「白秋」に想ふ―辞世へ向けて

人生の第三ステージ「白秋」のなかで、最終ステージ「玄冬」へ向けての想いを、本やメディアに託して綴る。人生、これ逍遥なり。

【編集後再掲載】―『せいめいのれきし 改訂版』、『深読み! 絵本『せいめいのれきし』』

2020年05月24日 | Science
【編集後再掲載】☆『せいめいのれきし 改訂版』(バージニア・リー・バートン・著、いしいももこ・訳、まなべまこと・監修、岩波書店)、『深読み! 絵本『せいめいのれきし』』(真鍋真・著、岩波書店)☆

  タイトルどおり「生命の歴史」を描いた絵本である。太陽の誕生から始まり、地球の誕生を経て生命の誕生へとつながっていく。ページは見開きで、左が解説、右に絵が載っている。絵は芝居の舞台に見立てた構成になっていて、ページを繰るごとに「生命の歴史」のものがたりが語られていく。太陽の誕生から生命が誕生する前までの地球の進化は「プロローグ」の「1ば」から「6ば」までで、生命の誕生からは「1まく1ば」といった感じで舞台が進んでいく。最後は人類の誕生で終わるのかと思うと、そうではない。人類そのものの進化についてはあまり触れていないのだが、農耕の起源や文字の発明など、文化的な「進化」について語られていく。つまり簡単な「歴史物語」へとつながっていくわけである。絵のタッチはやさしく、暖かみが感じられる。細かく見れば情報量も相当なものだ。
  さて、同時に紹介する『深読み! 絵本『せいめいのれきし』』(真鍋真・著、岩波書店、2017年)はこの絵本の解説本である。パソコンなどに例えればマニュアルのような本である。初めから詳しい人ならばともかく、詳しい操作はマニュアルを見なければなかなかわからないものである。先ほどこの絵本の構成は芝居の舞台だと書いたが、芝居も見る側の目が肥えていなければ、何となく楽しかったというだけで漫然と見終えてしまう。各々の場面やシーンのどこに注目するべきか、主役や端役の演技や仕草の見所はどこか、さりげなく置かれた小道具の意味は何か、などを知るか知らないかでは楽しさも大ちがいだ。芝居のことは役者や芝居に関わりの深い人に聞くのが一番である。著者の真鍋真さんは恐竜研究の最前線で活躍されている方で、上野の国立科学博物館に勤務されている。ひらがなで書かれていると気付きにくいが、この絵本の監修者でもある。この絵本に関連した国立科学博物館の展示も多数紹介されている。国立科学博物館へ行く機会があれば、行く前に見ておくのも良いだろう。
  『せいめいのれきし』は1964年初版(原著は1962年初版)というこれまたロングセラーの絵本で、この絵本を読んで恐竜や生命の進化に興味を持ち、専門の科学者になった人も少なくないそうである。刊行から半世紀が経ち、新たな研究成果も増えてきたため、2009年にアメリカで出版された改訂版を元にして、2015年に日本語版も改訂された。改定された内容は恐竜に関することが最も多いようで、その意味でも監修が「恐竜博士」の真鍋先生は適任だろう。これは全くの余談だが、真鍋先生のお父様は、星新一のショートショートなどの装画を書かれたイラストレーターの真鍋博さんである。わたしは真鍋博さんのイラストが大好きだったので、そのことを知ったとき何だか嬉しくなったものである。
  絵本『せいめいのれきし』は舞台を見ている(つまり絵本の読者である)「あなた」に、いわば生命のバトンを渡すところで終わっている。今度はわたしたちが舞台に上がって芝居を続け、新たな観客である次の世代にバトンを渡していかなければならないということなのだろう。

  


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