えみくり情報

日常と日記
新刊・既刊通販、問い合わせなどのアクセスは「ブックマーク」からどうぞ

赤い靴 大山淳子さん素晴らしいです

2019-05-16 | 読書


「あずかりやさん」や「猫弁」の大山淳子さんの「赤い靴」

これほんとに大山さんの作品なの?ってなんども読んでる最中思いました


素晴らしかった。
北軽井沢の別荘地
幼いが賢い子供の自意識

目の前でふわふわとした母親と、生活面での母親みたいな人を惨殺された七歳の少女が、山の中で謎の人物に助けられ最終的に復讐を遂げる話なんだけど
いわゆる復讐モノの後味の悪さより、それぞれの人物の生い立ちの凄まじさや悲しさや、そしてとてつもない愛に慰められる読後感なのです

大山さんの描く優しく善意ある勤勉な人の美しさって言ったらないです
愛媛のあのお母さんのストローが上手く使えないところや
異形の息子やそれに連なるものへの静かな愛が圧倒的です
ストローはあるところでもちょっと印象的な小物として使われています

山の中のサバイバル描写と葵ちゃんが情緒面以外はどんどん成長していくさまがとても楽しい。
その欠落の理由もちゃんと描かれています。中二なようでいて中二ではないのですね。意味なくやれやれ、かっこいい感情欠落、みたいなキャラはいません。


ラストの後味のよさ。あーー大山さん節です!!



もともと冷静な主人公葵が自分を失い、取り戻し、またなくし、そして取り戻す過程の丁寧なこと


大山さんは日常の謎などを丁寧に描かれる作家だと思っていたので、今回ものすごくびっくりしました
かなり血なまぐさくて怖い描写があるからです
けれどそれらも全て最後のカタルシスに繋がるんです

園美ちゃんという女の子もとてもいい。えくぼが効きますね。それも対比なんですよね。うまいなあ

クズはどクズですが、ちゃんとクズとして描かれていて、
もちろんよくある「彼にも又そうなる理由があったのだ」もありますが、読者が許さなくていいように描かれているので嫌な気持ちにはなりません。

「復讐は何も生み出さない、復讐なんて殺されたあの人は君に望んでない」
なんて復讐モノにありがちなこと言い出すお花畑の馬鹿はいませんし、その私の嫌いな、だけどしたり顔で示される正論らしきものもちゃんとうまく処理されていて安心します


映像化されるとしたら、葵役はGOTの少女期のアリアクラス連れてこないとダメだろーなーと思いますがどうなんでしょう。
とにかく面白い話が読めて満足です。
読み終えて、途中飲むの忘れてしまうくらい没頭した結果冷めたコーヒー飲み干しながらほっと息をつきました。
面白かったし読んでよかった。