☆〈筆談ホステス〉(TBSテレビドラマ)☆
数年前、ある友人の勧めで『チェリーパイ』という映画を見た。これが北川景子さんとの初めての出会い。何といってもチェリーパイの赤というかチェリー色がとても印象的で、チェリーパイの甘くて香ばしい匂いまで漂ってきそうな映画だった。北川景子さんはチェリーパイに魅せられた新人パティシエの役で、恋に揺れる女心の機微をチェリーパイ作りにかけてうまく演じていた。整った顔立ちながら、憂いを感じさせる表情にこころを射られた。それまで名前も顔も知らなかったのに、この作品だけで北川景子さんが好きになってしまった! まったくの一目ぼれ。
やがてテレビドラマやCMにも進出し、北川景子さんの姿を目にする機会が増えた。ところが、アレッ!?という感じがしてしまった。ドラマやCMの役柄が妙に軽かったり派手だったりして、あの『チェリーパイ』のイメージと重ならなかった。北川景子さんにはもっと他に演じる役柄があるのではないか。そんな思いが続いていた。
北川景子さんがあの斎藤里恵さんに! ちょうど『筆談ホステス』を読んでいたとき、ウェブのニュースか何かで知って驚いた。『筆談ホステス』のドラマ化にも驚かされたが―少し考えれば、これほど話題になった本を放っておくはずもないが―またしても北川景子さんが斎藤里恵さんのイメージと重ならなかった。実際のところは知らないが、北川さんはやや長身で、斎藤さんはやや小柄に見えること。また、美人でクールな印象の北川さんに対して、斎藤さんは可愛い女性という感じがする。
ところが、自分の勝手な思いなど杞憂にすぎなかった。さすがに見た目のイメージを覆すのが女優というものだ。北川景子さんは―ファンとしての欲眼は認めるが―〈筆談ホステス〉を見事に演じていた。発“声”するシーンは数か所あるものの、発“話”のシーンは皆無。これは演じる者にとって、見た目以上に大変なのではないかと思う。声に出さない分、目や表情の演技が要求されるにちがいない。もともと北川景子さんの目は印象的だが、今回はその目をフル活用していたように見えた。初めて目にした和装も決まっていた。ちなみに、ほとんど不機嫌な表情で押し通していた田中好子さん(もうキャンディーズのスーちゃんなどと言ってはいけない)の演技も印象に残った。
ストーリーはデフォルメされた部分もあり、うまくまとまりすぎているように思えた。原作の方がもっと生々しく、ある意味ドラマチックである。もっとも、2時間ドラマの枠ではやむを得ないことなのかもしれない。お決まりのようにドラマの最後には「フィクション」であるとクレジットされているが、文字どおり受け取れば、北川景子さんが演じたのは北川さんなりの「筆談ホステス」であって、斎藤里恵さんそのものではないともいえそうだ。もちろん、だからといって、北川さんの演技が下手だったことにはならない。「筆談ホステス」をステップにして、北川景子さんには、北川さんらしい作品に今後も挑戦してほしいと思う。
一方で、斎藤里恵さんがいわばメジャーになり、ますます有名になっていくことに不安を感じないでもない。彼女の人気につけ込む輩も少なくないだろう。マスコミも例外ではない。人気を煽って乗せた後、新味がなくなると潮が引くように忘れてしまう。しかし、斎藤里恵さんの大きな夢は「筆談ホステス」では終わらない、時間のかかる息の長いものだ。『筆談ホステス』の大ヒットを機会に、本当の意味での斎藤里恵さんのサポーターが一人でも増えてくれることを願いたい。
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追記:「金スマ」(TBS)を見た。正直なところ少し情緒的すぎるような扱いが気になったが、番組で描かれていたことや里恵さんの語っていた言葉を信じるならば、里恵さんの「シングルマザー」への決意を尊重したいと思う。たぶん世の中は甘くないが、里恵さんを暖かく見守り、支えてくれる人も少なくないと信じたい。里恵さんのブログ「斉藤里恵のほっこり日記」も今日初めて知った。(2010年2月26日)
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数年前、ある友人の勧めで『チェリーパイ』という映画を見た。これが北川景子さんとの初めての出会い。何といってもチェリーパイの赤というかチェリー色がとても印象的で、チェリーパイの甘くて香ばしい匂いまで漂ってきそうな映画だった。北川景子さんはチェリーパイに魅せられた新人パティシエの役で、恋に揺れる女心の機微をチェリーパイ作りにかけてうまく演じていた。整った顔立ちながら、憂いを感じさせる表情にこころを射られた。それまで名前も顔も知らなかったのに、この作品だけで北川景子さんが好きになってしまった! まったくの一目ぼれ。
やがてテレビドラマやCMにも進出し、北川景子さんの姿を目にする機会が増えた。ところが、アレッ!?という感じがしてしまった。ドラマやCMの役柄が妙に軽かったり派手だったりして、あの『チェリーパイ』のイメージと重ならなかった。北川景子さんにはもっと他に演じる役柄があるのではないか。そんな思いが続いていた。
北川景子さんがあの斎藤里恵さんに! ちょうど『筆談ホステス』を読んでいたとき、ウェブのニュースか何かで知って驚いた。『筆談ホステス』のドラマ化にも驚かされたが―少し考えれば、これほど話題になった本を放っておくはずもないが―またしても北川景子さんが斎藤里恵さんのイメージと重ならなかった。実際のところは知らないが、北川さんはやや長身で、斎藤さんはやや小柄に見えること。また、美人でクールな印象の北川さんに対して、斎藤さんは可愛い女性という感じがする。
ところが、自分の勝手な思いなど杞憂にすぎなかった。さすがに見た目のイメージを覆すのが女優というものだ。北川景子さんは―ファンとしての欲眼は認めるが―〈筆談ホステス〉を見事に演じていた。発“声”するシーンは数か所あるものの、発“話”のシーンは皆無。これは演じる者にとって、見た目以上に大変なのではないかと思う。声に出さない分、目や表情の演技が要求されるにちがいない。もともと北川景子さんの目は印象的だが、今回はその目をフル活用していたように見えた。初めて目にした和装も決まっていた。ちなみに、ほとんど不機嫌な表情で押し通していた田中好子さん(もうキャンディーズのスーちゃんなどと言ってはいけない)の演技も印象に残った。
ストーリーはデフォルメされた部分もあり、うまくまとまりすぎているように思えた。原作の方がもっと生々しく、ある意味ドラマチックである。もっとも、2時間ドラマの枠ではやむを得ないことなのかもしれない。お決まりのようにドラマの最後には「フィクション」であるとクレジットされているが、文字どおり受け取れば、北川景子さんが演じたのは北川さんなりの「筆談ホステス」であって、斎藤里恵さんそのものではないともいえそうだ。もちろん、だからといって、北川さんの演技が下手だったことにはならない。「筆談ホステス」をステップにして、北川景子さんには、北川さんらしい作品に今後も挑戦してほしいと思う。
一方で、斎藤里恵さんがいわばメジャーになり、ますます有名になっていくことに不安を感じないでもない。彼女の人気につけ込む輩も少なくないだろう。マスコミも例外ではない。人気を煽って乗せた後、新味がなくなると潮が引くように忘れてしまう。しかし、斎藤里恵さんの大きな夢は「筆談ホステス」では終わらない、時間のかかる息の長いものだ。『筆談ホステス』の大ヒットを機会に、本当の意味での斎藤里恵さんのサポーターが一人でも増えてくれることを願いたい。
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追記:「金スマ」(TBS)を見た。正直なところ少し情緒的すぎるような扱いが気になったが、番組で描かれていたことや里恵さんの語っていた言葉を信じるならば、里恵さんの「シングルマザー」への決意を尊重したいと思う。たぶん世の中は甘くないが、里恵さんを暖かく見守り、支えてくれる人も少なくないと信じたい。里恵さんのブログ「斉藤里恵のほっこり日記」も今日初めて知った。(2010年2月26日)
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これからも更新頑張ってください。