捕した鬼刑事のイヤミは、再び金庫破りに手を染めるであろうことを踏んで、その後もチビ太を執念深く追い掛けていた。

ある日、トト子の店に遊びに来ていたおそ松とチョロ松が、ふざけあっているうちに、搬入したばかりの金庫に閉じ込められてしまう。

だが、金庫屋から金庫の暗証番号を聞き忘れたため、誰も金庫を開けられない。

金庫は密閉度が高く、中の酸素が次第に薄れてゆく。

おそ松とチョロ松は、呼吸困難に陥り、やがて苦悶の声をうめき出す。

見兼ねたチビ太は、金庫に触れたら即逮捕というイヤミ刑事の警告が脳裏によぎるものの、意を決して金庫を開ける。

おそ松とチョロ松が無事に助け出され、みんなが安堵の溜め息をつく中、チビ太は、窓越しで一部始終を監視していたイヤミ刑事のもとに駆け寄り、金庫を開けてしまったことを告白する。

「とうとう金庫やぶりの道具を使ってしまったよ…………」「さあ、つかまえてよ。」

だが、イヤミ刑事は、「ミーはチミなんかしらないざんすよ。」ととぼけて、何事もなかったかのように去ってゆく。

翌朝、チビ太は、トト子の店に、たった一言「おせわになりました」と書かれた書き置きを残し、チビ太を探し求めてやって来た子分のハタ坊と二人、真面目に働ける場所を探そうと、新たな町へと旅立って行った……。


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