久々に有機化学ネタです。
日本化学会の狗にもれなく毎月送られてくる「化学と工業」ですが、今年の4月号には「化学で語るウイスキーの味わい」なる特集があったので、その辺をネタにちょろりと。
ウイスキーと言えば大麦やとうもろこしなんかから作られる、アルコール度数にしておよそ40%前後の蒸留酒。
一人、落ち着いたバーでショットグラスを片手に黙々と飲んでるとかっこよく見えるあのお酒です。
ウイスキーには5大有名産地があり、アメリカ、カナダ、スコットランド、アイルランド、そして我が国日本もそこに名を連ねています。
日本はスコットランドから技術を学んだのでスコッチタイプであり、モルトウイスキー(大麦麦芽だけを原料にし、単式蒸留を2回繰り返してできたもの)やグレーンウイスキー(大麦麦芽やとうもろこしなど穀物も原料として連続蒸留してできたもの)なんかを作っています。
ちなみにボクはストレートで飲むのが好きなので、香りの強めなモルトが好みなのよ。
そう、ウイスキーと言えば「香り」です。
これを楽しむのが真の男であり漢であり、大人なのです(`・ω・´)
では、化学的に言えばその香気成分とはなんでしょうか。
勿論、何種類もあるので全部は挙げられないけど、その一部はこれだ!
左にある5つね。
まず1つ目はβ-ダマセノン。
いきなりなんやねん、って思うかもしれないけど、実はバラの花の香気成分だったりします。
「ダマセノン」ってぐぐったりすると、大抵はβ-ダマセノンが出てくるのだけど、こいつにはα体、γ体という、二重結合の位置が違う2つの異性体が存在します。
画像検索かければα体は出てくるけど、γ体が…!
…なんか悔しかったので描きました。図の右側破線内の上の2つです。
α体はβ体と同じように「2,6,6-トリメチル-2,4(β体なら1,3)-シクロヘキサジエニル~」と書けるけど、γ体は「6,6-ジメチル-2-メチレン-3-シクロヘキセニル~」とびみょーに変わるのです。
ちなみに似たような構造のものに「ダマスコン」なんてのがあるけど、こちらはα体、β体、γ体、δ体の4種類の異性体が。
めんどくさいから書いてないけど、β-ダマスコンはβ-ダマセノンの六員環内の二重結合が1つ消えている(C3のやつ)だけです。
これもバラの香気成分で、最初はブルガリアンローズの微量香気成分として発見されたとか。
っさて、2つ目はバニリン。
アミノ酸? それはバリン。
人間ドックで飲む、謎の白い液体? それはバリウム。
アミノ基のついたベンゼン? それはアニリン。
バニリンはバニラの香りの主成分です(`・ω・´)
実際にはグルコバニリンというグ配糖体(バニリンのOHがβ-グリコシド結合している)の形で存在していて、加水分解されることでバニリンになります。
この構造を思い浮かべながらアイスクリームとかをクンカクンカスーハースーハーしてみてね!
3つ目はフルフラール。
フランの2位にアルデヒドがついたやつです。
アーモンドぽい香りがするやつで、チョコやその他、様々なところに隠れ潜んでいます。
こいつ自体は無色オイルだけど、空気中でそっこーで黄色く変色するらしいよ!
そしてラストは、本命・ウイスキーラクトン。
名前まんまやんけ、って思うけど、ラクトンってこんな風に名づけられること多いよね。マタタビラクトンってのもあるし( ・ω・)
構造としては簡単で、五員環のラクトンにメチル基とブチル基がついてるだけですね。
しかしこのメチルとブチルがアップかダウンかで、4種類のcis-trans異性体が存在します。
この4種類はそれぞれびみょーに香りが違うらしく、ウイスキーでは天然型の(4S,5S)、(4S,5R)が関係してくるらしい。
ウイスキーは熟成させるときに木樽に入れられるわけだけど、木樽にはタンニン(植物に由来する、タンパク質やアルカロイドにくっついて難溶性の塩を形成する水溶性化合物の総称)と結合していて、そのタンニンが分解されると染み出してウイスキーの香りの一員になるのです。
面白いのは、木樽に使う木材によって香りが変わる点ですね。
ミズナラで作った樽と欧米産のオークで作った樽では、上記ウイスキーラクトンのcis体とtrans体の比率が変わるらしく、それによって香りが変わるんだとか。
ちなみに欧米産オークではcis体が多く、ミズナラではtrans体が多く含まれるんだとか。
なので日本産のミズナラ樽で熟成させたジャパニーズウイスキーは「キャラメルに似た甘味と香木のような香りを中心とした複雑な香りが、他のどの樽のウイスキーよりも長く続く」んだとかで、最近評価が高まっているらしい。
こんなところにも日本ブランドが隠れていたわけですね( ・ω・)
やぁ、それだけの小さな違いで、香りの結果的には大きな違いを出すわけだから、ほんと不思議だなぁと思ったのでした。
日本化学会の狗にもれなく毎月送られてくる「化学と工業」ですが、今年の4月号には「化学で語るウイスキーの味わい」なる特集があったので、その辺をネタにちょろりと。
ウイスキーと言えば大麦やとうもろこしなんかから作られる、アルコール度数にしておよそ40%前後の蒸留酒。
一人、落ち着いたバーでショットグラスを片手に黙々と飲んでるとかっこよく見えるあのお酒です。
ウイスキーには5大有名産地があり、アメリカ、カナダ、スコットランド、アイルランド、そして我が国日本もそこに名を連ねています。
日本はスコットランドから技術を学んだのでスコッチタイプであり、モルトウイスキー(大麦麦芽だけを原料にし、単式蒸留を2回繰り返してできたもの)やグレーンウイスキー(大麦麦芽やとうもろこしなど穀物も原料として連続蒸留してできたもの)なんかを作っています。
ちなみにボクはストレートで飲むのが好きなので、香りの強めなモルトが好みなのよ。
そう、ウイスキーと言えば「香り」です。
これを楽しむのが真の男であり漢であり、大人なのです(`・ω・´)
では、化学的に言えばその香気成分とはなんでしょうか。
勿論、何種類もあるので全部は挙げられないけど、その一部はこれだ!
左にある5つね。
まず1つ目はβ-ダマセノン。
いきなりなんやねん、って思うかもしれないけど、実はバラの花の香気成分だったりします。
「ダマセノン」ってぐぐったりすると、大抵はβ-ダマセノンが出てくるのだけど、こいつにはα体、γ体という、二重結合の位置が違う2つの異性体が存在します。
画像検索かければα体は出てくるけど、γ体が…!
…なんか悔しかったので描きました。図の右側破線内の上の2つです。
α体はβ体と同じように「2,6,6-トリメチル-2,4(β体なら1,3)-シクロヘキサジエニル~」と書けるけど、γ体は「6,6-ジメチル-2-メチレン-3-シクロヘキセニル~」とびみょーに変わるのです。
ちなみに似たような構造のものに「ダマスコン」なんてのがあるけど、こちらはα体、β体、γ体、δ体の4種類の異性体が。
めんどくさいから書いてないけど、β-ダマスコンはβ-ダマセノンの六員環内の二重結合が1つ消えている(C3のやつ)だけです。
これもバラの香気成分で、最初はブルガリアンローズの微量香気成分として発見されたとか。
っさて、2つ目はバニリン。
アミノ酸? それはバリン。
人間ドックで飲む、謎の白い液体? それはバリウム。
アミノ基のついたベンゼン? それはアニリン。
バニリンはバニラの香りの主成分です(`・ω・´)
実際にはグルコバニリンというグ配糖体(バニリンのOHがβ-グリコシド結合している)の形で存在していて、加水分解されることでバニリンになります。
この構造を思い浮かべながらアイスクリームとかをクンカクンカスーハースーハーしてみてね!
3つ目はフルフラール。
フランの2位にアルデヒドがついたやつです。
アーモンドぽい香りがするやつで、チョコやその他、様々なところに隠れ潜んでいます。
こいつ自体は無色オイルだけど、空気中でそっこーで黄色く変色するらしいよ!
そしてラストは、本命・ウイスキーラクトン。
名前まんまやんけ、って思うけど、ラクトンってこんな風に名づけられること多いよね。マタタビラクトンってのもあるし( ・ω・)
構造としては簡単で、五員環のラクトンにメチル基とブチル基がついてるだけですね。
しかしこのメチルとブチルがアップかダウンかで、4種類のcis-trans異性体が存在します。
この4種類はそれぞれびみょーに香りが違うらしく、ウイスキーでは天然型の(4S,5S)、(4S,5R)が関係してくるらしい。
ウイスキーは熟成させるときに木樽に入れられるわけだけど、木樽にはタンニン(植物に由来する、タンパク質やアルカロイドにくっついて難溶性の塩を形成する水溶性化合物の総称)と結合していて、そのタンニンが分解されると染み出してウイスキーの香りの一員になるのです。
面白いのは、木樽に使う木材によって香りが変わる点ですね。
ミズナラで作った樽と欧米産のオークで作った樽では、上記ウイスキーラクトンのcis体とtrans体の比率が変わるらしく、それによって香りが変わるんだとか。
ちなみに欧米産オークではcis体が多く、ミズナラではtrans体が多く含まれるんだとか。
なので日本産のミズナラ樽で熟成させたジャパニーズウイスキーは「キャラメルに似た甘味と香木のような香りを中心とした複雑な香りが、他のどの樽のウイスキーよりも長く続く」んだとかで、最近評価が高まっているらしい。
こんなところにも日本ブランドが隠れていたわけですね( ・ω・)
やぁ、それだけの小さな違いで、香りの結果的には大きな違いを出すわけだから、ほんと不思議だなぁと思ったのでした。
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